近年、「ゾンビVAPE(ベイプ)」と呼ばれる新型ドラッグが、アジア諸国を中心に急速に広がっている。特にSNSや動画投稿サイトを通じて、その異様な使用風景が若年層の目に触れやすくなり、10代から20代のあいだで模倣的な乱用が加速している。
名称に「ゾンビ」とついている理由は明確で、使用者がふらつき、うつろな目をし、突如として意識を失う姿が、まさにゾンビのようであるためだ。
歩きながら突然倒れ込んだり、意味不明な言動を繰り返したりする様子が記録され、拡散されるたびに社会の不安が高まっている。
この「ゾンビベイプ」は、見た目こそ一般的な電子タバコに似ており、香料入りのリキッドが用いられているため、外見からはドラッグとはわからない。しかし中身には、医療用麻酔薬である「エトミデート(etomidate)」が混入されているケースが確認されている。
エトミデートは本来、手術時に意識を消失させる目的で使用される医薬品であり、日本でも麻酔科など限られた用途で使用されている。依存性が低いとされる一方で、急激に意識を失わせる作用があるため、乱用すれば非常に危険だ。
では、なぜこのような薬物が「VAPE」という形で流通しているのか。
背景には、電子タバコの普及とともに違法なリキッド市場が拡大していることが上げられる。そもそも「VAPE」というデバイス自体が、使用者が何を吸っているのか外部から判別しにくく、検査機器を通さなければ中身の成分を確認できない。
この「VAPE」文化が若者のあいだでカジュアルなファッションとして定着している現実が、危険ドラッグの温床になっているのだ。
加えて、従来の危険ドラッグと異なり、「ゾンビVAPE」は使用直後に顕著な効果が表れることも注目されている。