まだ一年は半分残っているが、私自身はもう今年も東南アジア行きはあきらめた

まだ一年は半分残っているが、私自身はもう今年も東南アジア行きはあきらめた

先進国は着々とファイザーやモデルナのような「効くワクチン」の接種を終えていて、感染は広がっても死者が極度に減少しているので収束させやすい環境になっているのだが、途上国はまだまだ修羅場である。コロナでも先進国と途上国は収束に差が生まれている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

インドネシアに入っているワクチンは中国製のワクチン

インドネシアが苦境に落ちている。コロナウイルスのデルタ型が蔓延し、感染者も死者もうなぎ上りになってしまった。

2021年7月14日、インドネシア当局が明らかにしたところ、感染者は新たに5万4517人、死者は991人、累計死者は6万9210人となった。

実際にはコロナに感染して多機能不全に陥って死んだ人がコロナ死に計算されていない可能性も高い。そのため、コロナ死者は「もっと多い」というのが現地の医師の見立てだ。

なぜ計算されないのか。すでにインドネシア国内の病床は重症のコロナ感染者で埋め尽くされていて病院が新しい患者に対応できない。そのため、軽度の患者は病院に入れないで屋外のテントや自宅療養を余儀なくされている。

この様子を見て最初から病院に行かない貧困層もかなりいる。そして、自宅で死んだ患者についてはカウントされないまま埋葬されてしまっているのだ。

呼吸困難に陥る患者のために、家族が必死になって酸素ボンベを探している。しかし、都市部はともかく、地方ではその酸素ボンベも手に入らない。

さらに言えば、感染者数も検査が不十分なために少なめに見積もられている。実際にはコロナ感染者が野放しになっており、軽症の患者が動き回ってスーパースプレッダーになっている。

インドネシアを阿鼻叫喚の地獄に突き落としているデルタ型コロナウイルスは、インドで突然変異し、インドを感染地獄に陥れたものである。

ワクチンはどうなったのか。インドネシアに入っているワクチンは中国製のワクチンである。例の「効かないワクチン」だった。それでも打った方がマシだというので、医療関係者は仕方なく打ったが、医療現場の中で次々とコロナに感染した。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

マレーシアはロックダウンの最中である。まだ止まらない

インドは3月に入ってから怒濤の勢いでコロナ感染が広がっていき、2ヶ月後の5月には一日約41万人が感染するという地獄のような惨状を迎えた。一日あたりの死者もピークで3800人となっていた。

その原因となったのが、デルタ型コロナウイルスだった。感染力が強く、重症化しやすい危険な変異種がインドで生まれたのだ。

インドは約14億人の人口を抱える国である。このまま何もしなければインドはコロナで全滅する。

慌てたインド政府はなりふり構わない全面的なロックダウンを行ったのだが、さすがのインド人も相次ぐ感染者と重症者と死者に恐れをなして、誰もがマスクをしてできる限り家に引きこもるようになった。

このロックダウンの成果が出て、インドは7月に入ってやっと落ち着いてきたのだが、デルタ型のコロナウイルスはネパールやバングラデシュ、さらにミャンマーを通して東南アジアにも広がっていった。

東南アジア諸国はこれまで「コロナは欧米で広がっているが我々はうまく封じ込めた」と油断していた。しかし、まずはマレーシアで爆発的な感染拡大が広がって止まらなくなった。

マレーシアは6月に入ってから、いったんは収束するかのように見えたのだが、7月に入ってから再びぶり返して今や一日1万1000人を超える感染者、一日130人を超える死者を出すほど悪化している。

今、マレーシアはロックダウンの最中である。まだ止まらない。

フィリピンについては以前に書いた通りだ。ドゥテルテ大統領の国民恫喝によって今は小康状態ではあるが、いつでもぶり返す可能性がある危険な状態である。(ブラックアジア:私はワクチン積極派だがワクチンを拒絶したいフィリピン人の気持ちはよく分かる

インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、『ブラックアジア カンボジア編』はこちらから

ベトナムもカンボジアもタイも感染拡大の真っ最中

ベトナムは4月まで一日10人もいない程度だった。しかしインドやマレーシアが急激に悪化していくと、それに歩調を合わせるように感染者が増え始めるようになってしまい、7月に入ってからは国家規模のパンデミックとなってしまっている。

今この瞬間にも感染者はどんどん「過去最悪」を更新し続けていて、一日1700人を超えるレベルにまで到達してしまった。ロックダウンを少し緩和したら一気に数百人も感染者が増えたので、経済を度外視してロックダウンを続けるしかない。

ベトナムと国境を接しているカンボジアもまたベトナムに合わせて感染拡大を繰り返しており、一日1000人を超えてなおも感染者と死者が広がっている。

感染が爆発しているマレーシアとカンボジアに国境を接しているのがタイである。タイも7月に入ってから、いよいよ最悪の事態に陥った。

観光立国であったタイは2020年には何度もロックダウンが行われて、観光エリアが壊滅的ダメージを受けた。我が愛するパタヤもオープンバーやゴーゴーバーが次々と閉鎖し、すでにエリアごと死んでしまった箇所もある。

そこで働く人たちが「もう無理だ」とあきらめ、Facebookに「さよならパタヤ」と言い残して去っていくのが流行したのが4月のことだった。(ブラックアジア:さよならパタヤ。観光業を支えた人々もパタヤに見切りをつけて去っていく

4月はタイで最もお祭り的要素があるソンクラーン(水かけ祭り)が行われる時期だったが、2020年も2021年もそれどころではなく、全面的に中止になった。この4月頃、タイの新規感染者は一日2000人超えだった。今はどうなのか。

7月13日、一日の感染者は8685人である。4月の2000人どころではない。その4倍もの感染者を出しているのである。しかも、その感染者は止まる気配がない。タイは2021年4月まで、「そろそろ外国人を条件付きで受け入れよう」と動き出していた矢先だった。全部、白紙となった。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

インド圏・東南アジア圏は「今年はいけない地区」

ただ、サムイ島やパンガン島などは本土とは孤立しているので、ここにワクチン接種を終わった外国人に来てもらって「島で隔離しつつ観光させよう」という計画も出てきている。

それはそれで良いアイデアのように見える。しかし、全世界から観光客を受け入れると、タイの島が「コロナの養殖場」になるかもしれない。さらに、その島で働く現地の人たちは島民ばかりではない。

彼らが本土に戻ると、そこからまた感染が広がる恐れもある。これらの懸念も考えると、タイ人もこのアイデアに全面的賛成しているわけではない。

東南アジアはデルタ型コロナウイルスを抑制できていない以上、まだまだ経済や観光を以前のように戻すことはできそうにない。

先進国は着々とファイザーやモデルナのような「効くワクチン」の接種を終えていて、感染は広がっても死者が極度に減少しているので収束させやすい環境になっているのだが、途上国はまだまだ修羅場である。

コロナでも先進国と途上国は収束に差が生まれている。

収束に時間がかかればかかるほど経済的ダメージは膨れ上がるので、貧困者の貧困はますます深く厳しいものになっていく。

何にしろ、インド圏・東南アジア圏は「今年はいけない地区」であるのは間違いない。日本人のハイエナたちは恐らくほとんどが数ヶ月内にワクチン接種を2度終えて、免疫を手に入れることになるが、私たちが東南アジアをうろつくのはまだまだ先の話になる。

まだ一年は半分残っているが、私自身はもう今年も東南アジア行きはあきらめた。今は一刻も早くインド圏・東南アジア圏の人々がコロナ禍から逃れることができるように願うしかない。

ブラックアジア・インドネシア編
『ブラックアジア・インドネシア編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

新型コロナウイルスカテゴリの最新記事