平均睡眠時間7時間22分。それは、日本人を自滅に追いやっている要因かも?

平均睡眠時間7時間22分。それは、日本人を自滅に追いやっている要因かも?

日本人の平均は7時間22分だった。2009年は7時間50分だったので、日本人の睡眠はどんどん減っていて、今やOECD加盟国で最短になっている。今でも短いのに、さらに短時間睡眠に憧れて「睡眠時間は6時間程度に抑えたい」と自ら思う人さえもいるようだ。ビジネスに追われている人たちの中には、6時間睡眠を連日繰り返している人もいる。寝ないで仕事をするのは日本人の美徳のようになっているのが分かる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

寝ないで仕事をするのは美徳なのだろうか?

あなたは、一日何時間寝ているだろうか? 以前、私は不眠症で苦しんでいる時はあったが本当につらかった。幸いにして、この不眠症は自然に治ったのだが、最近、鼻の手術をして口呼吸を強いられて深く眠れず、頭がフラフラしている。睡眠がいかに重要なのか再確認した。

基本的な話をすると、今の私には一日8時間程度の睡眠は必要なようだ。心情的には8時間どころかもっと寝たい。それほど寝ない時も頻繁にあるが、馬鹿なことをして起きているよりも睡眠をしっかりと取りたいという気持ちは常にある。

欧米諸国のほとんどの国では平均睡眠時間は8時間以上である。2016年に経済協力開発機構(OECD)が実施した調査では、加盟各国の平均睡眠時間は8時間25分だった。日本はどうだったのか。

日本人の平均は7時間22分だった。2009年は7時間50分だったので、日本人の睡眠はどんどん減っていて、今やOECD加盟国で最短になっている。日本人は本当に睡眠時間が短いことが統計から浮かび上がっている。

今でも短いのに、さらに短時間睡眠に憧れて「睡眠時間は6時間程度に抑えたい」と自ら思う人さえもいるようだ。ビジネスに追われている人たちの中には、6時間睡眠を連日繰り返している人もいる。

寝ないで仕事をするのは日本人の美徳のようになっているのが分かる。

「身体に良いのは7時間だ」と専門家の間で言われているが、実はこういった根拠は時代によって変遷するものなので、私は信じていない。そもそも、そういうのは個人個人の体質や体力や年齢によっても違ってくる。

年齢と言えば、20代は睡眠時間は基本的に多く、年配になれば睡眠時間が減ってくることも分かっている。高齢になれば、深く眠りたくてもすぐに目が覚めるし、いったん目が覚めたらずっと覚醒して睡眠障害につながっていく。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

人によって違う、自分の最適な睡眠時間

睡眠時間をどれくらい取れば良いのかというのは、人によって完全に違ってくる。年齢・性別・体力・環境によっても違ってくるし、場合によってはその人の長年の習慣によっても違ってくる。

しかし、物事には平均があって睡眠時間で言えば7時間から9時間がおおむね平均の範疇に入る。

ところが、8時間も寝ていると聞くと、それが平均にも関わらず多くの日本人は嘲笑を顔に浮かべて「自分は6時間しか寝てない」と自慢を含めて言い始める人が多い。3日も徹夜したとか言う人もいる。

まるで日本人は、寝ている時間を「サボっている時間」「何も生産しない無駄な時間」とか定義しているかのようだ。

しかし、そういった考え方は危険かもしれない。

自分の体質や気質を無視して短時間睡眠を行っていると、やがて精神的に病んでいくのは以前より知られている。結局、睡眠時間を無理して削れば削るほど、どこかにひずみが生まれてくるのである。

現代社会は往々にして人々を忙しくさせているのだが、社会の空気がそれを求めているからと言って、それに合わせていると自らが追い込まれる。

重要なのは、「今の自分」に合った睡眠時間を取らないと、ツケをどこかで払わなければならないということだ。睡眠時間を平均に合わせようとしたり、短めにしようとしたりするのは無理をするということだ。

睡眠時間こそ、他人を見つめるのではなく自分を見つめて決める必要があるのだ。睡眠時間で区分けすると、人は以下の三種類に分かれるというのが分かっている。

ショートスリーパー(6時間未満の睡眠)
バリアブルスリーパー(7時間〜9時間の睡眠)
ロングスリーパー(10時間以上の睡眠)

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

本当に日本人はすべてショートスリーパーなのか?

ほとんどの人たちはショートスリーパーともロングスリーパーとも言えない中間の側に属している。「7時間から9時間」のどこかが心地良いと感じて、その範疇で睡眠を取るようにしている。

私自身も「8時間は寝たい」と思っているので、典型的なバリアブルスリーパーであることが分かる。多少、ロングスリーパーの方に近いかもしれないが、9時間以内であれば十分に思うのでロングスリーパーではなさそうだ。

これを読んでいる多くの人も当然のごとくバリアブルスリーパーだろう。人口の80%から90%はバリアブルスリーパーだからである。

しかし、人口の5%から10%は、ショートスリーパーでありロングスリーパーだ。極度に短い睡眠でも大丈夫な人と、極度に長い睡眠を必要とする人がいる。

興味深いのは、この「ショートスリーパー」と「ロングスリーパー」の人たちは人間的な気質が違うことだ。

「ショートスリーパー」は、実務派、実業家、社交家タイプで、精力的な人はほとんどがこのタイプである。ナポレオンやエジソンなどがこのタイプの典型的な代表としてよく引き合いに出される。

逆に「ロングスリーパー」は、独創的、内省的、芸術家、科学者タイプである。とことん頭を使って物事を追求し、今までにない型破りな哲学や成果物を生み出して世間を驚かせるのが、このタイプである。

アインシュタインなどは、このタイプの典型である。このタイプが長時間睡眠者になっていくのは、脳を激しく消耗するからだとも考えられている。脳は人間の器官で最もエネルギーを消費する部位なのだ。

ただし、こうした分類はあくまでも「一般論」の範疇であり、当然のことながらショートスリーパーの芸術家・科学者もいれば、ロングスリーパーの実業家もいて当たり前だ。個性や職業は睡眠によって一般化できない。

地獄のようなインド売春地帯を描写した小説『コルカタ売春地帯』はこちらから

日本人を自滅に追いやっている要因かもしれない

日本では睡眠時間の平均が7時間22分でOECD加盟国で最短になっているのを見ても分かる通り、間違いなく「ショートスリーパー」が持てはやされている。

しかし、本当に日本人はすべてショートスリーパーになるべきなのか? もし社会に強制されて自分の気質に合わない睡眠時間を取っていたら、実は無理が祟っていて自ら才能を摘んでいる可能性もある。

人間は国籍や人種に関わりなく、80%から90%がバリアブルスリーパーなのだ。7時間から9時間寝ないといけない人がショートスリーパーの人の真似をすると心身が壊れていく要因になるというのは間違いない。

私は、日本人の「ショートスリーパー礼賛」の社会を良いとは思っていない。

日本人は明らかに「寝ないで仕事に打ち込む」ことを美学であると思っており、何かをするために睡眠時間を削るのは「当たり前」と無意識に考えて行動している。

もともとショートスリーパーの多い事業家や経営者もそうなのだが、従業員もまたそう思っているので睡眠時間を削って仕事に励む。

しかし、ブラック企業が従業員を鬱病に追い込んだり自殺や過労死に追いやるのは、バリアブルスリーパーの人を6時間未満の睡眠に追いやるような仕事をさせているからではないのか。

日本の自殺者が多いのも悲観主義者が多いのも年中疲れているのも、社会全体がショートスリーパーを賞賛することによって、バリアブルスリーパーの日本人を意図的に睡眠不足にさせて、心身を蝕んでいるからではないのか。

日本人は、自分たちの睡眠時間の平均が7時間22分でOECD加盟国で最短であることを、もっと深刻に考えた方がいいのではないか。それは、日本人を自滅に追いやっている要因かもしれないのだから。

少なくとも、日本人はショートスリーパーの礼賛はやめるべきだ。ショートスリーパーで問題ない人もいるが、ほとんどの日本人はそうではないのだから、普通に7時間から9時間の睡眠を取るべきである。

『ベッドにいてはいけない―不眠のあなたが変わる認知行動療法(土井 貴仁)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

ライフスタイルカテゴリの最新記事