もう十字架にはうんざりだと堕落の地アンヘレスに逃げた日

もう十字架にはうんざりだと堕落の地アンヘレスに逃げた日

寝不足のままマニラ・バクララン地区の夥《おびただ》しい人の群れの中をさまよい歩いていた。

陽気な屋台の男に手招きで呼ばれたので、そこで軽い食事を取り、人々の喧噪《けんそう》を見つめていたが、何となく心は晴れなかった。

ちらちらとキリスト教のシンボルや十字架が目に入るが、努力して見ないように、そして考えないようにする。予定もなく、特別行きたいところもなかったので、再びアンヘレスに行くことに決めた。

パサイやエドサは、どうも洗練されすぎていて食指が動かない。どちらかと言えばアンヘレスの場末の雰囲気しか居場所がなかった。それよりも、どうもマニラでは「十字架」が多すぎると思ったので、さっさとマニラから離れたかった。

冷静になってよくよく考えると、マニラもわざわざ捜さなければ十字架だらけというわけでもない。恐らく過敏になりすぎているだけなのだ。

しかし、追い詰められると、「十字架だらけだ」という気になってしまう。

すぐにホテルに戻ってチェックアウトして、その足で乗り合いのバスに飛び乗ってアンヘレスに向かった。アンヘレスはマニラから数時間で着いてしまう歓楽街で、売春地帯以外に何もないところが気に入っていた。

いや、そのアンヘレスにも教会があることを思い出したが、今回は絶対にそちらには足を向けないようにしようと決心した。

絶対に売春地帯から出ないようにすればいい。フィールズ通り界隈だけをうろうろしていればいい。そうすれば、十字架などはない。堕落ばかりがそこにある。

それがアンヘレスの素晴らしいところだ。

キリスト教が「退廃だ、堕落だ、地獄だ」と罵る売春地帯こそが、私の人生であり……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア フィリピン編』にて、全文をお読み下さい)

『ブラックアジア・フィリピン編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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