
2025年3月28日、ミャンマー中部のマンダレー近郊でマグニチュード7.7の地震が発生した。震源の深さは約10キロで、強い揺れが広範囲に及んだ。この地震により、ミャンマー国内では多数の建物が倒壊し、死傷者が多数報告されている。ミャンマー政府は非常事態を宣言し、国際的な支援を要請している。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
2025年3月28日ミャンマー大地震
2025年3月28日、ミャンマー中部マンダレー地域を震源とするマグニチュード7.7の巨大地震が発生している。震源の深さは約10キロと浅く、強い揺れが広範囲に及んでいたのが残された動画でもわかる。
この地震により、ミャンマー国内では多数の建物が倒壊し、人的・物的被害が甚大なものとなっている。ミャンマー国内のみならず、タイ、カンボジア、ベトナム、さらにはバングラデシュの一部地域でも強い揺れが観測された。
マンダレー地域では、歴史的建造物であるマンダレーパレスやシュエサーヤン・パゴダなども深刻な損傷を受けたという報道も入ってきている。
さらに、多くの住宅、学校、病院が倒壊し、多数の市民が瓦礫の下敷きになっている。現地報道によれば、マンダレー市内だけでも1,000棟以上の建物が倒壊し、依然として多くの人々が行方不明となっている。
首都ネピドーでも被害は甚大のようで、主要な医療機関であるネピドー総合病院が損傷を受け、緊急搬送された負傷者の受け入れが困難な状況になっているようだ。ヤンゴンとマンダレーを結ぶ高速道路も崩壊し、交通網が寸断されている。このため、被災地への救援物資の輸送が大幅に遅れている。
被害は都市部だけでなく、地方の村々にも及んでいる。農村地帯では、多くの伝統的な木造家屋が崩壊し、住民が避難所に逃げ込んでいるという。バゴー地域では特に被害が大きく、少なくとも20人が死亡したと地元メディアが報じている。
この地震による死者数については、情報が錯綜しているものの、ミャンマーの影の政府である国民統一政府(NUG)は、少なくとも12人の死亡を確認している。
一方、米国地質調査所(USGS)は、死者数が1,000人から10,000人に達する可能性があると推定しており、今後の捜索・救助活動次第ではさらに増加することが予測されている。
ミャンマー政府はすでに6つの地域で非常事態を宣言した。
国際的な人道支援を要請しているのだが、2021年の軍事クーデター以降、内戦状態が続くミャンマーでは、政府の統制が効かない。そのため、救助活動や支援の提供が大きな困難に直面しそうだ。
特に、軍政下にある地域と、反体制派の支配地域での協力体制が構築されておらず、救助活動が遅れてしまうだろう。
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隣国タイ・バンコクへの影響とインフラの崩壊
今回のミャンマー地震は、隣国タイにも深刻な影響を及ぼしている。
タイの首都バンコクでは、強い揺れが数十秒間続き、多くの住民が建物から避難した。もっとも大きな被害は、建設中の33階建ての政府関連施設のビル倒壊であり、この事故により少なくとも3人が死亡、数十人が瓦礫の下敷きとなっていると報告されている。救助活動は現在も続けられている。
バンコク市内の高層ビルでは耐震基準を満たしていない建物も多く、今回の地震で構造的な損傷が多数報告されている。
特に、古い建築物が集中するヤオワラート地区では、複数のビルで亀裂が確認されているようで、住民は一時的に避難を余儀なくされた。バンコクの防災当局は、さらなる余震の危険性を考慮し、住民に警戒を呼びかけている。
たしかにこの地区では古い建物が多かったのだが、あそこらへんのビルは今にも崩れそうで崩れないというのが逆にすごいという感想もある……。
ミャンマーとタイを結ぶティラワ港の一部施設も損傷を受けたようで、物流の停滞が発生している。ティラワ港はミャンマーの主要貿易拠点であり、同国の経済活動にとって不可欠なインフラである。この港の損傷により、物資の供給が大幅に遅れることが懸念されている。
交通インフラにも深刻な被害が出ている。ヤンゴンとマンダレーを結ぶ高速道路は複数個所で崩壊し、鉄道網も被害を受けた。これにより、被災地への物資供給や医療支援が遅れ、多くの被災者が孤立状態に置かれている可能性がある。
以前から言われていることだが、ミャンマーやタイにおける耐震基準は脆弱だ。ミャンマーでは、過去に大規模な地震が発生しているにもかかわらず、耐震基準の見直しや建物の補強が十分におこなわれてこなかった。
今回の地震ではおそらく私たちが想像している以上の被害だと思う。復旧するにしても、ミャンマーは経済制裁や政治的不安定の影響で、物資や建設資材の供給不足が続いているわけで一筋縄ではいかないだろう。
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ミャンマーの被害状況







ミャンマー、タイで被災された方々が早く元通りの日常に戻れることを切に願います。