私はワクチン積極派だがワクチンを拒絶したいフィリピン人の気持ちはよく分かる

私はワクチン積極派だがワクチンを拒絶したいフィリピン人の気持ちはよく分かる

調査機関の報告によると、フィリピン人の61%が「接種しない」と答えている。接種したくても政府の接種プログラムに問題があって受けられないのではなく、フィリピン人自らが「接種しない」を選んでいるのである。フィリピン人がワクチン接種を拒むのは理由がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

今まさにこの瞬間、最悪に向かって転がり落ちている国

日本は東京でコロナ感染者が再び増えてきているとして強い警戒が為されているのだが、私は日本のコロナ禍の収束の順番は、重症患者が減少していくのが最初で、次に感染者も減少して、数ヶ月内には何とか収束に向かってくれるのではないかと希望を持っている。

驚いたことに、日本のコロナワクチン接種回数は1日当たり120万回を超えていて、全体で見ると一気に4350万回となっている。あまりにもコロナ接種回数が多すぎて、逆にスピード調整してもらう必要が出てきているくらいである。

7月からはいよいよ60歳未満の人たちも対象になっていくわけで、活動的な世代がどんどん打つことによってコロナ感染者も目に見えて減っていくだろう。

デルタ型のコロナの広がりが懸念されているが、日本で主に打たれているファイザーのワクチンをきちんと接種していれば、仮にコロナ感染しても症状は劇的に抑えられることになる。

そういうこともあって、私自身は感染者数が増えていったとしても、ワクチン接種済みの人が増えるおかげで状況は極度に悪化しない方向に賭けている。あと数ヶ月もしたら、日本はもう誰もコロナを怖がっていないかもしれない。

しかし、今まさにこの瞬間、最悪に向かって転がり落ちている国がある。それが「フィリピン」である。

フィリピンのコロナ禍は2021年3月にデルタ型が入り込んでから一気に感染者を拡大させて、4月には一日の新たな感染者が1万1000人を超えるレベルにまで達してしまった。

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ワクチンを打たなければ刑務所にぶち込む

これに激怒したドゥテルテ大統領は再び都市封鎖を行って、言うことを効かない人間を刑務所に体罰的な刑を科したり、場合によっては刑務所にぶち込むような手荒なやり方で何とか抑え込もうと努力した。

これによって5月には何とか新規感染者は減少していったのだが、6月に入ってから現象が頭打ちになって再び増え始めるような現象になっている。

現在、フィリピンでのコロナ感染者は一日5700人近くで「高止まり」している状態で、もし都市封鎖に疲れた国民が街に繰り出すようになっていくと、また4月の1万超えになるのは目に見えている。

政府は少しでもワクチン接種を増やそうとして「接種したら米がもらえる」キャンペーンなどを始めたのだが、効果はほとんど出ていない。

6月14日、いっこうに感染者が減少しないことに苛立ったドゥテルテ大統領はワクチン接種を拒む国民に対して、「さっさとワクチンを打て。もし拒むなら、棺《ひつぎ》を買え。墓を見つけておけ」と暴言を吐いた。

国民はこの脅迫まがいの言葉に「何を言ってるんだ、ここは自由な国ではないのか」と大反発して、保健当局が慌てて「ワクチン接種は任意だ」と言い、政府当局も「大頭領は強い言葉で国民に接種を促したかった」と釈明に追われていた。

ところが、当のドゥテルテ大統領は本気で怒っていて、21日には再び強い言葉を国民に言い放っていた。

「この国には危機がある。私は政府の言うことを聞かない人々に怒っている。新型コロナウイルスのワクチンを打たなければ刑務所にぶち込む。言っておくが、刑務所の環境は不潔だ。警察官が仕事をさぼっているからだ。ワクチンを打たない奴は、そこに行くことになる」

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フィリピン人がワクチン接種を受けたくないと思っている理由

フィリピンは実は人口から見ると大国で1億1000万人の国である。ところがワクチン接種はまだ900万人にも到達していない。

ドゥテルテ大統領が怒り狂っているのは、「今年中に7000万人の接種を終わらせる」とぶち上げたのに、まだ1000万人にも到達していないという事情もある。

途上国特有の「何事も計画通りには進まない」という事情があるのも事実なのだが、命の危険があるのならば誰もが率先して受けようという話になるはずだ。しかし、フィリピン人はとにかくワクチン接種を避けている。

調査機関の報告によると、フィリピン人の61%が「接種しない」と答えている。接種したくても政府の接種プログラムに問題があって受けられないのではなく、フィリピン人自らが「接種しない」を選んでいるのである。

なぜワクチン接種をこれほど拒むのだろうか。

それはフィリピンに入ってくるワクチンが、アストラゼネカ製とシノバック製だというのが大きい。

アストラゼネカ製は血栓ができやすいと喧伝されて多くの国で接種中止になっているのだが、途上国には多く使われている。このワクチンはファイザーのように低温保管が厳密ではないので、途上国には使いやすいのである。ファイザーは保管が難し過ぎて途上国には向かない。

シノバックは中国が「ワクチンを与えてやった」という恩義を途上国に与えて、後で駆け引きに使おうという「ワクチン外交」の道具になっているので、中国と経済的な結びつきが強いフィリピンにも大量に入ってきている。

しかし、このシノバック製のワクチンは実に効果が薄く、フィリピンで広がっているデルタ型には51%ほどの防止効果がないとすっぱ抜かれている。

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ワクチンを拒絶したいフィリピン人の気持ちはよく分かる

フィリピンに流れ込んできているワクチンは、どちらも積極的に打ちたい気分になるものではない。

フィリピンでも中国の「安かろう、悪かろう」はよく知られている。いや、フィリピンのような途上国であればあるほど、中国製品の「安かろう、悪かろう」は、それしか買えないということもあって切実な問題である。

「中国製のワクチンなんか打ちたくない。さりとて、アストラゼネカ製だって安全だとは言い難い」という感情がフィリピン人にあって当然だ。ワクチンなら何でも良いというわけではないのだ。

日本人であっても中国製シノバックを接種するという話になったら一般人は誰も接種しようと思わないし、中国大好きの共産党の左翼や日中友好一本槍の創価学会の会員ですらも問答無用で断るはずだ。

さらにフィリピン人がワクチン接種を怖がっているのは、5年前にフランス大手の製薬会社が開発したデング熱ワクチンを打ったら、よけいに症状が悪化して1年で使用禁止になったという「事件」も起きていたからだ。

このときも政府は「ワクチンを打て」と国民に命令したが、素直に信じた人間が馬鹿を見ることになった。つまるところ、フィリピンでは「ワクチンが最初から信用できない」だけでなく、「政府も信用できない」という状況だったのである。

これで摂取率が上がるわけがない。

日本ではワクチン接種をしたくないと言っている人間がいるが、日本とフィリピンではその深刻度が違う。私がフィリピン在住だったら、私もワクチンの接種には二の足を踏むだろう。特にシノバック製なんか打たれるくらいなら断固として拒否する。

ワクチンを拒絶したいフィリピン人の気持ちはよく分かる。同情しかない。

ブラックアジア・フィリピン編
『ブラックアジア・フィリピン編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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