◆ブルガリア。ヨーロッパでもっとも貧しい国の女性たちの苦境は他人事ではない

2024年3月、イタリアの南部の街「レッチェ」で人身売買をビジネスにしていた犯罪グループが逮捕されているのだが、逮捕された22人のグループはその大半がブルガリア人の男たちで、売春を強要されていた数十人の女性たちもまた大半がブルガリア人女性だった。

彼女たちは、「ウエイトレスの仕事がある」「モデルの仕事がある」などとしてブルガリアから連れ出されてイタリアに集められ、すぐにパスポートを没収されていた。抵抗した女性は野球のバッドで身体中を殴りつけられ、拷問・レイプをされた上で隷従させられた。

この犯罪グループは役割分担が明確にできあがっていて、募集・輸送・管理・利益洗浄をブルガリア国内と連携しておこなっていたのだった。なぜ、イタリア南部なのか。それは東欧の若い女性が売られるルートのひとつがイタリア南部だからだ。

東欧とイタリア南部を結ぶこのルートを「バルカン・トレイユ」と呼ぶ。数十年前から存在しているルートである。ブラックアジアでも以前取り上げた。(ブラックアジア:バルカン・トレイユ。若い女性が売られて通る欧州闇ルート

今もまたバルカン・トレイユは機能していることがこの事件でもわかる。具体的には、ルーマニア・ブルガリア・セルビア・アルバニアの女性たちが、このルートで売春の現場に送り込まれている。

東欧が貧困から抜け出せない限り、このルートは途切れないだろう。

ブルガリアは2007年にEUに加盟した。しかし加盟から18年が経過した今も、この国はヨーロッパでもっとも貧しい国のひとつに位置づけられている。

世界銀行の統計によれば、2024年のブルガリアの一人当たりGDPは約1万3000ドルであり、EU平均の半分以下にとどまっている。物価水準が低いとはいえ、賃金の低さと雇用機会の限界は深刻で、国内では若年層を中心に国外への移住が止まらない。

そういう事情もあって、若い女性たちは人身売買の犠牲になりやすい。

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