誰であっても誹謗中傷とは無縁でいられない「全方位の中傷時代」になったのだ

誰であっても誹謗中傷とは無縁でいられない「全方位の中傷時代」になったのだ

誰であっても、誹謗中傷とは無縁でいられない壮絶なまでの「全方位の中傷時代」になった。私は10年以上も前から「SNSは人をつなげるのではなく、人を攻撃する暴力の場になる」と言い続けてきた。実際にそうなった。インターネットは人々の悪意が渦巻く最前線と化したのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

全員が全員ともインターネットでむちゃくちゃに叩かれている

人は誰でも人格攻撃されたり、罵倒されたり、非難されたり、あらゆるひどい言葉で攻撃されたりしたら落ち込むし、苦しむ。

ところが世の中は広いもので、インターネットで叩かれても、罵詈雑言を書かれても、メチャクチャにけなされても、ストーカー並みのアンチを抱えていても、まるっきり平気で日常生活を送っている神経の図太い人がいる。

実は私の知り合いもそうだ。私の知り合いは個性的な性格や経歴の人が多く、ほとんど全員が全員ともインターネットでむちゃくちゃに叩かれている人ばかりで、その叩かれ方も「明日にでも殺されるんじゃないか」と心配になるくらいひどいものばかりである。

ところが面白いことに、そういうのを気に病んで落ち込んでいる人は「ただの一人もいない」のである。本人はインターネットで自分の誹謗中傷が溢れるほど書き込まれているというのは知っている。知っているのだが、誰も気にしていない。

そう言えば、ある女性議員はそれこそ全マスコミ、全視聴者、全日本人を敵に回しているのではないかと思うほど人格攻撃されまくっていたのだが、会う機会があって話してみるとまるで何とも思っていなくて、数日前に見た映画に感動したという話をしていた。

他にもいろんな職業で著名な人も多いのだが、みんなそれぞれアンチを大量に抱えて執拗に攻撃されている。しかし、誰も気に病んでいる様子もなく、ごく普通に日常生活を送っている。

「執拗に攻撃」と軽く書いているが、それこそ訴えたら100%勝てる侮辱罪の典型みたいな愚劣なメッセージをインターネットの至るところで書き込まれているわけで、普通の人であれば自殺しているレベルのひどいものだ。

しかも、中傷の内容は100%「嘘」なのである。本人の名誉回復のために戦った方がいいのではないかと思うような内容だったが、聞いてみたら「いろいろ好きに書いてるね」と笑っているのである。

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「ツラの皮の厚いエピソード」に事欠かない政治家たち

ところで政治家というのは、どんな清廉潔白であろうが、聖人君子だろうが、唯一無二の実力派だろうが、絶対に叩かれる職業であり、批判を受けない政治家はひとりもいないと言っても過言ではない。みんな違う党に叩かれ、国民に叩かれ、活動家に叩かれる。

誰だったか忘れてしまったが、ある政治家は「自分の悪口を見て気分が悪くなっても三歩歩いたら忘れる」と書いてあるのを見て苦笑した覚えがある。

政治家はみんなそういうところがある。国民全員から非難されても、落ち込まないし気にしない。それが政治家なのだ。そういう神経がないと、逆に政治家としてやっていけないということでもある。

安倍晋三氏も政権の座にいたのが長かったので、罵詈雑言は人一倍多かった政治家でもあった。しかし、妻の昭恵がインターネットの批判を見て落ち込んでいるのに、当の安倍晋三は「嫌なら見なければいいじゃん」と笑っていたという。

辻元清美も、謝蓮舫も、福島瑞穂も、山尾志桜里も、叩かれようが蹴られようが、翌日には平然とマスコミの前で笑っている。そして、まるで何もなかったかのように他人を攻撃したり、浮気したりして人生を謳歌している。

政治家に関してはそういう「ツラの皮の厚いエピソード」に事欠かない。菅義偉首相も「無能だ、馬鹿だ」と叩かれているが、大して気にしている様子でもなさそうだ。

誹謗中傷や批判をまったく気にしていないわけではないのだと思うが、それほど気に病んでいる様子でもないし、どんなに打たれても効いていない。政治家に学ぶべきことがあるとすれば、そのツラの皮の厚さだろうか。

叩かれるのが嫌な人は絶対に政治家にならない。

では政治家にならなかったら無事でいられるのかと言えば、まったくそうではない。現在は「全方位の中傷時代」である。何をやってもやらなくても、どこの世界にいても、学生であっても、表現者であっても、風俗嬢であっても容赦なく叩かれる。

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インターネットは人々の悪意が渦巻く最前線と化した

今はコロナ禍でアンダーグラウンドの活動を完全に停止しているので、代わりに風俗嬢が集まるサイト、SNS、掲示板等々をよく見て動向を確認しているのだが、そういうのを見ていると、彼女たちもインターネットでの誹謗中傷に巻き込まれているのがだんだん分かってくる。

男どもが風俗嬢を評価する下らない掲示板がある。この掲示板が深刻なのは、在籍する風俗嬢を「彼女はどうだった、何をしてくれた、何をしてくれなかった、良かった、悪かった」と源氏名をそのまま出して彼女の身体の特徴や性サービスや対応を書き込んでいることである。

悪質なことに、その書き込んでいる内容が嘘であったり、中傷であったり、女性をわざと傷つけるものであったりすることだ。しかも、内部の女性しか分からないようなことも書いてあったりするので、彼女をライバル視する同僚の女性が嫉妬で書き込みしているケースもある。

何が起きているのかというと、風俗嬢に対する言葉の暴力が剥き出しで掲示板の中で吹き荒れているのである。

そうしたこともあって、多くの風俗嬢が自分について書かれている内容を読み、ショックを受け、心を病み、そのやりどころのない悲しみを自分の掲示板で吐露したり、怒りをぶちまけたりしている。実際、こういうのを見て、完全にやる気を喪失して店を飛ぶ女性もいる。

もう誰であっても、誹謗中傷とは無縁でいられない壮絶なまでの「全方位の中傷時代」になったのだなと私は感慨深く思う。

実は私は10年以上も前から「SNSは人をつなげるのではなく、人を攻撃する暴力の場になる。なぜなら、人間はそういう存在だから」と言い続けてきた。実際にそうなった。インターネットは人々の悪意が渦巻く最前線と化したのである。

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今後は「全方位の中傷時代」に適応した人間が生き残れる

そう言えば、私に「インターネットで誹謗中傷が当たり前になって嬉しい」と私に言った人がいた。私は驚いて「どうして?」と聞いたら「私は昔からずっと誹謗中傷されてきたけれど、今じゃみんな誹謗中傷されているから、私だけじゃなくなって嬉しい」と言うのである。

なるほど、自分ひとりだけが誹謗中傷されていたら悲しいが、誰もが誹謗中傷されるような世の中になると仲間が増えたような気持ちになって嬉しいという感情にもなるのかもしれない。

しかし、こういう社会は多くの人にとって居心地が悪いはずだ。「全方位の中傷時代」になったインターネットの現状は変えられるだろうか。

「絶対に変えられない」と言うのが私の答えだ。

インターネットが双方向のコミュニケーションを取れる場であり、「誰でも書き込める」というのが特徴になっているのだから、プラットフォームがどのような工夫をしたところで現状は変えられない。

掲示板で、SNSで、Twitterで、動画で、人はあらゆるプラットフォーム(表現の場)を使って全力で他人を攻撃・罵倒・中傷できるようになっている。どれかを厳しくしても、どこかで穴が開く。

とすれば、人間の性質の方が変わらないといけないはずだが、その人間が変わるというのが最もあり得ない。

では、どうするのか。インターネットから逃げればいいのか。いや、今やインターネットは社会の重大なインフラであり、誰もがそこから逃れることができない。

最も良いのは、「全方位の中傷時代」に適応することである。炎上、非難、攻撃、罵倒、中傷に慣れ、打たれても叩かれても平気な政治家気質になることだ。

実際問題として、人間は慣れの動物である。最初は自分に向かってくる言葉の暴力に驚いて悩んだり悲しんだりしたとしても、朝から晩まで誹謗中傷を浴びていると次第にどうでも良くなって何とも思わなくなったりする。

時間のある人は、下らないと思うものは片っ端から容赦なくブロックするという楽しみも生まれる。(ブラックアジア:45万人くらい問答無用でブロックしていい。苦しむなら防衛(ブロック)せよ

今後は「全方位の中傷時代」に適応した人間が生き残れる。ならば、早いうちに慣れておいた方がいい。社会は変わらないので、自分が変わればいい。

カリマンタン島のデズリー
ブラックアジア的小説『カリマンタン島のデズリー: 売春と愛と疑心暗鬼(鈴木 傾城)』

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