IQが高くても成功できない理由。クローズアップされている非認知能力とは何か?

IQが高くても成功できない理由。クローズアップされている非認知能力とは何か?

アンダーグラウンドでいろんな人と接していると、頭が良く、かなりIQが高いと思われるのに、社会の底辺に向かって転がり落ちていく人がいることに気づく。IQが高くても成功できない人がいる。最近、こうした人たちの研究から、「非認知能力」がクローズアップされるようになりつつある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

「非認知能力」がクローズアップされている

アンダーグラウンドでいろんな人と接していると、頭が良く、かなりIQが高いと思われるのに、計画的に物事を進めるのが苦手だったり、重要なタスクを後回しにして期日に間に合わなかったり、時間や期限を守れなかったり、ライフスタイルがめちゃくちゃだったりする人を見かける。

そういう人は、得てして対人関係でトラブルが起こりやすく、コミュニケーションが一方的だったり、ストレスを受けると行動が不安定になったり、ちょっとした失敗でもあきらめてしまったり、現実逃避したりする。

ルールやマナーを守らない、責任感が弱い、約束を守れない、問題が起きたときに他人や環境のせいにする、といった態度を取ったりする。

IQが高くても成功できない人がいる。最近、こうした人たちの研究から、「非認知能力」がクローズアップされるようになりつつある。

「非認知能力」とは何か。

これは、IQや学力テストの点数など、いわゆる「認知能力」では測定できない個人の力や特性を指している。具体的には、目標を遂行する能力、他者と協調する能力、感情をコントロールする能力、あるいは失敗や挫折から立ち直る能力を指す。

認知能力は数値や偏差値、テスト結果で客観的に測定できる。だが、非認知能力はそのような明確な数値では測れない。

従来の教育や社会評価は、認知能力を最重要視してきた。学校教育では、国語や数学、英語といった教科ごとにテストがあり、点数や偏差値で成績が決まる。この構図は企業の新卒採用にも持ち込まれ、学歴や入試偏差値が重視されてきた歴史がある。

だが、「非認知能力」が欠けていたら、いくら認知能力が高くても意味がない。この非認知能力は、いくらテストの点数が高くても、セットで備わっているとは限らない。「頭が良いのに社会の底辺にいる人」は、まさに非認知能力の欠如が生み出している可能性がある。

だから、この「非認知能力」がクローズアップされている。

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早くから身につけておいたほうが有利

現在は高度情報化社会であり、技術革新によって社会が複雑化し、予測不能な課題や変化によって適応能力が問われる時代となっている。

固定的な知識やスキルだけでなく、新しい状況に適応し、これまでの社会との違いを吸収しながら自主的に変化して社会に適応する能力が必要になってきた。そのため、認知能力だけでなく、非認知能力も重視されるようになっているのだ。

この非認知能力の注目度が急激に高まったのは、海外での研究成果が次々と報告されるようになったことも大きい。

アメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマンは、子供時代の非認知能力が将来の学業成績だけでなく、収入や就業状況、さらには犯罪率や健康状態にも大きく影響することを示した。

言ってみれば、学業(認知能力)だけでなく、精神的な育成(非認知能力)も幼児期に高めるプログラムに投資することで、長期的な社会的リターンが得られることが明らかになった。

非認知能力は早くから身につけておいたほうが有利だという当たり前の結論だ。

研究によると、この非認知能力は一度身につければ終わりではないというのがわかっている。環境や年齢、人生経験によって、非認知能力は伸びたり、弱まったりすることが確認されている。

たとえば、困難な状況を乗り越えた経験や、さまざまな人と協働した経験は、非認知能力の向上に直結する。逆に、成功体験ばかりを重ねて失敗を経験しない場合や、他者とのかかわりが極端に限定されている場合、非認知能力は十分に育たない。

つまり、非認知能力は先天的な才能ではなく、環境や経験によって形成・変化するものだった。そのため、自分がどこまで非認知能力を伸ばしていけるのかは、非常に重要な視点となる。

非認知能力が弱いのであれば、それを向上させれば人生が向上する。

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非認知能力は個人の性格や癖の問題ではない

計画的に物事を進める。時間や期限を守る。ライフスタイルを固める。対人関係を円滑にする方法を学ぶ。コミュニケーションを磨く。ストレスの対処を覚える。失敗や挫折に立ち向かう方法を覚える。ルール、マナーを守る。責任感を強化する。約束を守る……。

これらは学校ではテストの点数にはならないので評価されないが、だから重要ではないわけではない。むしろ、社会に出たときはテストの点数よりも重要かもしれない。このテストの点数で評価されないものが「非認知能力」だ。

非認知能力は個人の性格や癖の問題ではない。それは、意識することで向上させることができるようになるものだ。

テストの点数にならないからと言って軽視していいものではない。そもそも、非認知能力の高い人は学力の伸びにもつながることが知られている。実際、粘り強く取り組む力や失敗から立ち直る力、自己管理の習慣がある子供は、知識を吸収するだけでなく、課題を自分で見つけて解決する力が自然に身につく。

その結果、学校のテストや受験でも成果を上げやすい。アメリカの大規模調査では、子供の自己制御力(セルフコントロール)が高いと、高校卒業率や大学進学率が向上する傾向が明確に示されている。

この非認知能力がいよいよ真価を見せるのは、社会に出てからだ。非認知能力が高いと、間違いなく社会で成功できる。それもそうだ。社会はほとんどの場合は人と人とのかかわり、社会とのかかわりで成り立っているからだ。

ここで時間も期日が守れず、対人関係でトラブル続きで、コミュニケーションも貧弱で、物事に対して責任感もないのであれば、高学歴だろうが何だろうが、すぐに見捨てられるだろう。

アンダーグラウンドにいる「高学歴だが底辺に叩き落とされている人」は、まさに非認知能力が欠落していたからなのだ。知識やスキルが高くても、途中で投げ出したり、マナーもルールも守れなかったり、協調もできなければ、社会では役に立たない。

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非認知能力を向上させることに対しても強い反発

社会全体で見ても、非認知能力が高い人が多いほど犯罪率や社会的なトラブルが減少するという統計があるのだが、こんなのは統計なんか見るまでもない。非認知能力が欠落している場合、衝動的な犯罪や暴力、いじめなどに巻き込まれやすい。

非認知能力が低く、感情のコントロールができず、他者との摩擦が絶えない人は、ストレスや孤独感を強く感じやすく、うつ病などのリスクも高まる。そうなればなるほど、社会的に能力を発揮できなくなる。

そう考えると、学力や資格のような数値化できる能力ばかりが社会の成功や幸せにつながるわけではなく、むしろ非認知能力のほうが重要になっているというのがわかるはずだ。

非認知能力は、子供の頃に親や学校が伸ばしてくれれば自然に身につくのだが、そうでなければ、自分で非認知能力を意識して伸ばしていく必要がある。

計画的に物事を進める方法を覚え、時間や期限を守り、コミュニケーションを磨き、約束、ルール、マナーを守るというのは、言ってみれば常識を守るということでもある。信じられないかもしれないが、この非認知能力にあたる部分をきちんと守るだけでも生活は安定し、社会で成功する確率も高まる。

だが、恐ろしく頭が切れる人であっても、非認知能力の重要性に気づくとは限らず、奇妙なことに非認知能力を向上させることに対しても強い反発を覚えて毛嫌いする人もいる。

単純に常識に反することが自分らしいという価値観を持っている人もいるし、知能や専門知識、論理的思考力「のみ」が社会的成功や自己実現の源だと固く信じている人も非認知能力を蔑視することがある。

アンダーグラウンドでも恐ろしく頭が良いのに、自ら人生を破壊してどん底に、どん底に堕ちていく人を見ていると、私自身も反面教師として非認知能力の重要性を認識したりする。

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