「徹底的な現実主義を貫いて生きる」「徹底的にしたたかに生きる」という姿勢が、清々しいほど明快に述べられている。もともと現実主義で生きている私が、これほどリアルな現実主義を説く本を気に入らないわけがない。この現実主義の視点は、年齢性別を超えて「すべての人」に役に立つ。この視点を磨きたければ、まずはこの本を読むことをオススメする。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
結論から言う。非常に勉強になった
『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んで下さい。(KKベストセラーズ)』という実に長い印象的な題名の本がある。
著者の藤森かよこ氏が、拙著『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底』をリツイートしてくれた際に、このやたらと目立つ書籍の題名に気づいた。
「読んでみます」と言ったら、「いえいえ、お読みになる必要はありません。貧乏なくせに夢みがちな女性向けですから」と言われたのだが、すでに電子書籍の方を買ってしまったので読んでみた。
確かに私みたいな「売春地帯をうろうろして生きていた男」をターゲットにした本ではない。だから、「貧乏なくせに夢みがちな女性」の本を読んで勉強になるのかどうか分からない。最初はそう思って読んいたのだが、とんでもない。
結論から言う。非常に勉強になった。ためになった。参考になった。
この本は「すべての女性」にオススメできる上に、女性のことをリアルに知りたい男も読むべき本であると思う。
なぜか。この本は、本当の意味でごく普通で平凡な女性が直面する数々の冷たい現実に対してどう生きるのかを「誰でも」分かりやすく書いており、しかもそれは非常に普遍的で納得できるものであるからだ。
さらに、人生の捉え方がきちんと現実を見据えているので、実のところ、何も考えないで惰性で生きている「男」ですらも決定的に役に立つ。
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実際は、性別問わず読むべき本
この本は題名からして、かなりターゲットを絞っているように見える。しかし、実際のところ、性別問わず多くの人に大きな気付きや指針が得られる本だ。そう思ったので、ここで紹介している。
決して「特定の人のみが共鳴する内容」ではない。早い話、この本が最もターゲットとして考えていないはずの私のような男ですらも、電子書籍のマーカー機能を使って線を引きながら読んでしまうような、そんな本なのだ。
たとえば、低スペックな人間は誰からも相手にされないし、今までさんざん他人に傷つけられてきたので孤独になりがちだが、どうしたらいいのか。「孤独に慣れよ」と著者は説く。それが現実的な答えだからだ。
世の中は「心が美しい」とか言っても誰も気づいてくれないし、結局のところ「容貌は女の人生を決める」という現実は変わらないのだが、どうしたらいいのか。本格的ブスは美容整形手術を受けよ」と述べている。
したくないか、できない場合は「見にくくない自分を作ろう」と言っている。美しくなるのではなく、他人に「見にくい」と思われないように気をつけて、外装(パッケージ)に気を配ろうと説く。それが現実的な答えだからだ。
仕事についても、高望みしたところで低スペックなのだから、はっきり言って何も実現できないし、厳しいし、ベーシックインカムなんか期待してもそんなものが実現する可能性も低い。どうしたらいいのか。
自己実現がどうたら、とか社会への貢献が何たらとか御託を並べないで、「食っていける仕事を探せ」と説く。
『ちゃんと食えるだけの賃金が発生し、かろうじてできる仕事で、しかもさほど苦にならないのならば、それがあなたの天職だ』と述べている。それが現実的な答えだからだ。
そうなのだ。「徹底的な現実主義を貫いて生きる」「徹底的にしたたかに生きる」という姿勢が、清々しいほど明快に述べられている。
もともと現実主義で生きている私が、これほどリアルな現実主義を説く本を気に入らないわけがない。
この現実主義の視点は、年齢性別を超えて「すべての人」に役に立つ。この視点を磨きたければ、まずはこの本を読むことをオススメする。
1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから
低スペックな女性と割れ窓理論
性的な視点を見る部分は、長らく多くの女性を見つめてきた私にも気づかされる描写がいくつもある。若く美しい女性は強姦されやすいが、低スペックな女性もまた強姦されやすい。なぜか。
『男が与(くみ)しやすいと思うからだ。手軽だと思うからだ。男が緊張しなくてもすむからだ。窓ガラスが割れているビルは、もっと窓ガラスを割られる。汚れたトイレは、もっと汚される。掃除されていない部屋は、もっと散らかされる。それと同じことだ』
『割れ窓理論』については、以前にブラックアジアでも紹介したことがある。ハーバード大学研究員のジョージ・ケリングが発表した理論だ。(ブラックアジア:「割れ窓理論」は、様々なところで応用される重要な経験則)
私は今まで低スペックな女性と割れ窓理論を結びつけたことがなかったのだが、なるほどそういうこともあるのかと改めて「ひとつ深い現実の醜悪さ」にも気づいた。強姦されたときのための対処も書かれている。とても生々しい章だ。
強姦されて妊娠して人工中絶をする場合も、「吸引法」と「掻爬(そうは)法」があって、どちらを選ぶべきなのかも書かれている。(気になる人は、理由も含めて本に詳しく書かれているので読んで欲しい)
日本の教育は森鴎外の『舞姫』みたいなくだらない恋愛小説を読ませるくせに、こうしたリアルな性教育をしないことに著者は憤りを感じている。
著者が言うところの「馬鹿でブスで貧乏な女性」、すなわち低スペックな女性になればなるほど、『汚れたトイレは、もっと汚される』のごとく、ひどい目に遭って、こうした知識が必要になってくるというのは、男たちには気づかない視点だ。
もっとも、セックスに関しては「するな」と言っているわけではなく、むしろ「青春期でなければ体験できそうにもないことは、ちゃんと青春期に体験しておこう」と述べている。その通りだと思う。このあたりもまた現実をきちんと見据えた上での、とても納得できる指針であると思う。
インドの貧困層の女性たちを扱った『絶対貧困の光景 夢見ることを許されない女たち』の復刻版はこちらから
「とんでもない」部分に私は共鳴できた
結婚するならどんな男を選ぶべきか。家庭内暴力男になる可能性が非常に低い男とはどういう男なのか。
つまるところ、男はどのように選ぶべきなのかも、この本にはきちんと答えが示されている。それは、私が読んでも十分に納得できるものであり、正しいと確信を持って言える。
面白いと思ったのは、「女性には3人の男性が必要」という項目の部分だ。きっと、この部分はすべての男にとって衝撃的な部分になるだろう。この部分を読むだけでも、この本は価値があると思うくらい面白い部分だった。
著者は「私は、これから、とんでもないことを書く」と前置きして、本当に常識的に見ると「とんでもない」と言える衝撃的なことを書く。
ここで書いてしまうと迷惑になるので書かないが、これは恐らく読んでいる女性読者にとっても、かなり大きな衝撃になるはずだ。
しかし、それは考えてみれば「実に現実的な提案」でもある。賛否両論はある上で著者はこの部分を書いているので、だから「とんでもないことを書く」と言っているのだが、私はその「とんでもないこと」にとても共感ができた。
この部分を読んで、私はこの本をブラックアジアで紹介しようと思った。
高齢になったときの現実と対処方法も実に役に立つ。そして、身につまされながらも希望も持てる。
読後感はとても良い。すべての女性、いろいろな生き方を模索している人、そして知的で深い知識で裏打ちされた読みやすい本を求めている人は、オススメだ。特に生き方に悩んでいる女性には是非、オススメしたい。
ただ、困ったことがある。
目の前の悩んでいる女性に「この本を読んで欲しい」と渡したら、『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んで下さい。』という題名なので殴られるかもしれない。困った。
*
ところで最後に。
藤森かよこ氏は冒頭で、自分自身も「ブスで馬鹿で貧乏で悪戦苦闘しながら生きてきた」とあるのだが、もちろんただ者ではない。元祖リバータリアンにして思索家であるアイン・ランドを研究して翻訳書を出すくらい超優秀な人である。
題名も、藤森かよこ氏も「能ある鷹は爪を隠す」である。
Kindleストアで購入して読了しました。最近集中力が続かない傾向でしたが引き込まれて一気に読めました。とても面白かったです。
「見にくくない」レベルまでにはルックスを整えること、職業への向き合い方、などに深く共感しました。
とりわけ、パートナーの選択、それに関連する「とんでもないこと」(私には至極真っ当な考えに見えましたが)に感銘を受けました。
性や身分の違いにかかわらず、人間が平穏な心で安定した社会を営んでいくには、こういった考え方が有効なのではないかと思いました。
よい本を紹介いただきありがとうございました。ブラックアジアの読者の方々にも是非お勧めします。
この本の男性読者は、私とoyrさんだけかもしれないですね。
(普通の男はこういう本を読まないです)
書籍のターゲットそのままの人間なので早速買いました!(ポイント使って!貧乏人ですから無料や割引適用の時だけ衝動に走ります)
今から読みます。怖いけど楽しみです…!
貧乏な中年女でも悪くない男と深い仲になれる考え方や方策のヒントがあればいいなと欲深く夢見がちな期待がどうピシャリとされるか楽しみです。
「悪くない男と深い仲になれる考え方や方策のヒント」、あります、あります。
オススメします。
やった!ありがとうございます。
今途中ですがそのくだり、楽しみに探します!手帳につけるぞ~!
大台間近でもう子供望めないな~と思ってるので、機会がまだ少しでもあるうちに若い頃苦労続きで無縁だった男の人と楽しく過ごす野望をかなえたい!
(世の中には私より年取ってからお子さん産む方は沢山いますし、その方達を否定は全くしません、単に貧乏人なのでもう子育てという全力投資を夢見るのをやめたのです)
ぱらぱらと読んでいます。緊張してるのでなるべく傷つかないよう自分にとって有用そうな部分からつまみ食いして最終的に全部読もうかな、と。
力付けられる部分、自分の習慣で良い部分から心に留めてますが、本を読もう!というのには嬉しくなりました。
読書習慣は(図書館、サブスクリプション、古本等方法さえ選べば)お金をそこまでかけずに作れるので良かったな~と。
お金と男の部分をしっかり読んで生き延びる役に立てるぞ~!と自分を励まします(笑)
書いてある内容も力強いですが文章が明るいのが読みやすいですね。
傾城さん、本の紹介ありがとうございます。
貧乏人だけど生き延びたい!
私なら
【悩めるあなたに愛をこめて書いたので読んでください!】
という題名にします。
特にこれからの日本では誰もがある程度頑張ればそこそこの生活ができるというのは
幻想だったと皆が気付き出すことでしょう。
いくら労働したくても意欲満々でも企業は専門能力がなければ雇用しません。
特に上の連中から言われたことしかしてこなかった
45歳以上の労働者階級は悲惨なことになるでしょう。
我々ブラックアジアの読者は彼らのような醜態をさらさないように自分には何ができ、
どうやって利益をあげ生きていくかを模索する必要があります。
馬鹿ではないがブスで貧乏なので読んでみます。
タイトルがショッキングでしたが、示唆に富む内容でしたね。
ただ、就職氷河期世代の私としては、馬鹿と貧乏は時代のせいでもあると思うので
あっけらかんと読者を馬鹿、貧乏と呼ぶのはどうかなと思いました。
馬鹿と貧乏の背景が気にならない人なら楽しめるのではないでしょうか。
そして、著者は「馬鹿でも貧乏でもないブス」タイプですね。
女性としては一番生きづらいタイプだと思います。
自虐に逃げずにその辺りの苦悩も書いていただけたらと思いました。
(今後このタイプは増えるように思います。)
性的なサジェスチョンをしつつもソイトワイライトの存在は書かないとか、
著者は本当にその存在を知らないのか、あえて書かないのか?謎ですね。
あっけらかんと読者を馬鹿、貧乏と呼ぶのは、愛の裏返しなのだと私は判断しました。
この部分については、あえて批判があるのを理解して著書も書いているのでしょう。
ここを議論すること自体が、すでに著書の仕掛けた知的なワナに私たちは落ちているのだと思います。
とても良い本を紹介してくださりどうもありがとうございます!
最近iPadを手に入れたので、kindleのアプリを入れて初めて電子書籍を購入しました。傾城さんがマーカー機能を使うと書かれていたので、Kindle初心者ながら早速私もマーカーを使っています。
じっくり読んでいるのでまだ読み途中ですが、これは私の仕事にとても参考になる本です。人々が元気で働くことをサポートする仕事で心が病んでいる人に多く出会いますが、この本には人の凝り固まった考えや行動を変えるきっかけとなる強いメッセージがたくさんあります。人によって引用する部分を選ぶと思いますが、私の話す言葉、引用する事例のバリエーションが大いに増えることになりそうです。この本を直接勧めると誤解を招く恐れがあるので難しいのですが、私の仕事仲間には勧めてみようと思います。
初めて電子書籍を購入されたのですね。
これから電子書籍の時代ですし、良い転機だと思います。
慣れると、もう紙の本を買おうと思わなくなるはずです。
私は紙の本ですらも、PDF化して電子書籍で読みます。
そういう時代になりましたね。
買いました買いました、キャー楽しみ!(笑)
今夜じっくり読んで感想コメントしますね!
私は男性ですが、読みました。
面白い本の紹介をありがとうございました。
「あなたは馬鹿なので」とか何度も何度も何度も言われると
潜在意識に刷り込まれてしまって良くないのではないかと思いました。
この点、あまりいい気分ではなかったですが面白かったです。
昨日届いて読みました~♪ おもしろかったです
女性には3人の男性が必要には、もう、なんというかビックリして言葉がなかったです
しかし、現実的な提案ですね~、私が女性なら納得する部分がたくさんある、おもしろい本でした
著者の女性の外観に関する考えもおもしろかったです
学者で教授というのも立派ですね、近所の桃山学院大学で教鞭をとっていたというのも驚きでした(笑)