
父親が実の娘を性的対象にする。こうした近親相姦で犠牲になる娘は多い。だが、ほとんどの場合は、表沙汰になることはない。また、父親を性的暴行で起訴する娘もほとんどいない。
しかし、時代が変わってきているようにも見える。
2025年10月21日、富山地裁は大門広治被告(54)に対し、実の娘である福山里帆さん(25)への性的暴行事件で懲役8年の実刑判決をくだすという出来事があった。
彼女は中学2年から高校2年までの約4年間、母親不在時の自宅で少なくとも8回にわたり父親から性的暴行を受けたと訴えていた。これに対して父親は、性行為自体は認めつつも、「逆らえない状況ではなかった」と主張し無罪を求めた。
つまり、「逆らおうと思ったらできたはずなのに、それをしなかった娘が悪い。自分は悪くない」というわけだ。この父親が本当にそう思っているのか、それとも少しでも懲役を軽くしようと思ってもがいているのかはわからない。
だが、娘のことを慮ってすべての罪を自分がかぶるような素振りがなく、そこでも自己中心な性格であるのが見て取れる。結局、裁判長は「家庭内という特殊な状況を利用し、被害者の人格を無視した卑劣かつ悪質性の高い常習的犯行」と断じ、求刑通りの判決を言い渡している。
父親からの謝罪や反省は最後まで得られず、彼女は失望を感じていたようだ。「私が望んでいたかのように言われ、憤りを感じた」と述べている。
彼女が実名を公表してまで裁判に臨んだのは、「家庭内でも性被害があることを社会に知ってほしい」という思いからだという。裁判を通じて「社会が黙っていない」というメッセージを広めることが、同様の被害の抑止につながると彼女は信じている。
日本でこのような裁判がおこなわれ、父親が8年の実刑判決になったというのは、今後は大きな歯止めになるようにも思える。娘が告発し、起訴したら、父親であってもタダで済まない。
この事件を見ながら、私は東南アジアで知り合った何人もの女性のことを思い出した。父親に性的暴行された、という女性を私も何人も知っている。



コメント