◆哀しみのネン。ときどき、私は母のない子供のように感じる

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タイ編
もうすでに真夜中の1時を過ぎていた。バンコク・スクンビットでは営業を終えようとするバーから次々と一夜のカップルとなった男女が生まれて、手をつなぎながらホテルに消えていく姿が見える。

高揚したファラン(白人)の男の顔、厚化粧の女の作り笑い、そして、どこからか聞こえてくる懐かしい音楽の破片、通りすぎる人たちの話す知らない国の言葉、道端にひとりで立って腕組みをしている女の姿。

女たちの嬌声もあって賑やかなはずなのに、そんな中でもこの日はどこか湿った感じがした。まだ男を捕まえることができなかった女たちの焦燥や怨念のようなものが、この時間になると漂い始めるからなのかもしれない。

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