普通の家庭で育ち、普通の教育を受け、だけれども運が悪くて非正規雇用の仕事しか見つからなかったので、少ない給料でささやかに慎ましく暮らしている20代半ばの女性がいたとする。
彼女は一生懸命に働いているけれども、ある時、会社の業績が立ちゆかなくなって自分は悪くないのにリストラされる目に遭ってしまう。貯金は数十万円くらいはあるが、それに頼っているとすぐにゼロになって家賃も払えなくなってしまう。
次の仕事を必死で探すのだが、ちょうど社会全体が不景気に突入していて、なかなか仕事が見つからない。経済的な心配と不安と恐怖で、彼女は夜も寝付けなくなってしまい、体調もどんどん悪くなっていく。
こうした運命に落とされた女性はたくさんいるはずだ。
ここで考えて欲しい。彼女は何か悪いことをしただろうか。いや、彼女はまったく悪くないことに気づくはずだ。
非正規雇用の仕事しか就けない女性は大勢いる。正社員の職を望んでも、それが手に入らない人は多い。しかし、ありついた職の中で一生懸命に働いているのだから、彼女は何も悪くない。
会社が業績を悪化させて彼女をリストラしたとしても、それは彼女のせいではない。会社のせいだ。社会が不景気だと次の職がなかなか見つからないが、それもまた彼女のせいではない。
仕事が見つからなくて、彼女が精神的に追い詰められて体調が悪くなっても、彼女が悪いわけではない。誰でも金銭的に苦しいことになったら体調が悪化する。これで彼女を責める人はいないだろう。
では、彼女が悪くないのであれば、何が悪かったのか?