人類は脅威を減らして社会を安全にしているのではなく、より危険にしている

人類は脅威を減らして社会を安全にしているのではなく、より危険にしている

人類は「見えない脅威」に何度も苦しめられてきたし、これからも苦しめられることになる。「見えない脅威」と言えば、ウイルス・細菌による脅威ばかりが思い浮かぶが、それだけが「見えない脅威」ではない。現代社会は生物兵器や核兵器の問題もあったりするが、このどちらも「見えない脅威」なのである。人類はすでに3つの脅威を自ら作り出すことができるし、意図的にばらまくことも可能になっている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

感染が拡大していく新型コロナウイルス

「見えない脅威」が2020年を激震させている。新型コロナウイルスのことだ。

2020年現在、中国で広がっている新型コロナウイルスはとどまるところを知らず感染が拡大している。免疫力が弱い患者は発症から2週間目で急激に症状が悪化していき、3週間目で呼吸困難と多臓器不全で死んでいく。

体力と免疫力がある患者は数週間で回復していくのだが、奇妙なことにこのウイルスは抗体を作らせにくい性質があるので、何度でもかかる可能性が高い。そして、何度もかかると次は劇症化する。

もう中国政府が発表している感染者や死者の数字は誰も信用しておらず、本当のところはいったい何人が感染して死亡しているのかは誰も分からない。感染者は10万人を超えているという説から、いまや150万人に及んでいるという説がある。

中国全土が新型コロナウイルスによって「自宅監禁」のような状況に陥っている。武漢は完全に封鎖されているのだが、北京や上海を含むほとんどの大都市でも人の移動を制限されており、街はゴーストタウンのようになってしまった。

すでにこの新型コロナウイルスは日本にも、タイにも、シンガポールにも広がっており、欧米でもポツリポツリと発症者が出たり隔離したりする騒ぎとなっている。問題はアフリカである。

もし、アフリカにこの新型コロナウイルスが蔓延したら、もはや感染を封じ込めるのは絶望的になるのではないかと恐れられている。

アフリカと中国は地理的にはかなり遠いのだが、アフリカには大勢の中国人が入り込んでいる関係上、新型コロナウイルスが一緒に入り込まないという楽観はあり得ない。

新型コロナウイルスは「見えない」のだから、避けるのは難しい。「見えない脅威」は、いったんパンデミックと化して広がったら避けようがなくなる。

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新型コロナウイルスなど大して脅威ではないのか?

「見えない脅威」は新型コロナウイルスだけの話ではない。

中国はこれ以外にも鳥インフルエンザが再び流行しつつある。折しもアメリカでもインフルエンザが爆発的に流行している最中であり、死者は1万人超えとなっている。感染者は1500万人である。

中国の新型コロナウイルスも、インフルエンザも、かかったら100%死ぬわけではない。

新型コロナウイルスの死亡率は今のところまだ情報が錯綜しているのだが、武漢をのぞけば0.1%ではないかと言う専門家もいる。実はこの0.1%というのは季節性のインフルエンザと同等の数字である。

0.1%というのは「1000人いたら1人が死ぬ」という確率である。

一方で武漢の死亡者数は、中国の当局が発表する不正確な数字から推測された不正確な統計なのだが、4%となっている。これは「1000人いたら40人が死ぬ」というレベルのものである。

1000人中1人死ぬのと40人死ぬのでは脅威は相当違ってくるのだが、今のところは情報が錯綜しているので、どちらが新型コロナウイルスの実態を表しているのかは分からない。

致死率も潜伏日数も人によって違っている。「突然変異した」という可能性もあるし、最初から違う種類の新型コロナウイルスが複数あったという可能性もあるので、ここのところは何とも言えないところだ。

エボラウイルスの致死率は40%だから、それに比べると新型コロナウイルスなど大して脅威ではないという人もいる。しかし、仮に新型コロナウイルスが致死率4%で日本の人口の1億2000万人が感染したとすると480万人が死ぬことになる。

中国の人口は14億人だが、仮に10億人が感染したとすると4000万人が死ぬことになる。しかも、かかった人は数週間も発熱、咳、呼吸困難で苦しみ続ける。

そう考えると「大したことはない」という考え方は間違っていることが分かるはずだ。

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人類はすでに3つの脅威を自ら作り出すことができる

人類は「見えない脅威」に何度も苦しめられてきたし、これからも苦しめられることになる。「見えない脅威」と言えば、ウイルス・細菌による脅威ばかりが思い浮かぶが、それだけが「見えない脅威」ではない。

現代社会は生物兵器や核兵器の問題もあったりするが、このどちらも「見えない脅威」なのである。人類はすでに以下の3つの脅威を自ら作り出すことができるし、意図的にばらまくことも可能になっている。

1. ウイルス・細菌による脅威
2. 科学物質による脅威
3. 放射性物質による脅威

核兵器も生物兵器も、どんな戦争であっても「絶対に使ってはいけない」というタブー中のタブーの兵器だ。

ところが、タブーと言われるほど破壊力・殺傷能力が高いので、それがゆえに各国はこれらの兵器を作って優位に立ちたいと考える。

相手に致命傷を与えることができる。「見えない脅威」で全滅させることができる。あるいは「使うぞ」と脅すことによって相手を萎縮させることもできる。相手も持っているのであれば、お互いに危険な兵器を持ち合うことで戦争を防ぐことができるという論理もある。

しかし、相手がより危険な脅威を作り出すと、こちらはもっと強い脅威を作り出さなければならない。

だから、対抗と競争が激しくなればなるほど人類は危機に落ちる。にも関わらず、人類はこの分野をどんどん開発していくことになるのだ。「より危険なもの」を作り出そうとして、実際に作り出すことに成功する。

今回の新型コロナウイルスも、中国の細菌研究所から漏れたという噂も根強い。その真偽はともかく、生物兵器として新型コロナウイルスのような危険なものが人工的に作られていたとしてもそれをいぶかる人はひとりもいない。

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そして、いつか不測の事態が最後に起きるのだろう

こういった「見えない脅威」が恐ろしいのは、脅威が渦巻く現場に遭遇しても、どう対応していいのか一般人には分からないことである。

1995年に起きた地下鉄サリン事件でもそうだった。

有毒ガスが発生して人々がばたばたと倒れていったとき、数時間以上経っても誰も何が起きているのか分からなかった。

その当時は、有毒ガスの正体が「サリン」と言われても、誰もそれが何だか分からなかっただろう。サリンは戦争で使われる人間を殺傷する毒ガス兵器だと一般の日本人が知ったのは、この事件以降だったはずだ。

日本で無差別テロが起きて地下鉄に乗っていたサラリーマンたちが戦争で使われる毒ガス兵器で犠牲になるとは誰も想像もつかなかったに違いない。しかし、紛れもなく日本でこんな事件が起きているのだ。

新型コロナウイルスもそうだが、現代はいくつもの「見えない脅威」が社会を揺るがしている。こうした「見えない脅威」について、人は完全に対処することはできないし、危険を避けることもできない。

しかも、人類は「見えない脅威」が「より破滅的な脅威」となるように、日々「脅威を進化させている」という点に気づかなければならない。奇妙なことに、人類は脅威を減らして社会を安全にしているのではなく、より危険にしているのである。

相手により打撃を与えるために「見えない脅威」を兵器として開発する。相手も、負けじと「より破壊的な脅威」を開発する。その繰り返しが、どんどん「見えない脅威」を進化させている。

そして、いつか不測の事態が最後に起きるのだろう。
いや、もう起きたのだろうか?

『コンテイジョン 恐怖は、ウイルスよりも早く感染する』

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