インドネシア編
インドネシア領バタム島ナゴヤの真夜中の向こう側、妖しく灯(とも)るダークサイドをくぐり、退廃の世界に入る。入り口に立つインドネシアの男たちの鋭い目は闇の中では肉食動物のようだ。
そこはインドネシア全土から集められた若い女性たちの「肉体市場」、男たちの天国、女たちの地獄と言われている場所だ。暗闇の中で行われているインドネシアの現実がここにあった。
執拗で粘っこい男たちの視線に追われながらゲートをくぐると、肉体市場の奥には雛壇があり、ガラスの向こうには10人ほどの女性が座って男たちを待っている。ティアスもそんな娘のひとりだった。
彼女は足を組み、物憂げに煙草を吸いながらゆっくりと煙を吐き出していた。まだ若い娘だというのに成熟した女性としての「貫禄」のようなものがあった。