
トランプ大統領の恫喝関税外交は敵を作りまくっている。今回のトランプ大統領による「50%関税」発言は、インド国内で即座に強い反発を呼び起こしている。インド側から見れば、これは主権にかかわる問題であり、外国からの介入や命令として受け止められた。大規模な反米感情に火がつくかもしれない。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
トランプ大統領の恫喝関税外交の行く末
トランプ大統領は就任以来、「アメリカ第一主義」を旗印に、貿易赤字の縮小と製造業の国内回帰を最優先課題として掲げてきた。
その手法の中心にあったのが、高関税をちらつかせることで相手国に譲歩を迫る「恫喝関税外交」である。これは単なる経済政策というよりも、交渉戦術としての性格が強く、関税発動の可能性を利用して二国間交渉で優位を確保しようとするものだ。
今回のインドへの50%関税発言も、その延長線上にある。
米国とインドは近年、ITサービスや農産物、工業製品など多岐にわたる分野で取引を拡大してきたが、米国側から見ればインドとの貿易収支は赤字傾向が続いている。
2024年時点で米国の対インド貿易赤字は約400億ドル規模に達し、特に医薬品や繊維製品、宝飾品などが輸入の大きな割合を占めている。トランプ大統領はこれを「不公平な取引」と位置づけ、国内向けの強硬姿勢を示す材料として利用した。
トランプ大統領がインドに対し強硬姿勢を強めた背景には、エネルギー地政学的要因がある。インドは国際的制裁下にあるロシアから原油を大量に輸入し、国内精製や再輸出を継続していた。
トランプ政権はロシアへの経済的圧力を強化する一環として、同盟国・友好国を含む各国に対しロシア産石油の取引停止を要求したが、インドは自国のエネルギー安全保障と価格優位性を理由に輸入を継続した。
トランプ大統領はそれに激怒している。それが今回の「50%関税」発言となった。
トランプ大統領は中国に対しては大規模な関税を発動し、その後の部分合意で一部譲歩を引き出した前例があるため、トランプ政権はこの手法に自信を深めている。しかし、インドは中国とは異なり、国内市場規模が急速に拡大し、消費者ナショナリズムが強い国である。
この強硬発言は、インド国内では即座に政治的・感情的な反発を呼び起こした。
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インド国内で即座に強い反発を呼び起こした
トランプ大統領による「50%関税」発言は、インド国内で即座に強い反発を呼び起こしている。インド側から見れば、これは主権にかかわる問題であり、外国からの介入や命令として受け止められた。
SNS上では発言直後から「#BoycottAmerica」「#NoUSProducts」といったハッシュタグが急速に拡散していった。
コカコーラ、ペプシコ、マクドナルド、スターバックス、さらにはアップルやナイキといった象徴的米国ブランドが次々とボイコット対象として名指しされた。これらの企業はインド市場で長年にわたり拡大を続けてきたが、都市部の若年層を中心に不買運動が広がる兆しが見え始めている。
この動きは一部の政治家や著名人によっても後押しされている。
食品・美容ブランド「Wow Skin Science」の共同創業者 マニッシュ・チャウダリー は、「我々は何千マイルも離れたブランドを選んでいるが、国産の製造者が注目されるときがきている」と発信し、インド発製品の支持を呼びかけている。
同様に、配車サービス「DriveU」のCEO、ラーム・シャストリーは、中国のように自国版SNSや検索サービスなど独立したデジタル・エコシステムの構築を訴えている。与党系のスワデーシ・ジャグラン・マンチは WhatsAppなどでインド製代替品のリストを積極的に拡散し、草の根からのボイコット運動を喚起している。
ナレンドラ・モディ首相自身も「今こそ自立を重視すべき時である」と強調し、ナショナル・サプライチェーンの強化を後押しした。
与野党を問わず、米国の高圧的な通商姿勢を批判する声が議会で相次ぎ、地域政党の中には米国製品の排除を公約に掲げる動きも出てきた。
このボイコット運動は単なる消費行動の選択を超え、インドの国民的自尊心を表現する象徴的行為となりつつある。政治的メッセージを帯びた消費者行動は、一度火がつけば鎮静化が難しい。

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「拡散型ナショナリズム」となるかもしれない
インドで始まりつつある米国製品ボイコット運動のような動きは、かならずしもインドだけに限られる現象ではない。近年、国際政治や経済摩擦が原因で、消費者が特定国の製品を排斥する動きは世界各地で繰り返されてきた。
たとえば2012年以降、中国と日本の尖閣諸島問題では、中国国内で日本車や日本製家電が襲撃される事件が発生した。2019年には日韓関係の悪化を受け、韓国で日本製ビールや衣料品の不買運動が拡大したのは日本人には記憶に新しい。
2022年には、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、多くの欧米諸国でロシア産製品の全面的な排除が進められた。
これらの事例に共通するのは、政治的対立が国境を越えた経済活動や消費行動に直結する点である。現代はSNSと電子商取引の発達により、ボイコット情報が瞬時に拡散し、国民感情が一気に沸騰する環境が整っている。
かつては一部の活動家や団体が主導していた運動も、今では一般消費者が自発的に参加し、ハッシュタグを通じて世界規模に波及する素地がある。インドでの反米消費運動も、「拡散型ナショナリズム」となるかもしれない。
何しろ、トランプ大統領の恫喝関税外交は敵を作りまくっている。
特に、アジア、中東、アフリカなど米国の通商・外交政策に不満を抱く国や地域では、いずれは同じような運動が起こる可能性がある。米国が制裁や高関税を繰り返せば、それはグローバル規模の反米経済ナショナリズムを誘発し、サプライチェーンやブランド価値に長期的なダメージを与えるだろう。
米国製品は、世界の消費生活に深く浸透している。
アップルやコカコーラ、マクドナルドといったブランドは単なる商品ではなく、ライフスタイルや文化の象徴となっている。このため、反米感情がこれらブランドに向けられた場合、影響は単に売上減少にとどまらず、米国の「ソフトパワー」そのものを損なう危険性をはらんでいる。
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恫喝関税外交は将来的に大きな禍根を残す
トランプ大統領の関税外交は、短期的には交渉カードとして一定の効果を発揮するかもしれない。だが、この手法は相手国の政治的自尊心を傷つけやすく、長期的には信頼関係の崩壊を招く危険性が高い。
今回のインドの事例はその典型であり、経済圧力が単なる貿易摩擦を超えて、文化的・心理的な対立へと拡大しつつある兆しが見える。こうした対立は一度深まると、政策転換後も容易には修復されない。
国際政治においては、同盟国や友好国との関係維持が安全保障や経済秩序の安定に不可欠だが、関税という懲罰的手段を乱用すれば、米国は自らの影響圏を狭める結果となる。
特に、多極化が進む現代では、中国やロシア、あるいはEUや新興国が米国に代わる経済パートナーとして台頭しており、米国から距離を置く選択肢は以前より現実的になっている。
さらに、経済ナショナリズムは感情的要素が強く、一度高まった反米感情は貿易合意や関税撤廃といった経済的譲歩では容易に消えない。ブランド不買や文化的距離感は数年単位で続き、米国製品や米国企業の市場シェアをじわじわと侵食していく。
これは単なる経済的損失にとどまらず、米国の文化的影響力や国際的リーダーシップの低下という、より深刻な副作用をもたらす。
インド発のボイコット運動が世界的なうねりに転じれば、それは米国の通商戦略にとって構造的な脅威となる。
関税外交は、短期的な国内政治アピールのための戦術としては有効であっても、長期的には米国を国際的孤立へと導きかねない。そのリスクは、今回のインドとの摩擦によって鮮明になったと言える。
私はトランプ大統領のやっている恫喝関税外交は将来的に大きな禍根を残し、米国を傷つける元凶になると思っている。果たして、どのような展開になっていくのだろうか。今、国際的な動きを注意深く見ている。




コメント
インド出身の人と話をしていると、インドという国やインド人達は、心の奥底に「我々は四大文明の一角を担ってきたのだ」「特に、我々の数学の知識が無ければ、今の世界の現代文明は成り立たなかった筈だ」という、強烈なまでのプライドを秘めているように感じます。
実際、Goo○leやMicro○oftの現在のCEOは、インド生まれのインド人ですし。
ところで。
現在のアメリカ合衆国は、長年、貿易赤字の状態にあります。
言い換えれば、「アメリカ合衆国は、国内で製造する物品・サービスを外国へ輸出して、カネを儲けている。しかし、それよりも大きな金額の代金を支払うことで、アメリカ合衆国は外国から物品・サービスを輸入している」ということです。つまりは、「アメリカ合衆国にとっては、赤字になってでも、外国や外国の会社から購入したい物品やサービスが存在する(そうせざるを得ない理由がある)」ということです。
こういう状況ですので、今後はこういうふうに考える人達や会社や国が出てくるのではないでしょうか?
「あのトラ○プのクソ○郎が輸入関税(率)を上げたせいで、俺達の儲けが減っちまったじゃねえか!!」
「ったくよぉ〜、最近のアメリカってのは、ホント、気に入らねえんだよなぁ。。」
「こうなったら、他の国の同業他社の連中と組んで、アメリカ合衆国向けに輸出する物品・サービスの価格を一斉に同率・同額で値上げしてやろうかなぁ??」
「どうせアメリカ合衆国は、たとえ赤字になったって、俺達から物品・サービスを買わなくちゃならない理由があるんだからなぁ」
「だいたい、ここ最近の200年程度の歴史しか持たないポッと出の新興国を相手に、四大文明の一角を担ってきた俺達が、何故、頭を下げなくちゃならねえんだよ!!」
遅かれ早かれ、巻き返しが起こるのでは、と考えています。
ホントこんなクソ大統領さっさと死なねえかなと思います。
米国民もまたこんなゴミクズを選んで何考えているんだろう?
1次政権の時にスタッフを入れ替えまくりで安定せず、まるで弱いサッカーチームの監督を代えるように次から次へと交代させまくる。無能の証明ですよね。
このままじゃ米国の没落が早まりそうで心配です。