アメリカの大統領選の幕が切って落とされた。バイデン大統領は再選できるのか?

アメリカの大統領選の幕が切って落とされた。バイデン大統領は再選できるのか?

リベラル派の民主党員たちはバイデン大統領を支持するのだろうが、問題はバイデン大統領自身が想定以上に不人気で現職なのに負ける可能性もあることだ。バイデン大統領の不人気な理由は1つ2つではない。大統領選挙の結果次第で世界は転換するし、驚くべきことにもなり得る。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

バイデン大統領は想定以上に不人気だった

今年はアメリカの大統領選挙の年であり、再びジョー・バイデン大統領と、ドナルド・トランプ前大統領の戦いになる可能性も指摘されている。

共和党でトランプ前大統領に対抗できる候補者は、ロン・デサンティスとニッキー・ヘイリーなのだが、アイオワ州の党員集会ではトランプが圧勝している。ロン・デサンティスとニッキー・ヘイリーも追い上げているのだが、まだトランプに肩を並べるほどにはなっていない。

ジョー・バイデン大統領は、対抗馬としてトランプが登場することに危機感を抱いていて、集会では「トランプは最悪の大統領だった」「トランプは民主主義を破壊する」「トランプとMAGA共和党員は歴史を盗もうとしている」と激しく批判している。

MAGA共和党員というのは、トランプ前大統領のスローガンである「Make America Great Again」の頭文字を取ったもので、熱烈なトランプ支持者のことを言う。

彼らは2021年1月に「バイデンは票を盗んだ」として議会を襲撃したことで多くの逮捕者を出しているのだが、今でも彼らの支持と活動能力は衰えていない。今回のアイオワ州でトランプを勝利に導いたのも、MAGA共和党員たちである。

彼らが今でもトランプ前大統領に対して強烈な支持を維持しているのは、保守派を目の敵にするマスコミやリベラル支持者たちに対する激しい敵愾心を持っていることも大きな要因としてある。彼らは叩かれれば叩かれるほど結束する。今後も、明確に「アメリカ第一主義」を貫くトランプへの支持は揺らがないだろう。

では、MAGA共和党員ではない一般のアメリカ人はどうなのか。リベラル派の民主党員たちはバイデン大統領を支持するのだろうが、問題はバイデン大統領自身が想定以上に不人気で現職なのに負ける可能性もあることだ。

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バイデン大統領の不人気な理由とは?

バイデン大統領の不人気な理由は1つ2つではない。もっとも懸念されているのはバイデン大統領の年齢である。バイデン大統領は81歳であり、歴代大統領の中で最も高齢である。

高齢ゆえの衰えが懸念されており、リーダーとしての能力に疑問を呈する声もある。認知症の疑いもあるし、不可解な言い間違えも多い。スピーチにも力がない。さらに、よく転ぶ。本人は若さを演出しているのだが、動きはぎこちなくてまるでロボットのように見えることもある。

今でもこのような状況なのに、再選して今後の4年間は大丈夫なのか、という心配はアメリカ人ではなくてもある。アメリカは世界最大の「大国」である。大国の指導者が認知症では目も当てられない。

ただ、高齢であっても抜群の実績があるのであれば誰も文句は言わない。たとえば、ウォーレン・バフェットは90代だが、それでもバークシャー・ハサウェイを成長させて莫大な富を創出している。文句のない実績と実力があれば年齢によるハンディは跳ね返すことができる。

しかし、ジョー・バイデンは経済の分野に関しても心もとない。2022年はアメリカでも激しいインフレが引き起こされて、2022年6月のインフレ率は9.1%に到達してしまったのだが、バイデン大統領のインフレ対策は後手後手に回って貧困層をより貧困に突き落としてしまった。

こうした貧困層もバイデン大統領に対する不満は非常に強く、彼らも今回はトランプ支持に回る可能性が高い。黒人層はリベラル支持者が多く、2020年は彼らがバイデン支持に回ったのだが、今回はバイデンに見切りをつけても不思議ではない。

いくら理想高いことを言っても、経済環境を悪化させる大統領は支持されない。

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こうなったのはバイデン大統領のせい

アメリカのヒスパニック系の移民たちはどうなのかというと、これまたバイデン大統領には冷めた目で見ている。

トランプ前大統領は不法移民に厳しく、アメリカとメキシコの国境に壁を作って不法移民を阻止すると宣言して、大統領になったら有言実行でそれを行った。しかし、バイデン大統領はこれを「差別的だ」「非人道的だ」と言って、壁建設を中止した。

これによって「バイデン大統領は不法移民にも寛大だ」というメッセージが中南米で広がって、数百万人もの不法移民がアメリカを目指す展開となったのだった。

莫大に不法移民が入り込んでくるメキシコ州の知事はバイデン大統領を激しく批判し、不法移民をリベラルな州であるニューヨークやシカゴやロサンゼルスなどにバスで運ぶという手段に出た。

不法移民の強制出国や起訴に協力しない都市であるニューヨークやシカゴやロサンゼルスなどはアメリカでは聖域都市(サンクチュアリーシティー)と呼ばれているのだが、メキシコ州の知事であるグレッグ・アボット氏は「そんなに不法移民に寛大なら、いくらでも送りつける」と、どんどん不法移民をサンクチュアリーシティーに送り込んでいる。

グレッグ・アボット知事は非常に過激で、カマラ・ハリス副大統領が「我が国の国境はしっかり管理されています」と発言したのを聞いて激怒し、「それならお前の公邸前に移民を送り込むから面倒みろ」と本当にベネズエラからの移民をカマラ・ハリス公邸前に送り届けるようなこともしている。

数十万規模で不法移民の面倒を見ないといけなくなったニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルスでは行政の財政が一気にパンク状態となってニューヨーク市長のエリック・アダムス氏は「こうなったのはバイデン大統領のせいだから、政府が金を出せ」と言い出す事態になっている。

こういう状況で治安も悪化し、正規のヒスパニック系移民は「バイデンがこの状況を放置しているので移民に対する風当たりが非常に強くなった。不法移民は厳しく取り締まるべき」と考えるようになっている。彼らも今回は不法移民に甘すぎたバイデン大統領を支持しないだろう。

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いろいろ変化が起こりやすい年であると言える

大統領選挙は想定外のどんでん返しが起こりやすい。2009年は本当はヒラリー・クリントン候補が勝つと思われていたが、蓋を開けてみたら新星のバラック・オバマが大統領に選ばれた。

2017年は「今度こそヒラリー・クリントンが大統領になる」と確信されていたが、土壇場のところでドナルド・トランプが大統領に選ばれて大きな番狂わせが起きた。そして2020年もドナルド・トランプが再選すると思われていたが、ジョー・バイデンが大統領に選ばれるという想定外なことになった。

そう考えると、今回の大統領選の行方もまだまだ結論は見えない。バイデン大統領が再選するかもしれないし、トランプが返り咲くかもしれないし、私たちが想定しているのとはまったく違う「誰か」が当選しているかもしれない。

アメリカは「誰が大統領になっても同じ」ではない。大統領が変わると、政権のスタッフもほぼ全員が変わり、政策がガラリと変わる。それこそ180度方針が転換することもある。

オバマ政権時代は中国に融和的だったのに、トランプ政権になってからいきなり中国が敵国扱いになったり、トランプ政権時代には移民に厳しかったのに、バイデン政権になってからいきなり不法移民さえ容認されることになったりする。

そういう意味で、2024年の大統領選のゆくえ次第では、アメリカは再び「違った方針」を打ち出すことになるかもしれない。場合によってはロシアに融和的になったり、ウクライナを見捨てたりするような驚きの展開もあってもおかしくない。

大統領選挙の結果次第で世界は転換するし、驚くべきことにもなり得る。

私自身はアメリカ人ではないので選挙に対して意見は持たないが、今回の大統領選のゆくえには注意を払っている。今年は日本も首相が替わっているかもしれないし、いろいろ変化が起こりやすい年であると言える。

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