日本は今、賃金が上がらないのに物価が上昇するという局面に入っていて、いよいよ「スタグフレーション(不景気の中の物価上昇)」が起こっているという分析も出てくるようになってきている。
この2年以上におよぶコロナ禍で、非正規雇用者は景気の調整弁として切り捨てられてホームレスになる寸前にまで追い込まれて何とか踏みとどまっている人たちにとっては身を切るような状況になっているのである。
非正規雇用者と言えば、女性は54.4%は非正規雇用であり、この物価高でも凄まじいダメージを受けているのが「女性」なのである。その女性の中で最も生活に苦しんでいるのが、他でもない「シングルマザー」である。
シングル−マザーの半数は「貧困」なのだ。
かつてシングルマザーというのは、籍を入れずに子供を産んで、男と別れてひとりで子供を育てる母親のことを指していた。しかし、今は離婚して子供を引き取って育てている母親が圧倒的に多くなったので、彼女たちをシングルマザーと言うようになっている。
日本では結婚そのものが減っているが、結婚しても三組に一組が離婚に追いやられているわけで、シングルマザーが増える傾向にある。
離婚の原因はしばしば男にあるが、養育費をもらうはずになっているのに、養育費を払わない男は多い。連絡しても払わない。ひどいケースになると、携帯電話の番号も住所も変えて行方不明になってしまう。
庇護がないのであれば、シングルマザーは子供の面倒を見ながらも、何とか仕事をしなければならない。しかし、ここで問題に直面する。シングルマザーを正社員で雇う企業は極端に少ないという現実だ。
正社員で雇っても、シングルマザーは子供の都合で早退や欠席せざるを得ない状況にしばしば追い込まれる。企業はそれを憂慮してシングルマザーを雇いたがらない。最近は核家族なので両親や親族に子供を見てもらうという関係もなくなった。地方から都会に出てきているシングルマザーはなおさらだ。
そういうわけで、スタグフレーションになりつつある今、シングルマザーがどんどん追い込まれている現状がある。