『ブラックアジア第一部(売春地帯をさまよい歩いた日々)』を出版したのが2013年12月だったが、この本はタイ・カンボジアの売春地帯の2000年前後の時代を扱っている。
カンボジアと言えば、1990年代後半から2003年頃までは東南アジアで最も注目された売春地帯であった。
プノンペンだけでも、スワイパー、トゥールコック(70ストリート)、63ストリート、ボーディン(モーディン)と4ヶ所に売春宿が固まる場所が存在して、その他にも街中に売春宿が散らばっていた。
その理由は言うまでもない。貧困がこの国を覆い尽くしていたのだ。カンボジアは1970年後半を狂気のポルポト派に支配されて、民族大虐殺が引き起こされていた国だった。
その後もポルポトの一派はカンボジア西部のパイリン地区を支配して内戦状態が続き、それがやっと落ち着いたのが1990年代だった。平和は戻ったが、国民は何も持っていなかった。だから、貧困の中で売春が広がっていた。
この時代のカンボジアの売春地帯を克明に記した書物は、恐らくこの『ブラックアジア第一部(売春地帯をさまよい歩いた日々)』だけである。