性行為は繁殖のためだけにあるわけではない。しかし、繁殖のためには性行為が必須だ。そういう意味で、性行為が減少した民族は「繁殖力が弱体化した民族」であると言い切ってもいいかもしれない。
今の日本はどうなのか? 「第9回青少年の性行動全国調査」の結果を見ると、高校生のキス経験率は男子で22.8%、女子で27.5%と、前回調査からそれぞれ11.1ポイント、13.6ポイントも低下したという。
性交経験率に至っては、18年前と比べてほぼ半減している。対照的に、自慰行為の頻度は過去最高に達した。自慰行為と性行為はまったく違う性質のものだ。自慰行為ができても性行為ができなければ「繁殖力」は弱体化していると言える。
今の日本の状況は、若者が異性との関係を通じて繁殖に結びつく行動を避けている現実をはっきり示している。つまり、繁殖力の弱体化が進行しているのだ。
もともと、十数年前から日本では男性の草食化が進んでいると言われていたが、それがここにきて加速していた大きな原因は、パンデミックにある。現在の高校生は、2020年からのパンデミック時に中学時代を過ごした世代であった。パンデミックは人の接触を減らし、男女の接触をも減らした。
社会全体の価値観も変化した。今の中高生にとって、「恋愛力が高い=優れている」という認識はない。「恋愛は面倒」「恋愛に夢中な人はダサい」と断言する若者もいる。娯楽も多様化して、スマホ、ゲーム、SNSといった手軽で安全な楽しみがあふれ、異性との関係構築は不要に感じられる。
男子の中には、「恋愛はリスクが大きい」と考える者も多い。不同意性交やハラスメントの加害者になる危険性が強調される時代となり、下手に女性とかかわったら訴えられる可能性すらもある。
こんな面倒なら、たしかに恋愛なんかしたくないという気持ちになるのもわからないでもない。日本社会はわざと「繁殖力が弱体化した民族」を作り出して民族的自滅でもしたがっているかのようにも見える。それくらい奇妙な状況だ。