2020年、2021年はコロナ禍で真夜中を野良犬のようにうろつくのをずっと自粛しており、ほとんど夜の女たちと会うことはなくなった。
特に基礎疾患があるわけではないのだが、めまいや聴力低下のこともあって、なるべく身体にダメージを受けたくない。ワクチンを接種するまでは基本的に孤独で過ごそうと思っている。今のところ、東京都からは何の連絡もない。
最近は、書く時間や読む時間を圧倒的に増やしている。真夜中の女たちに会わない代わりに、彼女たちのブログや手記や書籍や掲示板を見ることも多くなった。
その中で興味深いのは、少なからずの風俗嬢が「男性恐怖症」であったと告白していることだった。男性恐怖症というのは、文字通り「男という存在が怖い」という精神的な病なのだが、にも関わらず男性と密室で二人きりになり、全裸で超濃厚接触をする仕事に就いていたのである。
興味深いと思った。
世の中には、性的で猥褻な話をしたり、セックスを想像させるような仕草や行動を露骨にする男がいる。
そうした男に対して「また馬鹿をやっている」と軽く受け流すことができる女性がいる一方で、激しい嫌悪を感じたり、不潔に思ったり、時には吐きそうなまでに気持ち悪く思ったりする女性がいる。
大声で話す男、巨漢、筋肉を誇示する男、乱暴な口ぶりの男に威圧感や恐怖を感じて、ふたりきりでいられないような女性もいる。
ひどくなると、相手が外見的にも何でもないごく普通の男でも、「男」と一緒にいるというだけで心臓の鼓動が激しくなり、気分が悪くなってしまう女性もいるのだ。