アメリカには「ストーヤ」という奇妙な名前を持ったポルノ女優がいる。彼女はアメリカ生まれのアメリカ育ちだが、両親は共に移民出身でセルビア人とプエルトリコ人という珍しい組み合わせだった。
ストーヤという名前は、セルビア系の名前で、彼女の祖母の名前から来ている。そう言えば、彼女のスタイルもまた典型的なアメリカ人というよりも、どこかヨーロッパ系の雰囲気が出ている。
私はフランス文学の異端児であるジョルジュ・バタイユを10代の半ばに知ってから、今も懐かしくこの文学者の『マダム・エドワルダ』や『眼球譚(がんきゅうたん)』を開くこともある。(ブラックアジア:ジョルジュ・バタイユ。誰の心にもある二面性と倒錯の性)
私がアメリカのポルノ女優ストーヤを知ったのは、このジョルジュ・バタイユ経由だった。
どういうことなのかというと、このセルビア人の血を引いたポルノ女優もまたジョルジュ・バタイユを愛しており、その映画化を成し遂げたと知ったからだ。
眼球譚は、道徳破壊の場面のオンパレードで、闘牛士が目を突かれて眼球を垂らして死んでいく中でオーガズムを迎える登場人物の背徳の物語だ。
私は予告編でしか観たことがないのだがポルノ女優らしくポルノシーンは鮮烈に描かれているのだけは分かる。映画の出来は分からないのだが、ポルノ女優ストーヤには「ジョルジュ・バタイユを愛している女優だ」ということだけで私は好きになった。