人間を痺れさせ、痛みを消し、酔わせ、殺し、陶酔させる「未知の何か」がある

人間を痺れさせ、痛みを消し、酔わせ、殺し、陶酔させる「未知の何か」がある

アヘン、コカイン、ニコチン、そして猛毒物質と言われているトリカブト等は、すべて原料が植物であることを見ても分かるとおり、アルカロイド系だ。神経を痺れさせ、大量に服用すれば死ぬ。ところが、微量であれば薬になる。それも、非常に劇的な作用をすることが多い。アヘンは毒物ではないかと言われるが、そのアヘンでさえ量を間違えずに使うと鎮痛剤になる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

植物は「未知」の何かを秘めている

世界は広い。そしてまだ未知なことはたくさんある。植物は約30万種あるらしいのだが分類の区分けで学者でも幅があり、約250万種だと主張する学者もいる。

そして重要なことなのだが、この時代になっても、すべての植物が知られているわけではない。現在でも新種が次々と発見されている。

ここ10年ほどに限っても約2000種類もの新しい植物が発見されている。

2020年4月、ナミビアで見つかった現地では誰もが知っている低木は、実は新種の「科」であることが判明した。アブラナ目にあるのだが新種の科なので呼び名がなく、便宜上「Tiganophyton」科と呼ぶことにしたという。

日本でも2020年7月に新種が発見されている。この草は、小笠原諸島の聟島(むこじま)列島で発見され「ムコジママンネングサ」と名付けられた。島の断崖絶壁にへばりつくように生えている草だった。

同じ2020年7月。中国でも新種が発見されている。広東省の自然保護区で見つかった新種は「プリムリナ・フアンジニナ」と名付けられる草だった。ランによく似た薄い紫の花を咲かす草だった。

現代文明は植物を駆逐して絶滅させていく文明なので、100年前は恐らくもっと大量の知られていない植物があったはずだ。人知れず咲き、人知れず枯れ、人知れず滅びて消えてしまった植物を想うと何か不思議な気持ちも湧く。

人類が知らないまま絶滅させてしまった植物の中には、強烈な見た目のものも、信じられないほど美しいものも、凄まじく奇妙なものもあったかもしれない。そして、有益な薬効を持った植物も存在していたはずだ。

漢方は様々な植物の薬効を巧みに組み合わせて作られたクスリだ。今ある約30万種から250万種の植物の薬効もすべて知られているわけでもないので、想像を絶する薬効を持った植物がひっそりと自生しているはずなのだ。植物は「未知」の何かを秘めている。

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植物の人間に与える作用は本当に興味深い

「雑草という名の植物はない」と言ったのは、牧野富太郎という日本屈指の植物学者だった。普通の人が「ただの雑草」にしか見えないものでも、実際にはきちんと名前が付いていて独特の生態を持っている。

それ自体が自然界の中で何らかの重要な役割を果たしており、まだ知られていない特性を持っていたりする。しかし、知らない人には単なる「雑然と生えている草」にしかすぎない。

草を見て「あれは雑草だ」という意識しかない人間は、植物に対して無知であることを証明しているようなものだ。私もかなり無知だ。いや、私の植物についての知識は無知どころではない。三歳児並みだ。

詳しい人であれば、山でキノコや山菜を見つけるとそれと採って食べることもできるだろうが、私は何も知らないのでそんなことはできない。植物に対して関心のない私にはすべてが「同じ」に見える。違いがまるっきり分からない。

身体の調子が悪い時にたまに漢方を飲むが、漢方の成分は植物であると知っているものの、名前を見ても植物の形が浮かんでこない。

しかし、植物のそれぞれが何らかの作用を持っていることに対しては非常に強い関心があって、よく漢方で使われている植物の名前だけは注意している。

甘草は鎮咳・去痰に使われるとか、シャクヤクは疼痛、腹痛、神経痛を鎮めるのに使われるとか、地黄は鎮静・解熱に使われるとか、そういうのを読みながら、どういう植物なのかは知らないが、よくぞそのような薬効を見つけたものだと感嘆する。

植物の人間に与える作用は本当に興味深い。

漢方だけではない。阿片も、マリファナも、タバコも、人間の心と身体を痺れさせる成分の多くは、植物から来ている。西洋薬の多くもまた、植物からその薬効を取っている。植物を極めるというのは、人間を知るのと同じくらい面白いことなのかもしれない。

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人間を殺すのも植物、生かすのも植物

ケシから取れる阿片は「アルカロイド系」の薬物だ。アルカロイドというキーワードで見ていくと、コカインもまたアルカロイド系だと言われる。ニコチンもまたアルカロイド系だ。

では、アルカロイド系の薬物とはいったい何者なのだろうか。アルカロイド系とはその名称から推測できるとおり、「アルカリのようなもの」だ。科学的に言えば、「分子の中に窒素を含んでいるアルカリ性の動植物成分を総称するもの」である。

窒素が重要だ。アルカロイド系の薬物がよく作用するのは、人間の身体もまた神経伝達の物質が窒素でできているからだ。

窒素=植物に含まれている物質
窒素=人間の神経伝達の物質

乱暴な言い方をすると、神経を作っているものと同じ物質「窒素」が外部から突如として流れこんで来るから、極端な反応になっていく。

アヘン、コカイン、ニコチン、そして猛毒物質と言われているトリカブト等は、すべて原料が植物であることを見ても分かるとおり、アルカロイド系だ。神経を痺れさせ、大量に服用すれば死ぬ。

ところが、微量であれば薬になる。

それも、非常に劇的な作用をすることが多い。アヘンは毒物ではないかと言われるが、そのアヘンでさえ量を間違えずに使うと鎮痛剤になる。

現在でもよく使われているアスピリン(バファリン)も、セイヨウシロヤナギから抽出された成分が元になっている。アスピリンは頭痛によく効く薬効だが、まさかこれまで植物から抽出された成分を使っているとは知らなかった。

改めて「薬を知るとは植物を知る」というところに行き着く。私たちは植物の作用によって痺れたり、多幸感を得たり、痛みを消したり、酔ったり、毒で死んだりしているのである。

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植物の世界は、まだまだ未知の世界

植物が人間に及ぼす影響は非常に強いのだが、まだまだすべてが知られているわけではない。そのため、今後も驚くべき植物の驚くべき薬効も発見されるのは100%間違いない。

場合によっては、植物の成分ひとつが「文明そのもの」を変化させることすらもあるかもしれない。

不治の病が、まだ発見されていない植物の成分で治るようなこともあるかもしれないし、アンチエイジングもまた未知の植物成分で可能になるかもしれない。癌もエイズも、コロナも、実は何らかの植物で治るかもしれない。

世界最大のジャングルはアマゾンだが、アマゾンでは今でも未知の植物や動物が次々と発見されている。その発見者の少なからずが、製薬会社の研究者である。なぜ製薬会社の研究者がアマゾンにいるのか。

まさに、彼らこそが薬になるかもしれない「未知の植物」や「未知の薬効成分」を探し求めて、アマゾンの植物をしらみつぶしに捜し回っているのである。

新種の植物の発見は、その過程で生まれてきたものであって、新種を見つけるのが目的なのではない。薬効になる植物を見つけるのが目的なのである。

場合によっては、アマゾンのジャングルに生えている誰もよく分からない植物だけでなく、誰もが知っている植物ですらも、実は人類を苦しめている何らかの病気を治す薬効を持っているのかもしれない。

植物に無知すぎるほど無知な私もタンポポくらいは見たら分かるが、そのタンポポにも「解熱、発汗、健胃、利尿、強壮、催乳」という作用があるとは後で調べて知った時は驚いた。

まだ植物の世界は、まだまだ未知の世界である。すべてが明らかにされたわけではない。もしかしたら、明日にもどこかで、人類を劇的に変える不思議な薬効を持つ植物が発見されるかもしれない。

病気を治すだけなく、人類の精神性を変容させてしまう植物が見つかるかもしれない。ケシや、マリファナや、マジックマッシュルーム等とは別の、異様なドラッグ的成分を持った植物も発見されるかもしれない。

脳を異常に覚醒させる植物だとか、運動能力を超能力的に高める植物とか、性的欲求を極限まで高める植物だとか、あり得ないほど精神を変えてしまう植物とか、わけの分からない「何か」が見つかる可能性はゼロではない。

植物の可能性を追求する人がもっと増えてくれればと思う。

『ブラックアジア的小説 売春と愛と疑心暗鬼(鈴木傾城)』。東南アジア最大のジャングル地帯ボルネオ島(カリマンタン島)のアンダーグラウンドの売春と疑心暗鬼の物語。

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