コロナ禍はインドの貧困層に蔓延して売春で生きている女たちは大ダメージを受けてしまった。こうした女性たちの救済に動いていたのが『ダルバール・マヒラ・サマンワヤ委員会』というセックスワーカーたちの団体である。
インドには分かっているだけでも約100万人ものセックスワーカーがいると推定されている。この100万人の半分以上は身分証明書を持っておらず、投票も、銀行口座の開設も、福祉支援のアクセスもできない。またコロナ禍の弱者救済のための給付金も受け取れない。
要するに彼女たちは衝撃的なコロナ禍の惨状の中でも見捨てられていたのである。2年に及ぶコロナ禍のダメージで彼女たちは極貧に落ちて宗教施設や人権団体の支援がなければ餓死してしまうほど追い詰められていた。
しかし、2021年12月14日に状況が変わった。インドの最高裁判所は、セックスワーカーたちに速やかに身分証明書を与えて、彼女たちが投票権を手に入れることや、食料援助にアクセスすることができるようにという判決を出したのだった。
インド・コルカタの売春地帯ソナガチは、この地域出身の貧しいインド女性と、ネパールから人身売買で流れ着いてきた女性と、ムンシガンジ等の他の売春地帯が崩壊した後に流れ着いたバングラデシュ出身の女性たちが集まる場所だ。
私は今でもインド売春地帯に沈没していた頃のことを思い出す。彼女たちのことは、『絶対貧困の光景』や『ブラックアジア:インド・バンフラ編』や小説『コルカタ売春地帯』で取り上げた。
ソナガチには金のことしか考えていない強烈なまでの金の亡者もいたが、東南アジアや日本では出会えないような奇妙な個性を持った女性にも会って有頂天になったこともあった。
肥満で身体が崩れたような女たちも多かったが、今までの人生で見たこともないような天使のように美しい女たちもいた。まさにソナガチは天国と地獄で玉石混交の世界だった。
このソナガチの女性たちもまたコロナ禍で危機的状況に落ちているのだが、それでもやっと政府の救済が動き出して、生き残りに一縷の望みが出てきた。