タイ政府は2022年にマリファナを解禁した。それからというもの、錯乱した外国人の飛び降り、交通事故、未成年の吸飲と、問題が噴出して「タイ政府はなにをやっているのだ」と良識ある国民からも周辺国からも責められている。
しかし、いったん開いたパンドラの箱は、そう簡単に閉められない。マリファナの栽培でビジネスをすることを覚えたタイ人と、なにがなんでもマリファナを吸いたい外国人が、そう簡単に法令遵守するとは思えない。
最近、タイで奇妙な事件があった。
ある夜、ひとりの母親が娘からの電話を取った。娘は「ボーイフレンドの男に毒を盛られたような気がする」と話し、それから連絡が途絶えた。
早朝、パニックに陥った母親が、南パタヤのソイ・ワット・ブーン・カンジャナラムにあるマンションで娘が薬物を飲まされ意識不明で横たわっているのではないかと心配し、救助センターに電話をかけた。
警察と救助隊が現場に急行すると、そこにはボーイフレンドと娘が別々の場所で意識不明となって倒れていたのだった。救助隊員らはすぐに応急処置を施し、ふたりを近くの病院に搬送して緊急治療を受けさせた。
このふたりの倒れていた部屋のテーブルには、奇妙なものが置かれてあった。宇宙飛行士の形をしていて「浮遊体験ができる」と謳っているマリファナ入りクッキーの箱である。名前は「スペースクッキー」と書かれてあった。
じつは、このスペースクッキーこそがふたりを意識不明の状態にさせた原因だった。クッキーの中に強烈なマリファナが「これでもか」と混ぜられており、たった一枚食べるだけで意識が飛ぶものだったのだ。
浮遊体験は嘘ではなかったらしい。パタヤでは、こうした強烈な作用のマリファナがどこにでも売られていて、吸うだけではなくて食べ物にも飲み物にも混じられて売っていたりする。