バングラデシュ。政治的カツアゲが横行して経済が停滞している新興国の国のひとつ

バングラデシュでは、政治団体や議員が大企業から零細商店、さらには個人にまでショバ代をカツアゲして回っている。表向きは「寄付」「警備」「通行料」などの名目となっている。拒否した場合、営業妨害や物品破壊、虚偽の犯罪告発など、荒っぽいやり方で商売をつぶされることになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

いくらカツアゲされるのか予測不能に

日本はヤクザがショバ代を取っている。バングラデシュでは地元の政治家がショバ代を取る。バングラデシュの政治団体や議員は、ヤクザみたいなものである。これが深刻化してインフレになっているのがバングラデシュで報道されている。

バングラデシュにおける政治的カツアゲは、単なる犯罪行為ではなく、政治勢力が組織的に資金を吸い上げる手段として根付いてきた。ずっと昔からだ。これは、政党やその周辺団体が権力を背景に、企業や個人から金銭を脅し取る構造である。

ただ、以前は与党の「アワミ連盟」の地方組織や青年部、学生部が中心となって形成され、一定の秩序をもっておこなわれていた。事業者は誰に、いつ、どの程度支払えばよいかを把握できた。

ところが、2024年7月の大規模な民衆蜂起と8月5日のシェイク・ハシナ退陣によって、この秩序は崩壊した。

政権の中枢とともに地方組織の統制力も失われ、恐喝の主導権は複数の政治勢力や地域グループへと分散した。従来の「一本化された徴収ルート」がなくなり、各地で異なるグループが独自に資金を要求する事態になった。

これにより、商売人は誰からいくらカツアゲされるのか予測不能になってしまった。

新たに台頭したのは、バングラデシュ民族主義党(BNP)の地方組織や、イスラム系政党ジャマアテ・イスラミの支持者、さらにはハシナ退陣の引き金となった学生運動「Students Against Discrimination」出身の元活動家などである。

さらに、政治的な立場を持たない地元の有力者や元運動家までもが便乗し、恐喝を収益源とするケースが増加した。政治的背景を持たないグループは、従来の政党系組織よりも抑止が効きにくく、より直接的で荒っぽい手法を使う傾向が強い。

恐喝の対象は大企業から零細商店、さらには個人にまで広がっている。大企業は「警備費用」や「市場維持費」の名目で数千万タカ単位を要求され、小規模事業者や個人商店は営業権や出店許可と引き換えに日銭を取られる。

拒否した場合、営業妨害や物品破壊、虚偽の犯罪告発など、荒っぽいやり方で商売をつぶされることになる。ほとんどは、拒絶できない。

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表向きは「寄付」「警備」「通行料」

警察や行政に訴え出ても無駄だ。被害届を出しても捜査が進まず、逆に報復の危険が高まっていく。警察や行政もまたカツアゲ組織と癒着しているからだ。結果として、被害者は「払ったほうが損失が少ない」という判断になる。

この構造が長年固定化され、政権交代後も形を変えて存続していた。

それでも、2025年前半のダッカ首都圏では、警察が把握しただけで月平均70件以上の恐喝事件が報告されている。これは2022年の年間59件、2021年の年間22件と比べて急増している。

報告されない事案を含めれば、実際の件数はこの数倍に達する可能性が高い。政権交代によって恐喝の権力構造は分散化し、政治的空白の中で新たな利権獲得競争が始まったことで、事態はさらに複雑化している。

現在のバングラデシュで横行しているカツアゲは、表向きは「寄付」「警備」「通行料」などの名目となっている。

もっとも多いのは「保護料」型である。これは特定地域で営業する事業者や店舗から、定期的に現金を集める方式だ。徴収する側は「治安維持」や「営業の安全確保」を口実とするが、支払わなければ嫌がらせや破壊行為がおこなわれる。

市場周辺では、朝の開店時に集金役が現れ、商売を続けるための条件としてその日の分を徴収するケースが報告されている。

次に目立つのは「通行料」型である。物流ルート上に設置された非公式の検問や集金所で、運送業者から現金を徴収する手口だ。ダッカやチッタゴンへの主要幹線道路では、1回あたり数百〜数千タカを徴収される例が多く、同じトラックが1日に複数回支払いを強いられることもある。

こうしたコストは最終的に商品の販売価格に上乗せされる。

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「非公式な徴収」が恒常的なコスト増に

結局、こうしたカツアゲの放置でバングラデシュ社会はどうなってしまうのか。カツアゲをされまくると、商売人は当然それを価格に転嫁する。そうすると、それが積もり積もって経済活動全体に深刻な影響を与えていくことになる。

もっとも顕著なのは、サプライチェーンにおけるコストの累積である。農村で生産された農産物や製品は、市場や港へ運ばれる過程で複数回の恐喝に直面する。

たとえば、生産者から集荷業者、そこから都市部の卸市場、小売業者へと至る間に、各段階で「通行料」や「保護料」が徴収される。結果として、農場での出荷価格が市場に到達するまでに2倍から3倍に跳ね上がるという。

この価格差は、多くがカツアゲされた分の上乗せだ。

物価統計にもその影響は現れている。バングラデシュ中央銀行のデータによれば、2025年6月の消費者物価指数は前年同月比8.48%の上昇だった。物価が高止まりしている。これは国際市場における輸入価格変動だけでは説明できない。

生産と消費のあいだに挟まるヤクザ議員や政党の「非公式な徴収」が恒常的なコスト増を生み、価格を押し上げている。

企業活動にも悪影響が広がっている。大企業であっても、継続的な恐喝に対応するために資金繰りが圧迫され、新規投資が停滞する。

中小企業や零細商店にとっては、恐喝の負担が直接的な経営リスクとなり、撤退や廃業の決断を迫られるケースが増えている。これにより市場の競争が低下し、消費者は高価格かつ選択肢の少ない環境に置かれる。

雇用面でも負の影響が明確だ。事業者がカツアゲによるコスト増を吸収できず人員削減を進めれば、失業率は上昇する。そうすると、安定した職を失った若年層が政治的動員に流れ込み、恐喝にかかわる側に回る悪循環も生じている。

当然、これは外資誘致や国際的な信用にも打撃を与える。海外投資家は法的保護が弱く、非公式なコストが恒常的に発生する市場を敬遠する。ワイロを払うために事業するわけではないので、最初からそんな国には進出したくない。

そうすると、バングラデシュのような環境の国には長期的な投資が集まりにくく、経済の成長余力を削ぐことになる。政治的恐喝はこうして、物価、雇用、投資、社会秩序のすべてにマイナスの影響を及ぼし続けている。

 政治的にだめな国は最後は悲惨になる

この状況は改善されていくのだろうか。それとも悪化していくのだろうか。現時点での政治的状況では、カツアゲの横行は収束が見込めない。政治も治安機関の機能不全が続いている。

暫定政府は2024年の政権崩壊以降、主要都市や経済拠点での治安回復を最優先課題として掲げているが、警察力の不足と内部腐敗の根深さが障害となっている。政党間の合意形成も遅れ、次期総選挙の日程すら決まっていない。

政治的安定が見えない中では、カツアゲに依存する勢力が退く理由はなく、むしろ権力の空白を利用する可能性が高い。

各政党は公式には恐喝を否定し、処分例も公表している。BNPは2025年に入ってから4,000人以上の党員を追放したと発表し、他の主要政党も同様の声明を出している。だが、こうした措置は組織のイメージ回復を狙った表面的な対応にとどまっており、裏では公然とやっているのだ。

国際通貨基金(IMF)や世界銀行は、法の支配とガバナンス改善を経済援助の条件としてきたが、現場での恐喝が続く限り、これらの支援は効果を発揮しにくい。

今のバングラデシュは、海外からの直接投資も鈍化しており、複数の製造業プロジェクトが計画段階で停止している。輸出産業に依存するバングラデシュにとって、これは外貨獲得能力の低下につながる。

結局、短期的には恐喝の減少は望めず、むしろ経済停滞や政治的対立が長引けば、状況はもっと悪化するはずだ。統治の空白を埋める政治的合意形成と、治安・司法制度の信頼回復が必要だが、それがままならない。

よく、「アメリカがだめだから新興国に投資だ」という投資家もいるのだが、新興国をうろついて、その新興国のもっとも底辺の部分を見てきた私から見ると、けっこう無謀な判断だと苦笑する。

政治的にだめな国は、外からいくら投資資金が入ってきても最後は悲惨なことになる。バングラデシュはさしずめ、そういう国のひとつであると私は認識している。

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コメント

  1. 闇の投資家 より:

    バングラデシュもひどいがアメリカもシナも日本も
    政府は滅茶苦茶な気がします。
    日本警察はカツアゲはあまりしませんが
    ニセの領収書をしたっぱに作らせ
    裏金作りをしているみたいです。

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