日本では各地で局地的なゲリラ豪雨が都市や街を襲いかかって、甚大な被害をもたらしている。世界に目を転じても、今までは考えられなかった超弩級のハリケーン、洪水、猛暑、山火事が、次々と発生している。このままでは都会で飢餓が発生することもありえる。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
地球環境の激変が迫って災害が襲いかかる
今年の夏は、過去もっとも暑い夏になる可能性がある。昨年の夏も「統計史上もっとも暑い夏だった」といわれていたのだが、今年はそれを上まわる暑さになる予想だ。体感としても、今年は去年よりもはるかに暑く感じる。
40度を超える気温が観測される場所も増えている。浜松市で41度、前橋市、熊谷市、甲府市で40度が予測されており、20から30地点で40度以上になる可能性がある。
東京でも「ほぼ40度」近い場所がいくつもあり、ヒートアイランド現象を考えると40度を超えているホットスポットは至るところにあると報告されている。
このような熱気は巨大な積乱雲を生み出す。そして、それが雷雨となる。
日本では各地で局地的なゲリラ豪雨が都市や街を襲いかかって甚大な被害をもたらしているのだが、世界に目を転じても、今までは考えられなかった「超弩級」のハリケーン、洪水、猛暑、山火事が、次々と発生している。
あまりにも「観測史上最悪」が世界中で続いているので、もはや全人類が「最悪」に慣れてしまって何とも思わなくなってしまったほどだ。
北極の永久凍土も溶け出しており、このままではあと20年で氷は消滅することになる。熱波は北極圏のグリーンランドにも到達し、1年中雪で覆われているはずのグリーンランドで山火事が発生するような事態にもなっていた。
南極も海氷面積が過去最少だ。そして、アメリカやバハマにも超巨大ハリケーンが何度も到来している。人間の存続を脅かすような強烈な気候変動が恒常化し、もはやこの激変を人間がとめることは不可能である。
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気候変動が着実に世界を変えている
この気候の変動の要因については、さまざまな説が出されては議論されている。地球温暖化が進んでいるという説もあれば、逆に氷河期が進んでいるという説もある。私たちは気象の専門家ではないので、どれが正しいのかを判定する立場にはない。
重要なのは、どの仮説が正しいのだとしても、すでに地球は「大災害時代」に突入しているという事実である。地球全体がおかしくなっている以上、私たちはどこにいても気候変動の被害に遭うのを避けられない。
気象が荒れると、私たちの日常生活はいとも簡単に吹き飛ぶ。家が破壊され、街が破壊され、熱波で人が死に、寒波でも人が死ぬ。それが恒常的に繰り返される。
海面が上昇して住める地が消えているツバルやキリバスのような国もあれば、海岸線が削られて、今まで住んでいた場所が住めなくなっているバングラデシュのような国もある。
今後30年のあいだで、マーシャル諸島もモルディブもソロモン諸島も沈没してしまう可能性も指摘されている。
消えゆく国々のほとんどに私たちは縁がない。しかし、地球はつながっている。こうした国々が消えるというのは、凄まじいまでの気候変動が着実に世界を変えているということの証《あかし》である。
そして、それは形を変えて私たちに最悪の形で襲いかかってくるのだ。たとえば、何が起きるのか。
・激しい豪雨が襲いかかって居住地を破壊する。
・強烈な熱波と寒波が襲いかかって居住地を破壊する。
・穀倉地帯の干魃が起きて不作となり飢餓が発生する。
・被災した地方が、復旧できなくなっていく。
・インフラの破壊で各国の主要都市が機能停止する。
もう、それは現在進行形であるのを私たちは悟っているはずだ。徐々に、しかし着実にそれはやってきている。
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都会で飢餓が発生するかもしれない事態となる
今後も、地震・猛暑・山火事・ゲリラ豪雨・暴風雨・洪水・干魃と、ありとあらゆる巨大災害が吹き荒れる。毎年毎年「こんなのは見たことがない」といわれるような異常で巨大な災害が立て続けに起きる。
10年ほど前まで、世界中で起きるこれらの自然災害の劇症化は、一過性のものなのか、さらに深刻な事態が続いていくのかどうか議論が戦わされていた。
もう答えはあきらかだ。
これは一過性ではなく、継続的なものだった。世界各国で起きているのは「観測史上最悪の激甚災害」ばかりになっている。今はまだ大きな災害が起きても、速やかに復興が進んで何とか収束ができている。
しかし、激甚災害が日常的に起きてしまうならば、いずれ復興できないほどのダメージを負う地域や場所や街がかならず発生する。
年を追うごとに自然災害の「異常」が度を超していくと、最初は地域の被害に過ぎなかったものが、復興が不可能なまでの広範囲な影響になっていく。そうなれば、もはや復旧をあきらめて放棄するしかない場所も出てくるだろう。
過酷な自然環境は人をイライラさせるが、自然災害による破壊が恒常的に続いたらイライラどころではすまなくなっていく。生存環境にも悪影響が及ぶからだ。とくに、農地が広範囲に破壊されたら一気に地獄となる。
自然災害の被災地は、往々にして穀倉地帯だったり資源地だったりする。全世界で同時並行的に穀倉地帯が壊滅したら、当然のことながら穀物価格の高騰で人々の生活に影響を与えていくことになる。
政府が無能であったら、都会で飢餓が発生するかもしれない。穀倉地帯だけでなく、都市の物流も自然災害で破壊されたら、都市住民は多少の備蓄をしたところで焼け石に水と化す。
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最悪の事態はいつでも起こり得るのが今の時代
ここ最近の異様な気象、歴史に残るような巨大地震などが、これからも頻繁に起きるのであれば、それによって復旧が不可能になったり、治安が崩壊する国や地域が続々と出現するのは間違いない。
日本も例外ではない。日本はただでさえ地方が過疎化に苦しんでいる国である。災害によって過疎地区から見捨てられてしまうだろう。それぞれの過疎地方が崩壊し、故郷を見捨てざるをえなくなって涙を流して移住する人も出てくる。
いくら日本とはいえども、復旧できる国家予算と国民の体力は無限ではない。すでに国民は30年にも及ぶ政府の無能のせいで経済的に疲弊している。ここで国民負担率をさらに引き上げるのも容易ではない。
災害がさらに大規模化かつ恒常化して、繰り返し国土にダメージを与えるようになると、もはや復旧の体力すらもなくなって、現場が荒廃したまま放置される可能性が高まる。放置されるのは、人口の少ない地方からとなるだろう。
どこの国でも都市は社会の中枢なので、どんなに破壊されても復旧されるが、逆にいえば地方は都市を守るために予算削減で犠牲にされていく。インフラが破壊されたとき、そこに住む人たちが極度に少なければインフラは復旧されない。
災害でかろうじて自分の家屋が助かったとしても、他が壊滅してインフラも復旧できなければ、そこに人は住めなくなる。災害に直撃された地方は、そうやって死んでいくことになる。
しかし都市部も平穏ではない。都市部も絶えず災害に見舞われて、激しい気象変動の被害を受けるわけだから、その被害総額は並大抵のものではない。もっとも都市の場合は、地震の被害によって致命的な壊滅に至る可能性のほうが高いだろう。
東京でも首都直下型地震がありえるし、名古屋・大阪でも南海トラフ地震がきたらひとたまりもない。
南海トラフ地震も「そろそろ近いのでは?」と危惧されるようにもなってきているが、そろそろ「最悪の事態」を考えなければならないときが刻々と近づいているのかもしれない。
「都会で飢餓が発生することもありえる」といっても、今は誰も想像できない話かもしれないが、私自身は別に荒唐無稽な話であるとは思っていない。最悪の事態はいつでも起こり得るのが今の時代であり、今の日本だ。
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