知的能力が求められる時代が終わっても驚くに値しない理由

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人間の能力を構成する要素はいくつもあるのだが、時代によって「望まれている能力」は違っている。

たとえば石器時代は、誰よりも早く野を駆けて獲物を獲る能力に優れた人間が、最も求められる人間となる。たくさんの獲物を持ち帰る人間で共同体が潤うのだから当然だ。狩猟能力は重要だった。

農耕時代に入ったら、求められた能力は微妙に違っていったはずだ。狩猟能力よりも、長く地道に働ける体力を持った人間の方が農耕に向いている。

田植えを延々と続けられる体力、雑草を延々と抜くことができる体力、収穫する体力、脱穀する体力、重いものを運ぶ体力が求められる。

それに応えられた人間が「素晴らしい」と思われ、尊敬され、たくさんの異性を惹きつけたはずだ。

農耕社会からさらに人類の文化が発達し、村から町へ、町から市に拡大し、社会がどんどん複雑化していくと、今度は体力と共に複雑な社会を理解する知能を持った人間が徐々に重要になっていく。

コミュニケーション能力、計算能力、知的能力が必要になっていく。そこで、子供たちの知的レベルを引き上げるために学校が必要になり、能力を測るために成績を見て「優れているかどうか」を測るようになる。

つまり、体力が求められる時代が終わり、今度は知能が求められる時代に入った。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

時代によって人間の求められている能力が違うのだ

ところで、知能の時代になってから狩猟能力に優れた人間や体力に優れた人間は相変わらず評価されているのだろうか。かつては、それが人類の生存を支えていた能力なのだが、それはどのような扱いになっているのか。

客観的に言えば、知的能力が非常に重要視されているのに比べて、狩猟能力も体力もほとんど社会生活に大きな影響を及ぼすことはない。

「近所の猫よりも敏捷に動けてネズミを狩ることができます」と言っても、官僚になる道や、研究者になる道や、一流企業に入る道が拓けるわけではない。また、そうした人間が重要な人物だとしてノーベル賞をもらえるわけでもない。

「100キロの荷物を持ち上げる力があります」と言っても、それで給料が倍増することもない。

100キロが120キロになっても同じだ。かつてよりも20%も重いものを持ち上げることができるようになっても、給料が20%上がることはないのである。

狩猟能力や体力は、かつては人間を見る大きな要素だったにも関わらず、今や完全に無視されている。それは求められていない。

だから、狩猟能力や体力が優れていても、知的能力が欠落していれば、それは「素晴らしい人間」ではないと評価されるのである。

これは、時代によって人間の求められている能力が違っている結果、不遇をかこつ人が必ず生まれることを意味している。そして評価されないまま人生を終える可能性が高い。

もし、第三次世界大戦でも始まって現代の文明が核戦争で完全崩壊し、再び人類が石器時代からやり直しになったら、どのようになるのか。もちろん、また優秀な人間の定義も変わるのだ。

知的能力に優れてはいるが、視力も悪く、体力もなく、走れず、獲物を狩ることもできない人間は「とことん駄目な奴だ」という評価になる。

一方で、知的能力は欠落していても、凄まじく敏捷で獲物を狩るのがうまい人間は、優れた人間であるとして評価されることになる。

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時代が変わったら、右から左へと変われるのか?

つまり、たまたま「時代が求めている能力と、自分の能力が合致した人」が優れた人であると言われているのであって、時代が変わって求めている能力が変わってしまえば、たちまち不遇になるということでもある。

「強い者、賢い者が生き残るのではない。変化できる者が生き残るのだ」

進化論から生まれたこの言葉は、まさにこれを意味している。その時代に完璧に最適化されて隆盛を誇ったとしても、時代というのはしばしば変わる。

時代が変われば、当然ながら求められていくものもまた変わっていく。

たとえば、かつての運搬は「馬」を操るのが主流だった。だから馬にうまく乗れる人は優れたドライバーでもあった。しかし、馬の時代が終わって車の時代になると、馬ではなくマシンを操る能力を持った人間が優れたドライバーとなる。

その転換期に「絶対に馬がいい」と言っていた人間は駆逐され、淘汰されて消えていった。逆に「これからは車の時代だ」と考えてそれに適応できた人間は生き残った。

普通に考えると「時代が変われば自分も変わればいいではないか」と誰もが思いつくことなのだが、思いついても簡単に変われるわけではない。

馬から車に変わったというのであれば、それに対応するのは不可能ではないかもしれない。

しかし、平和の時代に入って戦争と殺戮の時代に入ったら右から左に対応できるだろうか。

文明が壊滅的なまでに破壊されて石器時代に戻ったら、獲物を狩って肉に貪りつく生活に自分を適応させることができるだろうか。知能能力をかなぐり捨てて、野生に自分を適応させることができるだろうか。

変わらなければいけないと思っても、精神的にも肉体的にも遺伝的にも何も変われないことは充分にあり得る。その時はどうなるのか。もちろん、時代に取り残されて淘汰される。

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知的能力に優れたエリートだけが恩恵を受ける社会

今の時代がいつまでも続くわけではない。将来はどのように変わるのかはまったく分からないが、社会の文化も、風土も、求められている能力も、今とはまったく違ったものになっている可能性がある。

どのように変わるのか。何が変わるのかは分からない。

人々は無意識に「より知的能力が求められる時代」に変わると考えているが、最近の社会底辺で起きている動きを見ると、もしかしたら違う時代に入るのかもしれないという萌芽も感じられるようになってきた。

次の時代は「知的能力で人間の優劣を決める社会」が激しく否定される時代がきても不思議ではない。

なぜか。

現在は間違いなく一部の知的能力に優れたエリートが富裕層になっていく社会だからだ。つまり、富は知的能力に勝った人間が独占し、おいしい思いをする社会である。

一流大学に入り、一流企業やエリート官僚になれる知的優位層が「地位と名誉と富」を独占して豊かな生活を送る。そして経済格差は凄まじく広がり、1%の富裕層と99%の貧困層に分かれていくことになる。

そうすると、この知的エリート層ばかりが得する社会、優遇される社会に、大きな不満や抑圧や憎しみを感じる層が増えていくことになる。

この層の不満が臨界点を超えたとき、「知的エリート層ばかりが得する社会など破壊してしまえ」という動きになっていったとしても不思議ではない。

こうした考え方は十年前は一笑に付されたが、知的能力に優れたエリートたちは今の時代は変革されるのかもしれないと考えるようになっている。

2016年のアメリカの大統領選挙ではバーニー・サンダースが暴利をむさぼる金融機関を批判して凄まじい支持を得て、エスタブリッシュメントを否定するドナルド・トランプが大統領に選ばれるという動きを見せていたではないか。

一部の知的能力に優れたエリートだけが恩恵を受ける社会を破壊しようとする動きは、もうとっくに芽を吹いているのだ。

この動きが続けば、「知的能力で人間の優劣を決める社会」が激しく否定される時代がきたとしてもそれは驚くことではない。それが社会不満の温床になるのであれば、それは何らかの方法で破壊されるからだ。

もちろん、「知的エリート層ばかりが得する社会など破壊してしまえ」という動きが勝利するかどうかは分からないのだが、時代はいつでもどのように変わるのか分からないということだけは確実に言える。

「今の価値感も変わり、求められているものも変わり、それなのに自分は変われない」ということも起こり得る。(written by 鈴木傾城)

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2016年のアメリカの大統領選挙ではバーニー・サンダースが暴利をむさぼる金融機関を批判して凄まじい支持を得て、エスタブリッシュメントを否定するドナルド・トランプが大統領に選ばれるという動きを見せていたではないか。一部の知的能力に優れたエリートだけが恩恵を受ける社会を破壊しようとする動きは、もうとっくに芽を吹いているのだ。

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