もし彼女と同じ境遇だったとき、耐えられるだろうか、と考えることがよくある。
ウィナのときもそうだった。来る日も来る日も、夜になると、熱帯のどんよりと湿った空気の中で立ち続け、道ゆく男たちの好奇の目にさらされ続けなければならない。
体調が悪くても関係ない。休ませてくれない。飼い殺しだ。
自分が肉体を張って稼いだ金なのに、オーナーに大半を搾取される。オーナーは全身入れ墨のヤクザで、管理するのは人を人と思わない年中罵り声を上げる女。
ウィナは、そんな中で8ヶ月以上も拘束されていた。もし彼女と同じ境遇だったとき、耐えられるだろうか……。
ウィナに初めて会ったのはいつ頃だったのだろう。シンガポール・ゲイラン地区の夜の道に他の4人の女性と立っている彼女は美しかったが憔悴しているように見えた。
彼女が立っていたのは第12通り(ロロン12)の途中から西に向かって第8通り(ロロン8)まで続くタルマ通りの一角だ。
この通りは第8通りの角に中国大陸から来た女性たちが何人も立っているので、それを目当てにした男たちでかなり人通りが多い。
男のほとんどはシンガポーリアンの華人である。彼らの目は同じ中国の血を引く女性に注がれて、インドネシアから来た女たちにはあまり関心がない。
ウィナはそんな中で、通りかかる男たちに……
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)
ママサン(マミー)、ディディ、遣り手婆ァ、マダム、彼女たちも売春女性のOGだったり、そうでなくても壮絶な人生を送ってきたのだろうと思いますし(うーん、Mme.Claudeは微妙な線ですが)その過程で何かが壊れてしまったとか現役引退しても凶暴凶悪ろくでなしの男が背後にいて相変わらず崩壊中とかあるかも知れませんが、せめてもう少し女の子たちにシンパシーを持って接してあげても・・・まとめ役、管理役、使役役のママサン達の中でも松・竹・梅・それ以下・外道と一通りではないと想像します。
ウィナさんの薄幸苦境を自乗にしているママサン、そのママサンの後ろには肥満刺青満載華僑男、さらにその背後にも何かがもっと。この不幸と搾取の重層構造の末端で死ぬまで生きなければいけないならば死は救いに他ならないと私なら思います。 aurore