ネパールで起こっている暴動は、馬鹿政治家の馬鹿息子の贅沢が可視化された結果

2025年夏、TikTokやRedditなどで政治家の子弟が投稿した写真や動画が拡散し、批判が一気に広がった。高級ブランドのバッグや衣服、数千万ルピー相当の高級車、ヨーロッパやアメリカでの留学生活や豪華な旅行の様子が公開され、多くの若者の目に触れた。ネパールは貧しい国だ。しかし、特権階級は豊かなのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

それは若者世代の深い不信と憤りを象徴

ネパールで2025年9月初旬に発生した抗議運動は、同国の近年で最大規模の暴動となった。直接の引き金となったのは、ネパール政府がFacebook、Instagram、YouTube、WhatsApp、Xなど26種類の主要SNSを停止した決定である。

8月末、政府はこれらのプラットフォームに対し「7日以内に国内に登録をおこなわなければ遮断する」と通告していたが、多くが期限までに対応せず、9月4日に遮断が実施された。

これによって、日常的にSNSを利用していた若者たちは一気に不満を爆発させた。

9月8日、首都カトマンズの国会議事堂周辺に数万人規模の若者が集まり、警察隊と衝突した。催涙ガスや放水車が投入され、デモ隊は石や火炎瓶で応戦した。

国会に突入を試みた一部の参加者が建物の一部に放火し、死者19人、負傷者100人超を出す惨事となった。政府は夜間外出禁止令を発令し、治安部隊に加え軍の投入まで決定した。

翌9日には死者がさらに増加し、最終的に保健省の集計では34人が死亡、1300人以上が負傷した。

政府は混乱を抑えるため、9月9日にSNS遮断措置を撤回した。しかし時すでに遅く、抗議の矛先はオリ首相本人に向かった。長年不人気だった首相は辞任に追い込まれ、国会、首相府、最高裁といった主要統治機関の建物や高級ホテルが次々と襲撃の標的となった。

首都に立ち上る黒煙は、制度に対する若者世代の深い不信と憤りを象徴していた。

今回の抗議で中心となったのは、10代から20代前半の若者である。彼らはSNSを通じて情報を共有し、政府の規制に抗議するだけでなく、長年蓄積してきた不満を一挙に暴力でぶちまけた。

ところで、そもそもネパール政府はなぜSNSを遮断しようとしたのか?

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「努力しても何の意味もない」と思う国

抗議運動の中で特に強調されたのは「ネポ・キッズ」と呼ばれる存在への反発である。ネポ・キッズとは、政治家や官僚、有力者の子供たちを指し、彼らが享受する特権的な生活ぶりを指摘する言葉として定着した。

2025年夏、TikTokやRedditなどで政治家の子弟が投稿した写真や動画が拡散し、批判が一気に広がった。高級ブランドのバッグや衣服、数千万ルピー相当の高級車、ヨーロッパやアメリカでの留学生活や豪華な旅行の様子が公開され、多くの若者の目に触れた。

ネパールは世界銀行の分類で低所得国に属し、1人当たりGDPは1400ドル前後にとどまっている。農村部では停電やインフラ不足、物価高騰に苦しむ家庭が多数存在する。

その一方で、ネポ・キッズが豪華な結婚式や誕生日パーティーをSNSで公開し、贅沢三昧を見せつけていたのだが、それは格差を象徴する光景として受け止められた。

ある投稿では、停電で暗闇の中にいる家庭の若者が「奨学金は却下された」と嘆く一方、政治家の子弟が高級ホテルで開いたパーティーの動画が並び、強烈な対比が生まれていた。

SNS上では「努力しても何の意味もない」「姓がすべてを決めている」といったフレーズが拡散された。かくして、若者たちのあいだに、格差に対するやりきれなさや富裕層に対する怒りが徐々に蓄積されていくようになった。

もともと、見ないようにしていた格差の現実が可視化され、意識されたのだ。政治家の子弟が奨学金や留学枠、官庁のポストを容易に得ている事実が暴かれ、SNSに列挙されて怒りのマグマが充満していった。

そして、とうとう怒りが爆発した。若者たちは「能力を選べ、親族を選ぶな」というスローガンを掲げ、縁故主義に対して激しく声を上げた。それは、単なる羨望や嫉妬ではない。腐敗に対する強烈な批判だったのだ。

驚いた政府は、慌ててSNSを遮断した。だが、それが燃えさかる怒りにガソリンをぶちまけるような結果になっていった。若者たちは「贅沢な暮らしを隠そうとしている」と受け止め、さらに怒りを強めた。

それが、ネパールで起きている今の暴動なのだ。

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主要な政治家は裁かれることもなかった

ネパールの抗議運動は突発的に発生したものではない。それは長年蓄積してきた腐敗と格差への不満が一気に噴き出した結果である。

ネパールも馬鹿な政治家が無能な政治を続け、腐敗と汚職に明け暮れていた国だ。国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表する腐敗認識指数(CPI)でネパールは2024年に34点、180か国中107位にとどまり、改善の兆しが見えなかった。

国家の統治機関に対する信頼が低下し、若者を含む国民のあいだで「制度は腐敗している」という意識が定着していた。

具体的な腐敗事件は枚挙にいとまがない。2023年には「偽ブータン難民詐欺」が発覚し、元閣僚や高官が逮捕・起訴された。数百人が米国への難民渡航を装って金銭を騙し取られた事件であり、国家の信頼を根底から揺るがした。

また、首相公邸周辺の国有地が不透明な手続きで私物化された「ラリタ・ニワス土地不正取引事件」では、官僚や政治家が関与したとされ、2024年には100人以上の官僚が有罪判決を受けた。

ところが、主要な政治家は裁かれることもなかった。

協同組合(コープ)の破綻や不正も国民に直接的な打撃を与えた。地方の人々が積み立てた資金が返還されず、多くの庶民が財産を失った。あとで、その資金は政治家が吸い上げていることが発覚したので、国民は自分たちの汗と労働の成果が権力層に奪われていると強く感じた。

公共調達の場面でも、過大価格での機器購入や縁故業者への随意契約が常態化しており、「正当な競争が存在しない」という感覚が若者に根付いた。

格差の問題も深刻である。2023年の世界銀行の統計によれば、ネパールの1人当たりGDPは約1400ドルにすぎない。その一方で、都市部の富裕層は高級住宅や国際ブランドの店舗を享受し、地方農村の住民は停電や医療不足、教育機会の欠如に直面している。

若者が暴動を起こすのも無理もない。私自身は、もっと早く暴動を起こしても良かったのではないかとも思っている。

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怒りが充満し、閉塞感はいつか爆発する

今回の抗議運動は、政府のSNS遮断という単発の決定に対する反発を超えている。ネパール社会にはびこる政治の腐敗と、無能と、権力者たち子供たちの贅沢三昧に対する怒りと、ネパール社会に対する激しい絶望に対する反発である。

暴動が広がる過程で、議会や最高裁といった統治機関だけでなく、高級ホテルや富裕層の住宅が攻撃対象になったのは偶然ではないのだ。

カトマンズのヒルトンやハイアットは観光産業の象徴であると同時に、国内の経済格差を象徴する存在だった。富の象徴が火に包まれる光景は、単なる治安の崩壊ではなく、若者の怒りが社会構造そのものに向かっていることを明確に示した。

実のところ、抗議に参加した若者の多くは、これまで政治に無関心と見なされてきた層である。10代から20代前半のZ世代は、国民の大部分を占めながらも、政治参加の機会を奪われ続けてきた。

彼らがSNSで怒りを可視化し、それを街頭行動に変換したことは、世代の存在感を示す決定的な瞬間となった。SNS遮断は、その存在感を抑え込もうとした試みであったが、逆に抑圧が可視化され、抗議を燃え上がらせる結果となった。

こういうのを見ていると、日本も世襲の政治家の馬鹿息子や馬鹿娘に対する怒りが向くのも時間の問題のようにも思える。

こいつらは、馬鹿でも何でもコネで有名大学を卒業し、そのあとは親の人脈や資金や支援団体を使って政治に立候補して当選し、するすると重要な役職に就き、国民に隠れて甘い汁を吸って贅沢に暮らしていく。

一方で、日本の若者は奨学金という借金を背負わされ、ブラックな会社でこき使われ、あるいは非正規雇用で使い捨てされ、馬鹿政治家のせいで成長しない国で這いずり回る生活を余儀なくされている。

貧困と格差がさらに広がれば、怒りが充満し、閉塞感はいつか爆発するだろう。

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