真夜中の貧困地区をさまよい歩く旅人にとって、「現金」しか役に立たないのがインド圏である。
貧困地区に銀行など、存在しない。ATMもない。キャッシュカードやクレジットカードなど使えない。仮にどこかに銀行があったとしても、インドの官僚主義と手際の悪い窓口で、何をするにも一日仕事になる。
ごく普通の観光旅行の旅人であれば、観光地でトラベラーズ・チェックを使うこともできるかもしれない。しかし、インド圏の貧困地区では、そんなものはいっさい役に立たない。
現金しか受け付けないのである。
インド圏の安ホテル、中級ホテルは、部屋の鍵をかけてもかけていないのと同然だ。なぜなら、従業員が勝手に鍵を開けて部屋を物色するからである。
セーフティーボックスというものもない。バッグの奥底に厳重に隠しても、インドの従業員はそれを探し当てて盗んでいくのである。
私はインド圏のホテルは一切信用していない。インド圏では先進国の常識が通用しない場所である。だから、現金を隠すというのは死活問題となる。(信用できない宿に泊まる旅人は、現金をどう隠しているのか?)