アフガニスタンの女性たちは解放されることはなく、見捨てられて生きていく

アフガニスタンの女性たちは解放されることはなく、見捨てられて生きていく

アメリカは敵国として浮上する中国に対抗する思惑を持ちつつ、2021年9月11日にアフガニスタンから撤退する。ガニ政権は取り残され、恐らく半年から1年で崩壊する可能性も指摘されている。イスラム原理主義集団であるタリバンが再びアフガンに君臨する。女性たちの地獄が始まる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

長く執拗なゲリラ戦を10年、20年単位で戦えるタリバン

アメリカは中国を敵国としてロックオンしたのだが、この動きは前トランプ政権から明確になり、バイデン政権になっても継承されている。今後、米中の新冷戦は「冷戦」のまま終わらない可能性もある。

恐らく米中の代理戦争と言われる物理的な戦争が世界のどこかで勃発してもおかしくない。それは東南アジアかもしれないし、台湾かもしれないし、あるいは南米かもしれないし、アフリカ大陸かもしれない。

アメリカと中国は世界の覇権を巡って争っているわけで、その覇権争いは技術から経済から軍事まですべての分野で行われている。

こうした動きの中で、アメリカのバイデン政権は中国に集中するために、アフガニスタンから急いで兵を引いている。無益なアフガニスタンにいつまでも関わっている余裕はもうアメリカにはない。

これによって何が起こるのか。

恐らく、アメリカの傀儡政権であるガニ政権はタリバンの攻勢によって崩壊してしまうはずだ。そして、最終的にはタリバンがアフガニスタンを取り戻して、この地に拠点を築くというアメリカの作戦は失敗に終わる。

タリバンは最貧国の貧弱な武器しか持たないイスラム原理主義集団なのだが、それでもアメリカは勝てない。タリバンの最強の戦略は「長く執拗なゲリラ戦を10年、20年単位で戦える」というものだからだ。

今回もタリバンの勝利となりそうだ。(ブラックアジア:権力も、知名度も、人脈も、資金もないゲリラの勝ち方とは

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長期戦に引きずり込まれたアメリカは疲れ果てて大義名分も捨てた

超大国は莫大な戦費をかけて最新鋭の武器と兵士をアフガニスタンに送り込むのだが、金がかかっているがゆえに長期戦には弱い。アメリカも、戦争が長引けば長引くほど兵士は疲弊し、戦費の消耗に耐えられなくなる。

アフガニスタンは厳しい地形であり、山岳地帯の固い岩盤によってタリバンは守られている。冬は厳しく重装備のアメリカ軍兵士は身動きできない。そうなれば、戦闘はあきらめて雪が溶ける時期になるまで休戦せざるを得ない。

休戦している間も戦費は果てしなく消耗する。春になったらどこからともなくゲリラ攻撃が仕掛けられる。しかし、ゲリラは正面衝突してこないので、反撃したとしても組織を壊滅させることができない。

そうやって長期戦に引きずり込まれたアメリカは疲れ果て、もう誰もアフガニスタンに期待を持つことがなくなり、この地に拠点を築く意味すらも失った。

2001年に同時多発テロ事件でアフガニスタンに突撃したアメリカは「アフガニスタンを民主化する」という大義名分を持っていた。

アフガニスタンの女性の扱いがいかにひどいかは、鼻を削がれたビビ・アイシャを見ても分かる。(ブラックアジア:アフガンで女性の鼻を削ぎ取る事件とビビ・アイシャのその後

ビビ・アイシャだけではない。アフガニスタンでは、多くの女性がビビ・アイシャと同じような目に遭っている。15歳で無理やり結婚させられ、売春を強要され、拒絶したら壮絶な虐待に遭って死にかけた少女もいた。(ブラックアジア:アフガンの15歳の花嫁。売春を強制されるが拒否して拷問に

絶望し、焼身自殺しようとする女性もいる。(ブラックアジア:アフガニスタンの女性は、なぜ焼身自殺しようと思うのか

インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、『ブラックアジア カンボジア編』はこちらから

再び、アフガニスタンは暗黒の時代になるのだろうか?

アメリカは、「こうした女性たちを解放する」と全世界に宣言してアフガニスタンに侵攻していったのだ。しかし、アメリカはタリバンを殲滅することができずに去っていくことになる。大義名分も捨てた。

完全徹底は同時多発テロ事件が起きた9月11日に設定されている。

2021年6月26日、バイデン大統領はホワイトハウスを訪れたガニ大統領に対して「撤退後も支援を続ける」と述べているのだが、今までと違って支援の範囲は限られている上に、そもそもガニ政権が吹き飛べば支援も何もあったものではない。

アメリカCIAは、「ガニ政権はアメリカの後ろ盾を失ったら半年以内に崩壊するのではないか」という悲観的な予測も立てている。

イスラム原理主義集団であるタリバンがアフガニスタンに君臨すると、再びアフガニスタンの女性はイスラムの圧殺の中で息苦しい生活をすることになっていくのだろう。

しかし、アメリカが去ったのであれば、もう世界は誰もアフガニスタンの女性に関心を持つこともなくなるはずだ。

CNNの報道によると、すでに現時点でアフガニスタンの370郡のうちの50郡がタリバンに占拠されてしまったと報道している。タリバンは今、各都市に大攻勢をかけており、次々と郡を陥落させている。

もともと、アメリカの傀儡であったガニ政権は、首都カブールを死守するだけで精一杯で、アフガニスタンは国家として機能していない。アメリカ軍が消えれば、多くの主要都市がタリバンの占拠地になるばかりか、カブールそのものも奪還されてしまう可能性もある。

再び、アフガニスタンは暗黒の時代になるのだろうか? その可能性は刻々と高まっている。アフガニスタンの女性たちは解放されることはなく、世界に見捨てられ、ブルカの奥に隠れてひっそりと生きていくことになる。

ブラックアジア
『ブラックアジア 売春地帯をさまよい歩いた日々(一覧)』

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