売春宿やホテルの部屋で、女性が最も怯える瞬間がある。それは部屋のドアがノックされる時だ。売春ビジネスをしているという「後ろめたい気持ち」がある中で、ドアの向こうに誰かが何かの用で立っている。
それはもしかしたら警察かもしれない。あるいは自分のボーイフレンドや夫かもしれない。あるいは、武装した強盗やギャングかもしれない。
相手が何者か分からない中で、ドアがノックされる。女性は本当に怯える。仮にその時間が真夜中であればなおさらだ。ノックでさえ女性には恐怖なのに、鍵が閉められたドアがいきなり開けられて大勢の男がなだれ込んできたらどうだろう。
そして、それが警察なら……。
人間が最も無防備な時、そして最も言い訳が立たない時というのはどのような時か。それは部屋で裸になって誰かと性行為をしている時だ。
「何もしていない。売春していない」とは言えない。全裸でいることが決定的な証拠だ。
だからどこの国の警察も売春ビジネスの摘発を行う時、しばしば容疑者が「性行為をしていると思われる最中」を狙って部屋に踏み込んでいく。(鈴木傾城)