日本人はオミクロンより、自粛による経済萎縮で困窮する方を真剣に考えた方がいい

日本人はオミクロンより、自粛による経済萎縮で困窮する方を真剣に考えた方がいい

オミクロンは大した症状が出ないが大半の日本人は自粛する方を選ぶ。企業はもはや今年前半はコロナ禍が収束することはないと判断する。自粛で健康は守れるが日本経済は萎縮する。だから今までリストラを踏みとどまっていた企業も、これまでの2年以上にリストラを加速させる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

オミクロンは「軽い」というのが共通認識となりつつある

アメリカではオミクロンの感染者が一日100万人という途方もないスケールになっているのだが、日本でもいよいよ数千人単位の新規感染者が出てくるようになってきている。いくつかの県はすでに「まん延防止対象区域」となっている。

オミクロンは、デルタ株の2.5倍の感染力であり、インフルエンザと較べても3倍から5倍以上の感染力になっているので、今後は日本でも一日数万人レベルの感染者となったとしても不思議ではない。

この日本で最もオミクロンが広がっているのが沖縄なのだが、琉球大病院の医師は「オミクロンはデルタ株とはまた別の病気で、どちらかと言えばインフルエンザに近い」という見方を示している。

オミクロンの症状が軽いというのは南アフリカからも欧米からも報告されていて、「オミクロンは肺炎を引き起こさないのではないか。嗅覚や味覚の障害もオミクロンでは報告されていない」と述べている。

要するに、オミクロンは「軽い」というのが共通認識となりつつある。実際、オミクロンでは重症化になる人は少なく、どこの国でも感染者は多いのだが死亡者は非常に少ない数で推移している。

日本では安倍元首相が「季節性インフルエンザと同じ『5類』として扱う手はあります」と言っているのは、こうした状況を指している。すでに、コロナウイルスに効くワクチンも各社から出てきており、今後は経口薬も発売される。治療法も確立されて死亡者がうなぎのぼりに増える段階は終わった。

それなら、もう警戒と予防はしつつも、それほど深刻に騒いで自粛を強制するようなことはしなくてもいいのではないか。

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経済は萎縮する一方なので、日本経済や実体経済は痛む

ただ、そうは言っても日本人は動揺しやすい民族なので、オミクロンの感染が急激に増えていったら、いくら重症患者や死亡者が少ないとは言っても、マスコミは大騒ぎしてオミクロンの感染者拡大を報じるだろう。

すでにマスコミは「第六波がきた」と大騒ぎしている。そうなると政府も感染拡大の責任を取らされたくないので、まん延防止で再び自粛強要をすることになる。

すでにいくつかの県がまん延防止措置の適用が為されているのだが、オミクロンの感染力は非常に強いので次々とまん延防止措置が適用されていくようになるはずだ。そうなると、かつてほどではないとしても自粛をしようと考える日本人も増える。

確かにオミクロンは症状は軽い。しかし、感染したら数日寝込まなければならないようなことになるかもしれない。あるいは「自粛しろと言われていたのに外をほっつき歩いていた」とまわりから責められるかもしれない。

面倒なことになるのであれば自粛した方がいいという結論になって、日本人はオミクロンが「軽い」と分かっていても自粛してしまう傾向が強い。

つまり、オミクロンが軽かろうが何だろうが社会の空気として、今まで通りに自粛しなければならないと考えるのが日本人で、実際に日本人は不要不急の外出を控え、外食も会食も控えてしまうはずだ。

アメリカなどでは今、一日100万人レベルで感染者が増えているのだが、日本人は律儀に自粛するしマスクもするので欧米ほどひどい感染者数にはならないはずだ。しかし、経済は萎縮する一方なので、日本経済や実体経済は痛んでしまうだろう。

自粛するなと言ってもリスクがあったら自粛してしまうのが日本人の習性なので、これはもう致し方がないのかもしれない。

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リストラを踏みとどまっていた企業が「匙を投げる」

何にしろ日本という国はそういう傾向を持った国なので変えようがない。これは別の言い方をすると、「日本人は健康問題を重視して経済を萎縮させる方向を選ぶ」ということになる。

オミクロンがどれくらいで収束することになるのか私には分からない。今年の6月くらいには収束して2022年の折り返し地点からやっとアフターコロナの時代に入るのかもしれないとは漠然と思ってはいるのだが、そうなるのかどうかは誰にも分からない。

しかしながら、2年もコロナ禍で我慢に我慢を強いられて、2022年からのリベンジ消費も不発になってしまうのだとすると、もう多くの企業は体力が持たないので2022年に入った今年からリストラを本格化していくのは目に見えている。

実は、東京商工リサーチの調査では2020年、2021年の2年で連続して希望退職募集が1万5000人を突破したという報告を出している。希望退職というのは中高年をターゲットにしたリストラなのだが、これが2年で激増していた。

そして、重要なのは「2022年はさらに増える」と予測していることだ。

2022年はコロナも収束してリベンジ消費が増えると見ていた企業は多かった。だから、従業員のリストラはギリギリのところで踏みとどまっていた。ところが、2021年の11月から12月にかけて様相は一転した。

「ほぼ収束」と思われたコロナが再びオミクロンによって感染が広がっていき、それが止められなくなってしまった。企業はもはや2022年の前半にはコロナ禍が収束することはないと判断している。

だから今までリストラを踏みとどまっていた企業が、これから「匙を投げる」わけである。オミクロンは大した症状ではないかもしれないが、日本社会は自粛を選ぶので経済が縮んで今度は中高年がリストラされていく。

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日本人は経済萎縮で経済死する方を真剣に考えた方がいい

これまでは景気の調整弁であった非正規雇用者が次々と一時休業に追いやられたり、雇い止めされたり、クビにされたりして悲哀を味わっていた。

しかし、もはや非正規雇用者をクビにするだけでは足りなくなって、高給を取る人材をリストラせざるを得なくなってきている。

これまでの2年間も体力のない企業は希望退職募集で中高年を切り捨てていたのだが、2022年はもっと体力のない企業が増えるので、今年は中高年も悲惨な目に遭っていく段階に入った。

ちなみに日本では「希望退職」と言っても会社が退職させる中高年を決めて、無理やり追い出すこともあるわけで、本人が会社に残りたいからそんな話は関係ないというわけではない。

中高年のリストラが悲惨なのは、彼らには家族がいることだ。妻と子供が2人いるとしたら、本人がリストラされるだけで家族4人が同時に経済的リスクに直面することになる。

2021年の例で言えば、年間1万5000人が希望退職で「切り捨て」されたが、妻子も含めると6万人が経済的リスクに落ちたも同然なのである。子供が1人であると計算しても4万5000人となる。子供がいない世帯だったとしても3万人レベルだ。

実際にリストラされていなくても、自分のまわりで希望退職募集という現象が起こると「次は自分の番か」と身構えて、消費などしないで防衛に走る。

そうすると、日本経済の消費は波状的に止まっていくわけで、ますます企業はリストラに走らざるを得なくなる。

リストラされそうだから消費を控えるというのは正しい行為なのだが、全員がそれをすると「合成の誤謬」が起きる。負のスパラルというのは、そういう形で始まっていくものなのだ。

オミクロンは大した症状ではないかもしれないが、それよりも日本人は経済萎縮で困窮する可能性の方を真剣に考えた方がいいのかもしれない。

野良犬の女たち
『野良犬の女たち ジャパン・ディープナイト(鈴木 傾城)』

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