多くの国で売春は違法である。「売春禁止法」というれっきとした法律があって、それは明確に禁止されている。だが、興味深いことに、このビジネスを徹底的に取り締まって「売春ゼロ」にしている国はいない。
ほとんどの国は売春を黙認している。いや、黙認という言い方は甘いかもしれない。ほとんどの国は売春を放置している。それくらい、売春は「禁止されているのに一般的」なビジネスである。
どこの国でも売春で生きている女性がいるが、だいたいどこの国でも彼女たちは嫌われている。
売春する女性たちが好きだというのは、彼女たちの世界にどっぷりと浸っている男くらいなもので、表社会の人たちの多くは彼女たちが自分の住む近所にいてほしいとは思わない。
その理由はさまざまだ。彼女たちは、もともと身分が低かったり、無学で粗野だったり、男を騙したり、性病をまき散らしたり、悪い男とかかわっていたり、犯罪者を引き寄せたり、彼女たち自身がドラッグやアルコールに溺れていたり、身体中にタトゥーが入って威圧的だったり、破滅的な言動をしていたりする。
要するに、彼女たちは表社会でやってはいけない社会規律をことごとく破って生きている。彼女たちは社会の底辺という認識がすべての国にあって、その底辺というのはどこの国でもその国の「恥部」として隠されている。
その「恥部」にうごめいているのが彼女たちなわけで、表社会の多くの人たちは「こんな女はひとり残らず捕まえてしまえ」と排斥する。それくらい、売春というビジネスは嫌われているのだ。
だから、多くの国で違法になっているのだが、それでも社会は彼女たちの存在をある程度は黙認する。その根源的な理由を考えたことがあるだろうか? なぜ、売春は「黙認」「放置」されるのか?