就職氷河期世代。無能な政治のツケをかぶった上に自己責任だと足蹴にされる地獄

就職氷河期世代が社会に出てから20年以上が経過したが、その多くはいまだに安定した正社員雇用を得られていない。40代後半から50代前半の非正規雇用率は約20%に達しており、他の世代よりも高い水準にある。無能な政治のツケをかぶった上に自己責任だと足蹴にされているのがこの世代だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

1995年から2000年前後に卒業した学生たち

1990年代半ば、日本経済はバブル崩壊の後遺症から抜け出せず、企業は採用を大幅に抑制した。1993年から2005年頃にかけて、新卒一括採用の枠は急激に縮小し、特に1995年から2000年前後に卒業した学生は深刻な雇用難に直面した。

大手企業は安定した正社員雇用をほぼ停止し、新規採用枠の多くが派遣社員や契約社員といった非正規枠に置き換えられた。この時期に社会に出た若者は、「就職氷河期世代」として後に呼ばれることになる。

当時の統計では、1998年卒業の大学生の就職内定率は約80%を割り込み、短大や高校卒業者は70%前後にまで落ち込んだ。

就職できたとしても、希望職種や安定した待遇を得られた者は少なく、多くが営業、販売、倉庫作業、派遣事務など、将来の昇進や昇給が見込めない職種に流れざるを得なかった。

非正規雇用比率は1990年代後半から急上昇し、2000年代初頭に小泉政権が誕生してからは全労働者の3割を超えた。小泉政権の経済担当だった竹中平蔵は、あからさまに非正規雇用を進めていたからだ。

この世代の特徴は、卒業時点で職歴やスキルを積む機会が極端に限られていたことにある。新卒一括採用制度では「新卒カード」が非常に重視され、一度そのタイミングを逃すと、同じ企業規模・待遇での正社員採用はほぼ閉ざされる。

中途採用市場も当時は未成熟で、即戦力を求める求人が中心だったため、未経験者が入り込む余地はほとんどなかった。結果として、多くが非正規雇用を繰り返し、安定したキャリアの基盤を築くことができなかった。

さらに、この期間に発生した金融危機や企業の大型倒産も、状況を悪化させた。山一證券、北海道拓殖銀行など大手の破綻が連鎖し、企業はコスト削減のため新卒採用を削り、既存の人員を非正規に置き換えた。

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今なお這い上がれない就職氷河期世代

当時の政府の雇用政策は、職業訓練や再就職支援を整備する段階には至っておらず、民間も即戦力志向を強める一方だった。そのため、一度つまずいた若者にとっては、同世代との差を縮める機会がほぼ存在しなかった。

この機会格差は、その後の所得格差と直結する。

正社員として採用された同級生が年齢とともに昇給・昇進し、退職金や厚生年金の権利を確保していく一方で、非正規のままの者は低賃金と不安定な雇用から抜け出せないまま年齢を重ねた。

「勝ち組」「負け組」という言葉が生まれるようになったのは、この時期からだ。

「失われた30年」の最初の10年は、この世代の人生設計を根本から狂わせた。社会は景気回復を待ち続けたが、そのあいだに彼らの若さは消耗し、経歴は不連続となり、取り返しのつかない差が刻まれた。

この世代の苦境は、単なる個人の努力不足ではなく、間違いなく時代と制度の影響によるものであった。運が悪いで済ませられるようなものではない。彼らの人生は国の失策と共にボロボロになっていったのだ。

就職氷河期世代が社会に出てから20年以上が経過したが、その多くはいまだに安定した正社員雇用を得られていない。厚生労働省の統計では、40代後半から50代前半の非正規雇用率は約20%に達しており、他の世代よりも高い水準にある。

特に男性の場合、同年代で非正規雇用にとどまる割合は異常に高く、キャリアの断絶や低所得状態が固定化している。

今後も改善できる兆しはない。日本の雇用慣行では、若年層を長期育成する前提で正社員採用がおこなわれるため、中高年の未経験者は敬遠されやすい。さらに、職務経歴が非正規や短期契約に偏っていると、採用担当者からは即戦力と見なされず、面接すら通過しにくい。

履歴書の空白期間や短期間での職場転々も、選考に不利に作用する。

また、非正規雇用から正社員に転換できる制度自体が、名目上は存在しても実際の利用率は低い。企業側にとっては、非正規のまま雇用を続けたほうが人件費の変動幅を大きく保てるため、制度を活用する動機が弱いのだ。

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非正規雇用者の約4割が「貯蓄ゼロ」のまま

「仕事に熟練して正社員になればいいではないか」という人もいるが、それは現実的ではない。派遣や契約社員として長年勤めても、正社員登用試験に受からない、あるいはそもそも募集がないケースが多いからだ。

非正規は賃金面でも圧倒的に不利だ。正社員と比べて時間当たり賃金は2〜3割低く、賞与や退職金はほぼない。厚生年金や社会保険の適用から外れる雇用形態も多く、将来の年金受給額は正社員より大幅に少なくなる。

20年、30年とこうした雇用形態が続けば、生涯賃金で数千万円の差がつく。それで、どうなるのか? 就職氷河期世代はずっと叩きのめされてきて老いていくことになる。そして、老後でも経済問題を抱えるのだ。

彼らは厚生年金の加入期間が短く、国民年金のみの受給者となる割合が高い。この場合、満額でも月額は約6万5千円程度であり、生活費としては到底足りない。正社員として勤続30年以上の同世代と比較すれば、年金収入は半分以下になる。

貯蓄も乏しい。金融広報中央委員会の調査では、40代後半から50代前半の非正規雇用者の約4割が「貯蓄ゼロ」と回答している。

持ち家の有無も将来の生活に直結する。この世代では、正社員として安定収入を得られなかったため住宅ローンを組むのが難しく、賃貸住まいのまま中高年期を迎える人が多い。

定年や健康悪化で就労が難しくなれば、家賃がそのまま大きな負担として残る。年金収入だけでは生活費と住居費を同時に賄えず、生活保護に頼らざるを得ない事態も現実化している。

彼らは脆弱な経済状態の中で病気になりやすい。高齢化すれば持病や生活習慣病のリスクが高まり、医療費は増加する。さらに介護が必要になれば、介護保険の自己負担や施設利用料が重くのしかかる。

これらの費用を捻出できなければ、必要な医療や介護を受けられず、生活の質が急激に低下する。それでも、彼らは生きるために働き続けるしかない状況となる。だが、60歳を超えて非正規の短時間労働を続けても、収入は増えることはない。生活の余裕は、いっさいない。

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孤立死も「緩慢なる自死」が多く含まれる

就職氷河期世代の困窮は長期化しているが、それを抜本的に救う制度や仕組みは整っていない。政府は過去に限定的な支援策を打ち出したが、多くはおざなりなものであり、根源的なものではない。

「就職氷河期世代支援プログラム」なんかで、採用枠の新設やハローワーク経由の求人拡充がおこなわれたこともあったが、実際に安定雇用に結びついた割合は低く、多くは非正規や短期契約に終わった。

企業側も積極的に中高年の未経験者を受け入れる動きは乏しい。採用担当者は限られた枠を若年層に振り向ける傾向が強く、氷河期世代は常に後回しだ。そうした状況の中で、ネット上では彼らの苦境を「自己責任」と断罪し、この世代の境遇も個人の努力不足と批判する声も大きい。

無能な政治家のツケを押しつけられて不遇の人生を送ることになった上に、社会からは「自己責任」だと足蹴にされるのだから、やってられないだろう。彼らは孤立していく一方となる。

家族や親族からの支援が得られない場合、その孤立は経済的困窮と重なり、精神的な追い詰めを加速させる。

フィリピンなどの貧困地区では、家族や共同体の結びつきが強いが、日本では地域社会のつながりが希薄化していることも状況を悪化させている。

かつては自治会や職場の人間関係が最低限の安全網として機能していたかもしれないが、現在はそれがほぼ失われ、生活困窮や健康悪化が周囲に知られないまま深刻化し、人知れず死んでいくケースも増えている。

50代、60代の孤立死も増えているが、今後もさらに増えていくだろう。この世代の孤立死では「緩慢なる自死」が多く含まれている。だいたいがゴミ部屋になって死んでいるのだが、もう生きることに疲れ果てて身のまわりも構わなくなっていたことが部屋の様相でわかる。

日本の社会はこの世代を長期的に見捨ててきた。その結果、こんな状況になってしまっている。

景気回復や人手不足といった環境変化があっても、氷河期世代に雇用が広がるわけでもない。支援策は点在するだけで体系化されない。この冷酷な社会の中では、個人の努力や短期的な施策では何も変わらない。

そして、彼らは経済苦を抱えたまま高齢となっていく。

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コメント

  1. さささ より:

    だからみんな言っているでしょう、
    安楽死を合法化してくださいって。

    安楽死の前に3ヶ月くらい入れる施設があるといいですね。
    3ヶ月かけて、ゆっくり自宅の不用品を処分する、
    会いたい人がいれば会っておく、
    施設で3食健康な食事を提供してもらい、
    検査をして使えそうな臓器の提供先を決める。

    そして、3ヶ月後、
    全ての臓器を待っている人に分け与えて
    感謝されながら死んでいく。

    3ヶ月の間に、「やっぱりもう一度生きようかな」と思うなら
    それもまた良し。

    警察や特殊清掃も出動しなくてよくて、
    部屋のオーナーさんにも迷惑かからず、
    しかも臓器提供して感謝される!
    実践しない理由が見つからないです。

    当方、95年一流大学卒で現在正社員なのに年収360万
    (手取り23万、ボーナスなし)の底辺更年期ババア。
    みんな賃上げされてるって本当なの?
    どこの世界の話?
    転職しようにも介護とドライバーしか求人がないですね笑

    もう疲れた、未来が良くなる気が1ミリもしない。
    心底上記のような安楽死の施設を希望してます。

    • 鈴蘭 より:

      私も一応地元では名門とされている大学は出ているのですが、下記のようにアスペルガーで低能なため、職を転々としておりました。
      (今は非正規雇用ですが直雇用です)

      安楽死制度、合法化されたらいいですが、政府は納税者を減らしたくないですから、日本が安楽死を導入するなんて夢のまた夢でしょう。

  2. 鈴蘭 より:

    私は就職氷河期世代ではないですが、発達障害(アスペルガー)のため能力が低く、派遣で働いていた時を除いてほぼどこで働いても解雇やパートに格下げされるので、就職氷河期世代みたいに子供を産まないと決めております。
    (就職氷河期世代の方々は不況のために子供を持つ余裕なんてなかったですよね?)

    政府は就職氷河期世代に対して何の施しもしないため、彼らもまた国のために何もする必要はないと思います。

  3. 匿名 より:

    わたしは違法行為ばかりする会社に嫌気がさしやめました。
    世間にばれなければいいとか思ってる奴が残ってるかもしれませんが
    詐欺行為がばれてしまえばもう会社も勤務してる従業員たちも
    完全に終わりでしょう。

  4. 匿名 より:

    私は1998年(長銀、北海道拓殖銀行、山一証券が破綻した頃です)に就職活動をしました。
    50社ほど受験して、何とか今のIT企業に就職出来ました。
    当時は、ITバブルで1年目の冬のボーナスに150万くれました。それを元金に投資を始めたところ、自分に投資のセンスがある事を発見し、現在、住宅ローン完済済で準富裕層への道も見えて来ました。
    (ちなみに、1999年に東大(理系)の滑り止めとされる大学を卒業、妻、子供の3人家族です)
    でも、上のバブル世代との賃金格差は大きく、会社でその話題になると腹が立ちます。
    人生で一番大事なのは、『運』で、『実力と努力』は、その次ですね。

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