フィリピンのドゥテルテ大統領をカネで転がしている「黒幕」は誰なのか?

フィリピンのドゥテルテ大統領をカネで転がしている「黒幕」は誰なのか?

すでに話題にもならなくなっているのだが、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は今も国内の麻薬関連容疑者を片っ端から殺しまくっている。

「人権なんか、忘れろ。人権は気にしない。私は本気だ!」と叫ぶドゥテルテ大統領の暴力肯定が引き起こしている凄惨な遺体の数々は以前にも紹介した。(ブラックアジア:フィリピン麻薬戦争。これが現場の血まみれ殺害光景だ

大統領になってから今まで、その超法規的殺人はまったく止まっていない。フィリピンの警察当局は、合法的手段によって5000人の容疑者を殺害したと発表している。

しかし、貧困層を支援する活動家たちによると、実際には「2万7000人以上が殺害されている」と述べる。警察当局はすでに殺害した現場の報告すら上げなくなっており、不法な殺害が闇から闇へと消されている。

フィリピン人たちはこれに対してドゥテルテ大統領を非難しているのか。逆だ。「麻薬犯罪者が撃ち殺されて治安が良くなるのなら、どんどんやれ」と言っている。そのため、ドゥテルテ大統領の支持率が下がらない。

フィリピンの民間調査会社が行った調査では、フィリピン人の成人の74%がドゥテルテ大統領を支持している。圧倒的な支持率と言っても過言ではない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

マリア・レッサの逮捕

もちろん、ドゥテルテ大統領に対して、その暴力的な解決方法を批判する人々もいる。その急先鋒に立っていたのがニュースサイト『ラップラー』のCEO(最高経営責任者)のマリア・レッサ氏だった。

ニュースサイト『ラップラー』は、ドゥテルテ大統領自身が、「自警団」を黙認して超法規にドラッグ関連の容疑者を殺し回っていることや、ドゥテルテ大統領の問題発言や、ドゥテルテ大統領自身が殺害に手を染めていたことや、ドゥテルテ大統領が過去に使用人の女性をレイプしたことなどを取り上げて来た。

「容疑者の人権を著しく侵害するものであり、容認できるものではない」

それがマリア・レッサの信念だった。彼女はCNNのマニラ支局長を歴任していた報道人生25年のベテラン記者であり、ニュースサイト『ラップラー』の信憑性は非常に高く緻密なものとして定評がある。

しかし、ドゥテルテ大統領はマリア・レッサと彼女が率いる『ラップラー』を「フェイクニュースを垂れ流すクズのメディア」と激しく批判し続けてきた。

「彼女はCIA(米中央情報局)から資金を受け取って政権攻撃をしている」と発言したこともある。

それでもマリア・レッサは折れずにドゥテルテ大統領の批判を続けたのだが、2018年1月には「外資規制に違反した」としてメディアとしての認可を取り消され、さらに2018年11月には脱税で告訴されることになった。

そして、2019年2月13日には「過去の記事が名誉毀損に当たる」としてマリア・レッサ氏は逮捕されたのだった。彼女は保釈金を支払って釈放されたのだが、「我々は脅しには屈しない」と徹底抗戦を宣言したら、翌月3月に再び逮捕されてしまった。

今度は「外国資本を不法に受け入れた」という容疑だった。フィリピン当局は「マリア・レッサの逮捕に政府は無関係だ」と述べている。しかし、誰もドゥテルテ大統領が彼女の逮捕に無関係であるとは思っていない。

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「アイスランドの問題は何だ? 氷だけだ」

メディアとドゥテルテ大統領の非難合戦は延々と続いているのだが、ドゥテルテ大統領は強気一辺倒である。強気なのは国内メディアに対してだけではない。国連に対してもだ。

国連人権理事会では、ドゥテルテ大統領の「麻薬撲滅戦争」で超法規的殺人が蔓延していることを問題視しており、「麻薬取り締まりによる殺害を調査するための決議案」をアイスランドが提出した。

ドゥテルテ大統領は激怒して「国際社会による非難は国家主権の侵害だ」「国連が無礼なクソ野郎なら、我々は去るだけだ」と言っただけでなく、決議案を出したアイスランドをも激しく罵倒して「国交断絶を真剣に検討している」と述べた。

「アイスランドの問題は何だ? 氷だけだ。これが君たちの問題だ。氷があり過ぎる。こうした愚か者たちは、フィリピンの社会、経済、政治問題を理解していない」

こうした中で、ドゥテルテ大統領が押し進める麻薬撲滅戦争で、3歳の幼女が警察に撃ち殺されたこともクローズアップされている。

警察は、この3歳の幼女の父親がドラッグの売買に関係しているとして自宅を急襲したのだが、その時に3歳の幼女が犠牲になってしまった。

警察は「この父親が娘を盾にしたので悲劇が起きた」「巻き添えが出ないように安全を確保することが先決だ。だが言ったように、完璧ということはありえない」「子供を撃ちたいと思う警察官はいない」と述べた。

ところが、現場にいた母親は警察官の説明を真っ向から否定し「家族はみんな寝ていたし、父親も抵抗しなかった。それなのに子供が撃たれた」と述べた。

警察が嘘を言っているのか。母親が嘘を言っているのか。母親が嘘を付かなければならない動機はまったくないが、警察が嘘を付かなければならない動機はある。

警察が嘘を付いているという見方の方が真実に近いように思われるが、この事件は警察発表が行われた後「たまたま起きた不幸な出来事」として消されていった。

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ドゥテルテ大統領を手なづけている黒幕

フィリピンのジャーナリストは、ドゥテルテ大統領が不法に資産を蓄財していることも報じている。一族の口座に総額24億ペソ(約52億円)にのぼる莫大なカネが振り込まれていたのが暴露されている。

さらに、ドゥテルテ大統領の長女や次男にも多額のカネが流れ込んでおり、一族で何らかの利権があることが示唆された。

いったい誰がドゥテルテ大統領に大金を渡しているのか。報道によると「中国人の実業家」である。つまり、中国から莫大な「ワイロ」がドゥテルテ大統領に流れ込んでいたのである。

そしてどうなったのか。ドゥテルテ大統領は習主席主導の新シルクロード経済構想の一帯一路でも覚書に署名し、中国や中国の国家主席である習近平をべた褒めするようになった。

そして、マニラ首都圏のダム建設、インフラ整備、フィリピン国有鉄道再建、湾岸開発等々、29件の経済支援でも合意した。すべて中国に任せるのだ。

フィリピン近海で中国漁船が漁場を荒らすような事件も起きて中国と険悪になることもあるのだが、すぐに和解している。そして、ドゥテルテ大統領は2019年5月31日に東京都で開かれたシンポジウムでこのように発言している。

「私は中国が好きだ」

なぜドゥテルテ大統領は中国がこれほどまで好きなのか。自分の口座に莫大なカネを振り込んでくれる相手を嫌う人間がいったいどこにいるというのか。

ドゥテルテ大統領は清廉潔白でもなければ法令順守の人間でもない。当然のことながらカネが手に入るのであればカネでいくらでも転ぶ。単純にドゥテルテ大統領を「正義の味方」のように思っているのであれば、それは浅はかだ。

中国はワイロで独裁者を手なずけるのが得意な国だ。独裁者は利己主義であり、カネと権力と性欲の塊であるのを知っている。中国にとってドゥテルテ大統領は、典型的な独裁者タイプであり、御しやすい相手だったということだ。

ドゥテルテ大統領は中国に国を売り飛ばすことになるのだろうか。このまま目が覚めなければ、最後にはそのような結末が待ってる。(written by 鈴木傾城)

中国はワイロで独裁者を手なずけるのが得意な国だ。独裁者は利己主義であり、カネと権力と性欲の塊であるのを知っている。中国にとってドゥテルテ大統領は、典型的な独裁者タイプであり、御しやすい相手だったということだ。

ブラックアジア・フィリピン編
『ブラックアジア・フィリピン編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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