タイでは、いつでもどこでも上半身裸になった男の身体にどこか幾何学的な美しい模様のタトゥーが入っているのを見る。
それは、サクヤン(Sak Yant)と呼ばれるものである。背中にびっしりと入れている男もいれば、ワンポイントで入れている男もいる。
いや、男だけではない。時々、売春女性の背中にもこのサクヤンが入っているのを見る。私がパタヤで知り合った女性は、背中一面にサクヤンの模様が彫られていて、その精巧さにしばし息を飲んだものだった。
文字も入っているが、その文字はタイ語ではなく、「パーリ語」が変形したものであると言われている。パーリ語の原産はインドであるので、仏教と共に入ってきた言語である。
サクヤンは魔除けや厄除けの意味もあって、僧侶もこれを入れている。日本の和彫りと同じく、このサクヤンはタイの伝統の刺青なのである。