奇妙な男がいる。物心が付くか付かないかの時期、4歳になる直前に母を亡くし、あまりにも貧しすぎて8歳の頃に父親と離れて救貧院の少年施設に入れられた男だ。
コミュニケーションがうまく取れないので、12歳で知的障害児の施設に入れられた。以後、自分の世界に閉じこもり、死ぬまでその姿勢は変わらなかった。
彼の名前はヘンリー・ダーガーといった。
彼はその後、16歳で病院の掃除夫として働き始め、73歳になるまでずっと掃除夫として暮らしていた。
他人とうまく会話することができず、仕事が終われば誰とも付き合うこともなく自室に引きこもり、まったく部屋から出ようとしなかった。
81歳で死ぬまで、ほとんど他人と付き合いがないままだった。いつも浮浪者のような格好をして、人に話しかけられても天気の話以外はしなかった。そのため、多くの人が彼を知的障害者と思っていた。
本当に彼は知的障害だったのか。いや、彼は子供の頃から読書が大好きで、小学校では1年から3年に飛び級をしたほどの知性を持っていた。