日本人は高度成長期を迎えてから現在まで、後進国や新興国から見ると、過剰なまでの豊かさを享受してきた。多くの人はこの時代しか知らないので、日本は昔から豊かだったと思い込んでいるが、本当はそうではない。
実感として知りたければ、1950年から1960年代の日本映画を観ればいいかもしれない。
この頃に作られた映画は、どの映画を観ても、そういった貧困だった頃の日本をきちんと映し出している。
もともと日本は豊かだったわけではない。明治や大正をことさら美化する日本人もいるが、その頃の日本は大多数の国民が貧困にあえいでいた。
農村では子供を売り飛ばす親もいたし、若い娘たちを買いつける女衒(ぜげん)というビジネスをしていた人間も多かった。今で言うところの人身売買だ。
人身売買は、豊かではない国では珍しくも何ともない光景で、現在も世界のあちこちで似たような出来事が起きている。