高齢出産が増えていく社会。女性が高齢出産よりもリスクを感じやすい状況とは?

高齢出産が増えていく社会。女性が高齢出産よりもリスクを感じやすい状況とは?

医学的にいえば、高齢出産は「35歳以上」と定義されている。この年齢を超えると妊娠や出産に伴うリスクが増大するとされている。だが、大都市圏では女性の社会進出と共にキャリア形成を重視する傾向が強く、結果として出産のタイミングが遅れることが多い。高齢出産は今後も増え続けるだろう。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

体外受精で生まれた子供の数は約6万人

医学が進歩している。そして、世界中で高齢出産の増加が顕著になっている。日本でもそうだ。2022年のデータによれば、初産婦の平均年齢は30.9歳に達しており、35歳以上の出産が全体の約30%を占める状況となっている。

晩婚化や女性の社会進出、キャリア形成の優先が普通になっているので、今後もその傾向は高まるだろう。よく知られていることだが、特に高学歴の女性ほど出産時期が遅くなる傾向がある。

アメリカやヨーロッパ諸国でも同様の傾向が見られ、35歳以上の出産は珍しいことではなくなっている。社会的な価値観の変化により、結婚や出産のタイミングは個人のライフスタイルに応じて柔軟に選ばれるようになっているのだ。

医学的にいえば、高齢出産は「35歳以上」と定義されている。この年齢を超えると妊娠や出産に伴うリスクが増大するとされている。だが、大都市圏では女性の社会進出と共にキャリア形成を重視する傾向が強く、結果として出産のタイミングが遅れることが多い。

年齢がいくと妊娠しにくい身体になる。しかし、不妊治療の選択肢が増えたことで、年齢を重ねた女性でも妊娠の可能性が広がっている。日本産科婦人科学会が公表したデータによると、2019年に体外受精で生まれた子供の数は約6万人となっている。

思ったよりも、多い数字である。

高齢出産については、出生率の低下が続く日本では「35歳以上の出産が増えることで、人口減少に一定の歯止めがかかるので良いことだ」という政治的な意見もある。しかし、高齢出産は流産や早産、胎児の染色体異常のリスクが増す。そのため、35歳以上の出産を無防備に勧めるのは問題があると指摘する医師も多い。

ただ、社会的には35歳以上の高齢出産は増え続けて一般化していくのだろう。

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年齢がいけば、さまざまな問題が出てくる

高齢出産にはさまざまなリスクが伴う。35歳を超えると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の発症リスクが著しく増加するようだ。

妊娠高血圧症候群は、血圧の上昇と臓器障害を伴う病態で、胎児の発育不全や早産の原因となる。厚生労働省の調査によれば、35歳以上の妊婦で、妊娠高血圧症候群を発症することは珍しくないという。

女性たちが危惧しているのが、赤ん坊の染色体異常のリスクが高齢になるほど増大することだ。

代表的な例としてダウン症候群が挙げられる。25歳の妊婦がダウン症児を出産する確率は約0.1%であるのに対し、35歳では0.3%、40歳では約1%、45歳では約3%以上にまで上昇する。

それだけでなく、流産率も年齢と共に上昇する。

20代の流産率は約10%だが、35歳では20%、40歳では40%に達するというデータがある。加齢による卵子の質の低下が主な原因である。また、高齢出産では早産のリスクも高くなっていく。

やはり、年齢がいけばさまざまな問題が出てくるということである。医学的にはかなり慎重な検査と、生活が必要になる。

問題は、出産以前に、妊娠もしにくい身体になっていることもある。そのために不妊治療がおこなわれるのだが、この不妊治療も妊娠・出産を決意したのであれば、早ければ早いほどいい。時間との戦いになるからだ。

40歳を超えると妊娠成功率は急激に低下し、体外受精の成功率も20代の女性と比べて大幅に減少する。

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高齢出産よりもリスクを感じやすい状況とは?

高齢出産にはリスクが多いが、それでも多くの女性がそれを選ぶのは、もちろんメリットもあるからだ。

真っ先に挙げられるメリットは、やはり経済的な安定だろう。35歳以上で出産する女性は、キャリアを確立したあとで子育てに取り組むことが多いため、経済的に余裕があるケースが多い。

これにより、教育費や医療費などの負担を軽減できるだけでなく、子供に質の高い教育環境を提供することが可能となる。

それに、人生経験を積んだ女性は、子育てにおいても落ち着いた判断を下しやすい。感情のコントロールや対人関係のスキルが成熟していることは、子供の健全な成長にも良い影響を与える。

一般的な傾向として、高齢出産の場合、望んで授かった子供に対して親の愛情や関心がより深い傾向にある。

社会的には、おおむね高齢出産に対しては好意的ではないだろうか。先進国はほとんどが人口減少に見舞われているので、高齢出産の増加は一定の出生率維持に貢献する側面もある。少なくとも、先進国の政府は高齢出産を後押しするケースが多い。

特に都市部では、キャリアを積んだあとに子供を持つ選択をする女性が多いのだ。しっかりと経済的基盤ができてから子供を迎えたいというのは、普通の女性なら誰でも考えることだ。

この「結婚や出産のタイミングを自分で選ぶ」ことを否定してしまえば、先進国の女性は子供よりも仕事を選び、誰も子供を産まなくなってしまうだろう。

若いうちに子供ができると母子ともども経済的に破綻するかもしれない。若い結婚は離婚しやすい。つまり、シングルマザーになりやすい。シングルマザーの半数以上は育児にワンオペを強いられてフルタイムで働くことができず、極貧化してしまう。

女性にとっては、そちらのほうが高齢出産よりもリスクを感じやすい。

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 人口維持に必要な出生率2.07が遠のいていく

高齢出産が当たり前になりつつある現代社会では、その変化がさまざまな影響をもたらしているように思う。

以前は35歳以上での出産は「リスクが高い」と捉えられ、敬遠される傾向があった。だが、医療技術の進歩や社会的な価値観の変化により、今では高齢出産は特別なものではなくなっている。

ただ、政府が高齢出産を促進しても少子化は改善しないという意見もある。

晩婚化と高齢出産の増加により、女性が出産するタイミングが遅れることで、結果的に出産回数が減少する傾向があるからだ。高齢出産の場合、第二子、第三子を持つことが難しくなるため、人口維持に必要な出生率2.07には届かない。

つまり、社会が高度化し、女性の生き方が多様化し、高齢出産が当たり前になればなるほど人口維持に必要な出生率2.07が遠のいていき、人口は減り続けることになる。

言うまでもないが、人口減少は社会全体に深刻な悪影響を及ぼす。

労働人口の減少により、経済成長は鈍化する。生産年齢人口が減ることで、税収が減少し、社会保障制度の維持が困難になる。特に年金や医療保険の負担は現役世代に重くのしかかり、財政圧迫が深刻化する。

人口減少により地方の過疎化が進み、地域社会の維持も困難になる。学校や病院の閉鎖、公共サービスが縮小する。こうした生活環境の悪化が避けられない。

高齢出産は今後も増えるのだが、そうなればなるほど人口減少を加速させ、その影響が社会全体の活力低下や経済停滞、地域社会の衰退を引き起こすことも事実だ。今、ほとんどの先進国はその現象に見舞われている。

それぞれの国が、それぞれの解決を模索している。ある国では出産を促進するために税の優遇や生活支援を充実し、ある国では育児休暇制度の拡充し、ある国では移民で人口を埋め合わせ、ある国では「子供を持つことが重要」という宗教的価値観で出生率維持している。

どれが正しいのかは、いずれ歴史が証明する。高齢出産がもたらす社会的な変化は、無視すべきではない。

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