貧しい国、悲惨な境遇、追い詰められた女、絶望……。そう並べると、女性たちは誰もが意気消沈して暗い目をしているという光景が目に浮かぶと思う。それは正しくもあり、間違ってもいる。女性たちの態度は、ひとりとして同じではない。
確かに押しつぶされている女性も圧倒的に多い。ところが、中には信じられないほどの傍若無人の態度と、度胸と、果てしない強情な性格を持った女性もいる。
一瞬も気を緩めることができそうにない、根っからの悪女である。セクシーだけれども、狡猾で、傲慢で、協調性のかけらもない女。
Foxy Lady(悪賢く、セクシーな女)だ。
「夜の街には、悪い女が多いから気をつけなさい」と、堅気の女性がウブな男を諭すときに言う「悪い女」というのは、実はどこの国にもいる。もちろん、インドネシアにもいた。
バタム島でも、強烈で、手に負えない悪女に出会ったことがある。絵に描いたような、容赦のないフォクシー・レディーだった。その店は、圧倒的な女性が雛壇(フィッシュタンク)の中にいるので有名な店だった。
雛壇の規模は、他の店に比べてもやや大きいかと思う程度なのだが、鳥小屋のとまり木を思わせる横一列のイスが細長い部屋のずっと奥まで並べられて、女性たちがびっしりと並べられていた。
店の教育もあるのだろうか。すべての女性が一言も話したり目を反らしたりすることなく、まっすぐ男を見つめていた。
透明のガラス一枚を隔てて50人以上はいると思われる女性の目を一心に受ける。自分が見ているというよりも、「見られている」という感が強い。
雛壇の奥の女性がすべて男の一挙一動を固唾を飲んで見守っており、まるで自分が品定めされているかのようだ。慣れていないと……
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色々なお話の中で、この話が一番好きです。
ウェンディの逞しさに惹かれているのかも知れません。