「女のくせに」という先進国の多くの男性の無意識は、ほんの小さな拒否感、拒絶感、嫌悪感となって現れる。そして、女性はふとそれに気付くのだ。そして、多くの女性は何度も何度も挑戦しながら、最後には疲れ果てて能力を発揮する機会を自ら降りてしまう。男性社会の中で、女性の「ガラスの天井」は依然として存在すると私も考えている。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
1980年代に生まれた「ガラスの天井」
「女性にはglass ceiling(ガラスの天井)がある」と欧米ではよく言われる。「ガラスの天井」というのは、女性がどんなに努力しても、頑張っても、素質があっても、「女性」というだけでそれよりも上に行けないという意味を指す。
社会には「見えないガラス」があって、向上心を持った女性はそのガラスにぶち当たって能力を押さえつけられる。
この言葉は、1980年代からアメリカで言われるようになっていた。アメリカは1970年代にウーマンリブの運動が燃え盛り、女性の社会進出がどんどん進んでいた。今では女性の警察官もいれば軍人もいる。そして女性の経営者もいれば役員もいる。
タフで、知的で、判断能力が高い人は、性別に限らず、人種に限らず、年齢に限らず、あらゆるところに偏在している。
しかし、女性はどんなに有能であっても、女性というだけでトップになれない時代が長く続いた。1980年代に生まれた「ガラスの天井」という言葉は、そんな女性たちの苛立ちを指す言葉だった。
それから数十年経った。
アメリカでは男性社会の「ガラスの天井」を打ち破る女性が次々と登場してきた。しかし、どこの国よりも男性女差別がないと思われているアメリカでさえも、いまだに女性たちは「ガラスの天井」がそこにあると訴え続けている。
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女性には責任のある地位を任せられない?
女性は、男性に比べて賃金が低く設定されていることが多い。女性は知的な仕事に関しては男性よりも劣っていると今も考えている男性もいる。
中には、「女性はすぐに感情的になるから合理的な判断ができるわけがない」と、信じている経営者さえもいる。
女性には、「妊娠・出産・子育て」という大事な仕事があるので、会社では責任のある地位を任せることはできないと思っている男性も多い。「男性は外で稼ぐのが仕事、女性は家庭を守るのが仕事」と言う人もいる。
家庭を守ることを選択した女性も、それは立派な選択である。家庭をしっかり守ってくれる女性がいるから子供がきちんと育つ。
しかし、社会に打って出て仕事に生きることを選択する女性もいる。
そうした女性の選択の自由は守られなければならないし、その女性が有能であればトップになって当然である。無能な男性のリーダーよりも、有能な女性のリーダーの方が組織にとって有益であれば、絶対に有能な方を選択しなければならない。
組織にとって重要なのはトップが男性か女性かということではない。有能かどうかという一点のみだ。組織に利益をもたらしてくれるのであれば、女性であっても何ら差し支えがないのである。
しかし、世の中は合理的ではない。
合理的ではないが故に、どんなに有能な女性がいたとしても無難な男性がリーダーになることが多い。何度も何度もそんな状況が繰り返されて、男性たちのネットワークの中で働く女性は常に疎外感と差別感を感じる。まるで自分が「どこかのお客様」にされていると思う。
「いや、そんなことはない。アメリカでは多国籍企業を率いる女性のCEO(最高経営責任者)もいるではないか」と男性たちは言う。しかし、アメリカのトップ企業500の中で見ると、女性のCEOはわずかに5%程度しかないわけで、かなりの「少数派」であることが分かる。
日本では東証第一部を構成する企業で女性社長は1%程度であると言われており、アメリカよりもさらに「少数派」だ。
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「女のくせに」という反撥が生まれる?
女性は「男性よりも劣っている」からこのような結果になっているのだろうか。それとも、「ガラスの天井」があるから、このような結果になっているのだろうか。
女性経営者が少ない理由というのは、様々な要因がいくつも積み重なっていて、必ずしも「女性を差別している」という理由だけでそうなっているわけではない。
しかし、すべての女性が感じているのは「女性だからという理由で最初から重要な場面で除外されている」というものである。「女性には重責が担えない」という男性側の意識を、女性は敏感に感じ取っているのである。
「ガラスの天井」を突き破ろうとする女性には、その裏側で激しい中傷が渦巻き、「女性」を理由にして足を引っぱられるような事態に追い込まれる。
男性が力強く場を引っ張るとリーダーシップがあるということになるが、女性がそれをすると「女のくせに図々しい」という言われ方をすることもある。
男性が知的な能力を発揮すると「頭が切れる」という言い方になるが、女性が知的な能力を発揮すると「女のくせに難しいことを言って可愛げがない」という言い方になる。
女性があまりにも知的で論理的で相手を論破する能力に長けていると、男性の多くはプライドが傷ついて「女のくせに」という反撥を持つようになる。
「女はスタイルが良くて可愛いければそれでいい。難しいことは考えるな」というのが社会における男性たちの総意なのかもしれない。それを超えると、とたんに「女のくせに」ということになっていく。
「女のくせに」というのは、それ自体が「ガラスの天井」になっていると女性たちは考える。しかし、男性はそれを無意識に言っている。男性にはガラスの天井の存在は見えないのである。
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棘(とげ)のように女性たちに突き刺さる
イギリスでは、女性首相であるマーガレット・サッチャーがフォークランド戦争を決断した歴史がある。
フォークランド諸島をアルゼンチンに取られそうになった際、サッチャー首相は「ここに金玉をぶら下げた者はいないのか?」と言って戦争に踏み切った。強硬で、どんな批判にも折れないことで、「鉄の女(アイアン・レディー)」とサッチャー首相は称されていた。
スリランカでは、チャンドリカ・クラマトゥンガが女性として大統領になったが、テロに巻き込まれて片目を失った後、萎縮するどころか逆に雄々しく復帰して、反政府組織の掃射を決断した歴史もある。
賛否両論もあるが、ドイツのメルケル首相もまた信念の人であり、長きに渡ってドイツとEU(欧州連合)を率いている。そのメルケル首相を追い詰めている保守政党「ドイツのための選択肢」の当初の代表も「フラウケ・ペトリ」という女性だった。
女性が重大な決断を下すことができるのは歴史が証明している。
それでも「女が的確な判断を下せるわけがない」という言葉は繰り返し出てくる。「いざとなったら、女性は弱い」と男たちは繰り返し女性に投げつけたり、思い込んだりして女性を重職から外す。
女性たちに投げつけられる中傷は棘(とげ)のように女性たちに突き刺さっていく。
タフな男性であっても、陰で悪口や中傷を執拗に投げつけられたら心が折れたり壊れたりすることもある。執拗な中傷で夜も眠れなくなったり、鬱病になる人も多い。
「ガラスの天井」を突き破ろうとする女性も競争社会に巻き込まれた時、ほぼ孤立無援の中で、陰湿な中傷や悪口にさらされる。支援や支持されるよりも引きずり降ろされることもある。
「女のくせに」という先進国の多くの男性の無意識は、ほんの小さな拒否感、拒絶感、嫌悪感となって現れる。そして、女性はふとそれに気付くのだ。
そして、多くの女性は何度も何度も挑戦しながら、最後には疲れ果てて能力を発揮する機会を自ら降りてしまう。男性社会の中で、女性の「ガラスの天井」は依然として存在すると私も考えている。
日本もまたそうだ。日本には日本の男性よりも強烈に日本のことを思い、強い意志、揺るぎない信念を持った女性も多い。
私は、いつか日本の社会をより良い方向に根底から変える強い女性が、社会の様々な分野で登場すると思っている。逆に、そうした女性が登場しないのであれば、日本も終わりだとも同時に思っている。
ちなみに、現実から浮遊した馬鹿げたフェミニストの話をしているのではない。今のフェミニストには激しい嫌悪感を感じているし、まったく何の期待もしていない。むしろフェミニストに敵視されるような凄まじい女性(アイアン・レディー)が立ち上がるはずだ。
最近は中韓と徹底対峙する女性も増えて来ましたね。
杉田水脈議員、大変頼もしく思います。
私の勤める会社は、男女で賃金差がありません。
産休育休もしっかり取れて、1人目の育休明けの直前に2人目が産まれて6年休んで復帰する女性も珍しくありません。その間、その女性従業員の穴な臨時雇用の方が埋めるので、休みやすい環境だと思います。
そんな女性に優しい会社ですが、女性管理職は極めて少ないです。女性従業員の話をまとめると、責任を負いたくないから。主婦ならわかりますが、独身者もそうです。
管理職に「なれない」ではなく、「ならない」みたいですね。
相対的に、女性の方が責任を忌避する方が多いのではと感じています。
女性には男性ホルモンであるテストステロンがあまりないので権力を志向しないのでしょう。
ただテストステロン値が高い者は仕事に対する責任感や意欲は強く
管理職につきやすいですが
下っ端に対して考えが甘いだのアホだのカスだの見下す言動が多いので
いざというときにそいつらを助けてやろうとは全く思わないです。