国民の48.2%が絶対貧困。ミャンマーは近いうちに「飢餓国家」になっていく

国民の48.2%が絶対貧困。ミャンマーは近いうちに「飢餓国家」になっていく

ミャンマーは当初から東南アジアで最も貧しい極貧国家だったのだが、事態は良くなるどころか、より悪化した。国民の約半分が一日約120円未満で生活しなければならない「絶対貧困」となる。絶対貧困のミャンマーの子供たちは今、雑草を食べて飢えをしのいでいる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ミャンマーは事実上「経済停止状態」となってしまった

おかしな政権が実権を握ると、一般国民は為す術もなく地獄に堕ちていく。最近ではアフガニスタンのタリバン政権の誕生でそうした光景を私たちはリアルタイムで見ることになったのだが、こうした出来事はアフガニスタンだけで起こるわけではない。

中国でも習近平が神格化に向けて暴走し始めており、今後はどのようなことになるのか分からないし、北朝鮮も相変わらず独裁政権が国民を弾圧し続けている。一国の政権が絶対権力を掌握すると、もはや外部が何を言ってもその国は変えられない。

日本でもいつか売国政権が政治を乗っ取って絶対権力を行使するようになっていくと、日本国民は何もできないまま地獄のどん底にまで堕ちていくことになるだろう。

我が愛する東南アジアでも、現在「危機的状況」に陥っているのがミャンマーである。

ミャンマーは国軍が2021年2月1日に、アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)の指導者を根こそぎ拘束し、軟禁するというクーデターを起こして、以後この国は内乱状態にある。(ブラックアジア:ミャンマー動乱。なぜ誰も支持しないミャンマー国軍が勝つ可能性があるのか?

ミャンマーの国民は国軍と激しく抵抗し、抗議デモを起こすと同時に仕事をボイコットする不服従運動で抵抗したのだが、国軍はまったく妥協せず講義デモを弾圧、そして停止したミャンマー経済をも放置したので、ミャンマーは事実上「経済停止状態」となってしまった。

経済が停止するというのは、行政も停止し、福祉も停止し、銀行も機能しなくなり、ビジネスが回らなくなり、社会のあらゆる活動が滞るということである。

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極貧層は今や絶対貧困の中で「生きるか死ぬか」の状態

通常、このような事態になったら政権は支持を失って吹き飛ぶのが「民主国家」なのだが、ミャンマーのように軍が全権を掌握して国家権力を独裁するようになってしまったら、経済が停止しようが何だろうが権力は揺るがない。

抵抗する国民はことごとく射殺するか投獄して排除し、困窮する国民の面倒は見ないので、むしろ国民は地獄に堕ちれば堕ちるほど抵抗者がいなくなって権力基盤が強化されるという構図もある。

今、まさにミャンマーでそれが起きている。

国軍の国民無視と不服従運動によってミャンマー経済はむちゃくちゃになってしまった。そこにコロナ禍がミャンマーにも吹き荒れることになっていった。コロナが広がるからと言っても、ミャンマーの国民にできることなど何もない。

政府は機能していないし、国民には病院も薬もない。ミャンマーの新型コロナ感染状況は正確な数字が出せない以上、まったく何の意味もない。統計数字は出ているのだが憶測でしかなく、実態は分からないままなのだ。

そもそも、ミャンマー国民はコロナどころではない。社会経済が崩壊しているので稼ぐ手段がなく、食料が圧倒的に不足しているのである。

国連も資金不足と活動制限でうまく機能しておらず、極貧層は今や絶対貧困の中で「生きるか死ぬか」の飢餓に見舞われている。国連はミャンマーの絶対貧困率が今年中に48.2%に達するとの予測を示している。

国民の約半分が一日約120円未満で生活しなければならない「絶対貧困」なのである。ミャンマーは当初から東南アジアで最も貧しい「超極貧国家」だったのだが、事態は良くなるどころか、より悪化した。

絶対貧困のミャンマーの子供たちは今、雑草を食べて飢えをしのいでいる。

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このまま推移したらミャンマーは近いうちに「飢餓国家」に

ミャンマー情勢が良くなる兆しは今のところ、まったくない。しかし、世界はもうミャンマーの存在をすっかり忘れ去ってしまっている。膠着したミャンマー情勢にはニュース性もなくなり、もはや国際ニュースで報道されることもなくなった。

2020年から、世界は自国のコロナ禍でミャンマーどころではない。

2021年にはワクチン接種が進んでコロナ禍も収束すると思われていたが、インドから広がったデルタ株の蔓延によって情勢は一変した。先進国も再びコロナ感染者の爆発的な広がりで収束が遠のいた。

これは世界経済にとっては不吉な兆候である。こうした中で、中国も習近平が自らの神格化のための政治をするように明確な方向転換を始めており、今後の中国経済は成長率も鈍化し、国際的競争力も喪失していくだろう。

アメリカはGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)は好調かもしれないが、他がコロナ禍で停滞するのであれば、最終的には経済の停滞は避けられなくなる時が近いうちに来るはずだ。

折しもアメリカのFRB(連邦準備制度)は金融緩和でばらまいていた資金を絞ろうとしている。この量的緩和の縮小のことを「テーパリング」と呼ぶが、テーパリングが行われたら株式市場に流れ込む資金が先細る。

こうしたことから、今後グローバル経済は大きなリスクに直面する瀬戸際にまで到達しているのだが、世界経済の崩落が来たらもはや全世界が自国を守るために汲々とすることになるので、ミャンマーはますます見殺しになる。

私はミャンマーで国民が痩せ細って飢えて死んだり、人が人を食べるような地獄絵図が発生してもおかしくないのではないかと悲観的に見ている。そこまで至る前に何らかの変化が起きて欲しいと思うのだが、このまま推移したらミャンマーは近いうちに「飢餓国家」と化す。

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外に出ることもできず、内で食うこともできず

タイはミャンマーと広大な国境を接している国なのだが、タイはミャンマーがこのようなことになる以前からずっとミャンマーからの密入国者の問題に苦しめられてきた。

ミャンマーとタイは国境をはさんであまりにも国力が違っており、多くのミャンマー人がタイに密入国して不法就労に入っていく。

タイの歓楽街に沈没している人間なら誰もが知っているように、MP(マッサージパーラー)やゴーゴーバーやオープンバーの多くにミャンマー女性が潜り込んで不法就労していた。

他にもタイの地方に林立している各種の工場で、ミャンマー人が人身売買されて違法就労している実態もある。こうした密入国者が放置されていると正規の労働者が失業や賃金低下のワリを食うことになる。

もっと深刻なのは、こうしたミャンマー人がドラッグ密輸の手先となっていることだ。ミャンマーの少数民族にとっては、以前からドラッグは手軽な現金獲得の物資として大量に製造されている。

ミャンマー人が大量に流れ込むことによって、ドラッグ禍もまた深刻化する。こうしたこともあるので、タイ政府はミャンマー人の流入を警戒してことごとく密入国者を送り返している。

ミャンマー国軍の圧政から逃れた人たちを再び戻すことで、タイ政府は国際社会から批判されて「ミャンマーの難民を受け入れよ」と圧力を加えられているのだが、タイ政府も自国の雇用や安全を守るのに必死だ。

東南アジアも一丸となってミャンマー国民を救済するわけではない。まして、コロナの感染拡大を恐れる中では、どこの国もミャンマー国民をシャットアウトしていくだろう。

ミャンマー国民は外に出ることもできず内で食うこともできず、極度の絶対貧困の中で、座して「飢餓」に向かうしかない状況に陥っていくのだろうか……。あまりにもひどい状況である。

絶対貧困の光景
『絶対貧困の光景 夢見ることを許されない女たち(鈴木 傾城)』

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