事情があって風俗は辞めてしまったが、それまではフェチ系の風俗やデリヘルの人妻店を転々として生きていたという女性に会った。
「ゴジラビル」と言われている新宿東宝ビル付近で会って、アメリカブランドのドーナツ店のカフェに入ろうとしたのだが、彼女は「太りたくないので甘いものは控えている」というので、普通の喫茶店に入ることにした。
東宝ビルの裏手には私の馴染みの喫茶店がある。この喫茶店は歌舞伎町のど真ん中にあって24時間営業しているというだけが取り柄で、おしゃれな女性には入りにくいと思われる薄汚い雑居ビルにある喫茶店である。
こんな薄汚い喫茶店には初めて会った女性を連れて行くことはできないと思っていたら、驚いたことに彼女が「あの喫茶店がいい」と指さした。
「レトロなところだけれど、本当にそこでいいの?」
「いいです」
彼女は席に座るなりニヤリとして「この喫茶店よく来てた。すっごい懐かしい」と私に言った。「じゃ、もしかしたらこの店ですれ違っていたかもしれないね」と言うと、彼女は「だったら面白いね」と笑った。
しばらく雑談していると、「ここで女性と会ったりしてるんですか?」と尋ねるので、「いや、電車の始発が出るまでひとりでここで時間を潰したりしてるんですよ」と言うと、「あっ、そうなの」と彼女はうなずいた。
そして、身を乗り出して私に言う。
「この喫茶店って、風俗の面接とか、息抜きとかで使われること多いんですよ。風俗関係の人が多いの、知ってました?」