「給料全滅!」テレビ局幹部が陥った自滅的生活からギャンブル依存を垣間見る

44歳のフジテレビ制作部企画部長がオンラインカジノ利用て逮捕された事件は大きな話題となった。警視庁は接続履歴や送金記録をもとに捜査を進め、彼が5年間に渡って違法ギャンブルにかかわり続けてきた事実を突き止めた。逮捕されたとき、すでに1億円もカジノで蕩尽して生活は破綻していた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

「給料全滅」という手書きの文字を投稿

フジテレビの番組『ぽかぽか』などを担当していた44歳の制作部企画部長の常習賭博の疑いで警視庁に逮捕された事件は、個人の事件というよりも、フジのスキャンダルとして捉えられて大騒ぎとなったのは記憶に新しい。

逮捕の理由は、日本国内から違法な海外のオンラインカジノ『エルドアカジノ』にアクセスし、バカラ賭博などを繰り返していたというものだった。彼がオンラインカジノにのめり込んでいた期間は5年に及び、総額で1億円以上を賭けていたとされる。

1億円もカジノで蕩尽するのだからすさまじい。週刊紙で取り上げられて話題になったのが、本人によるSNSの「裏アカ」だ。そこには、ギャンブルで敗北した直後の生々しい言葉が並んでいた。

「3時間でマイナス18000ドル。この一週間では……言えない。打つと涙出てくる。吐き気も」

このような投稿を繰り返しながらも、彼はギャンブルをやめることができなかった。さらに、給料日になると「給料全滅」という手書きの文字を投稿し、全額をギャンブルにつぎ込んだことを自ら明かしていた。

問題はオンラインカジノだけではなかった。競艇、スロット、パチンコといった国内のギャンブルにも手を出していた。

SNSには舟券の購入履歴やスロットの結果を写したスクリーンショットとともに、「借りた 負けた」「まじオワター」などの文言が添えられていた。どう見ても、100%完全にギャンブル依存者だ。

あとでわかったことだが、借金は消費者金融、友人、親戚など複数の経路から膨らみ、最終的には1000万円を超えたとされる。

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自制心や生活の見通しすらも機能しなくなる

一発逆転を狙って、給料日にすべてを賭ける。外れれば即座に生活困窮状態へと陥る。このような危機的なサイクルを繰り返すうちに、この男の金銭的な余力は完全に消失していった。

ある投稿では、「一ヶ月これですごさないと、死ぬ、というかもう死んでる」という文字とともに、わずか835円の現金を写した画像が添えられていた。500円玉1枚、100円玉と50円玉が2枚ずつ、10円玉が3枚、そして5円玉が1枚。

40代半ばの大手テレビ局幹部の財布の中身がこれであった。職業的な地位や過去の実績とは無関係に、ギャンブル依存は破壊的な力で人間の生活をむしばんでいたのがわかる。

この事件が特異なのは、一般の生活者ではなく、一定の社会的地位と収入を持つ人物が、そのすべてを失う過程が表面化した点である。

テレビ番組のディレクターや演出家として数々の人気番組を担当し、社内でも「港派」として評価されていた鈴木容疑者でさえ、ギャンブルによって自己制御を完全に失い、破滅へと向かった。

表面的には仕事をこなし、社内でも評価されていた人物が、裏では「オンカジ依存者」として日々の生活すらままならない状況にあった。この二重生活の実態こそが、ギャンブル依存の深刻さを象徴しているようにも見える。

SNSの裏アカウントという匿名性を利用して、破滅的な現実を投稿し続ける姿には、冷静な判断を失った依存症の症状が露骨に表れていた。

ギャンブルにのめり込み、負け続け、借金を重ねても、それでもやめられない。そこには金銭感覚の喪失だけではなく、自制心や生活の見通しすらも機能しなくなった状態が存在していた。

彼の投稿内容は、自嘲や絶望に満ちていたが、それが単なる「ネタ」ではなく、日々の厳しすぎる現実であったことは間違いない。

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冗談では済まされない深刻さが滲み出ていた

大手テレビ局の幹部といえば、世間的にはエリートの部類に入る。しかし、この男のギャンブル依存は、表向きの華やかな職業とは裏腹に、生活の根底をじわじわと侵食していた。

この裏アカウントでは、競艇やスロット、オンラインカジノでの勝敗を記録し続けていたのだが、とくに負けたときの投稿が多かった。

たとえば「これと、オンカジで14万負けー はいオワター まじオワター」と書かれた画像がある。その日は7万円分の舟券を購入し、9000円の払戻に終わったという内容だった。

たびたび登場する「借りた」「負けた」といった単語は、もはや日常の一部となっていた。ギャンブルの収支を「ネタ」として消費するアカウント運用であったが、投稿内容からは冗談では済まされない深刻さが滲み出ていた。

2019年の段階で、すでに鈴木容疑者の借金は700万円に達していた。複数の消費者金融からの借り入れをおこない、増額審査にも立て続けに落ちるようになった。

日々の生活費も足りず、職場で支給される弁当やスープを食事の中心とし、外食を控えるという極端な節約を強いられていた。これだけでも異常な状況であるが、それでもギャンブルへの投資は止まらなかったようだ。

生活苦はついに副業へと彼を駆り立てた。本業であるテレビ制作の仕事の合間に、果物を箱詰めする肉体労働のアルバイトや、家庭教師のような知識労働のバイトにも手を出すようになった。

関係者の証言によれば、深夜に副業をこなし、翌朝にはフジテレビに出社するという生活を続けていたという。勤務形態から考えれば到底持続可能ではないが、それほどまでに金銭的に追い詰められていたということになる。

敗北に敗北を重ね、借金だけが増える

一方で、こうした労働収入によって借金返済が進んだ形跡は見られない。その理由は明白で、副業で得たわずかな収入すらもギャンブルに再投入していたからである。

実はこの精神状態に陥っている人を私は知っている。

過去に私は『どん底に堕ちた養分たち』という書籍を出しているのだが、そこで取材をした人たちが、ことごとくそうだったのだ。ギャンブルに負けたのでカネを借りたのに、そのカネをまたギャンブルに注ぎ込んでしまうのだ。

ギャンブル依存者は「ギャンブルでカネがなくなったら、ギャンブルで取り返せ」という意識でいっぱいだ。勝てば借金をまとめて返済できると本気で思い込んでいる。

実際には、敗北に敗北を重ね、借金だけが増えていくことになる。

このフジテレビの44歳の制作部企画部長もそうだった。毎月の給与を手にすると、すぐにその大半、あるいは全額をギャンブルに投じるという極端なことをしている。

それで勝てないと気づいたのか、他力本願に陥って、ある日には、有料の「予想屋」が書いたnote記事に5000円を支払ったという報告も残されていた。藁にでもすがる心理状態に陥っていたのだろう。

副業をしながら生活をつなぎ、SNSでは破滅的な実情を吐露し、現実ではテレビ局の一線で働く……。このような生活は長く続くはずがなかった。依存の構造が生活の中に組み込まれた結果、鈴木容疑者は自力では抜け出せない領域にまで達していた。

結局、彼はそれで破綻していった。2025年6月にフジテレビが複数社員によるオンラインカジノ利用を把握したことで内部調査が始まり、オンラインカジノ接続履歴が確認されると、警視庁保安課が調査を引き継ぎ、彼は逮捕に至った。

一度ギャンブル依存が始まると、その終着点は悲惨に尽きる。経済的破綻、家庭の崩壊、社会的信用の失墜、そしてときには自殺に至るケースもある。彼の人生はめちゃくちゃになった。これがギャンブル依存者の姿だ。

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コメント

  1. 匿名 より:

    ギャンブル….

    競馬であれ、競艇であれ、オートレースであれ、パチンコであれ、どんな形態のギャンブルであっても、「主催者(元締め)が参加者(客)に勝つ」「参加者(客)が主催者(元締め)に負ける」という本質があってこそ、成り立ちます。もし「参加者(客)が主催者に勝つ」ようなギャンブルがあったら、ギャンブルを主催する人間はこの世から消えるでしょう。

    > 他力本願に陥って、ある日には、
    > 有料の「予想屋」が書いたnote記事に
    > 5000円を支払ったという報告も残されていた
    再現性が発生したら、それはもはやギャンブルとは言えないのではないかなと。再現性のないものに賭けるからこそのギャンブルなのでは?

    上記を踏まえての、今流行りのオンラインカジノですが。。これは、結論から言って、「主催者(元締め)がどんな種類のインチキやイカサマをどれだけたくさん仕組んでも、参加者(客)にバレない」という本質があるのでは? さらに、情報通信技術(IT)や人工知能(AI)、更にはこれから出現するであろう人工汎用知能(AGI)や人口超知能(ASI)を駆使すれば、インチキやイカサマが参加者(客)にバレないオンラインギャンブルなんか、どこの誰にでも、そこら辺の小学生にですら、簡単に作れてしまうのでは?

    そういえば、「オンラインカジノの主催者(元締め)が逮捕・摘発されました」などという内容の報道は、ちっとも耳にしません。逮捕・摘発されるのは、参加者(客)ばかり。報道が無い以上、そういう主催者(胴元)は、実際に逮捕・摘発されず、今日この瞬間も、世界各国にいる無数の参加者(客)からカネを巻き上げ続けているのでしょう。

    「美味しいビジネスですねえ。よだれが出ちゃいそうです。オンラインカジノへの参加を考えている人達は、どうせなら、客として参加することを考えるのではなく、胴元として主催する側になることを検討するべきでは? どうせ、誰にでも簡単に実現でき、逮捕も摘発もされないのだから」、などということを一瞬、考えてしまいました。なんだか、以前、傾城さんがブログで「資本主義では、搾取される側になるのではなく、搾取する側にいる連中の生き血を強か(したたか)に啜る存在になれ」といったことを述べていた記憶があります。少しだけ、それに似ているかもです。

    まあ、さすがに、オンラインカジノの主催なんて、私は最初からそんなことはしませんがね。

    おっと、今、私の住まいの玄関のチャイムが鳴りました。どなたかが私を訪問してきたようです。ちょっと失礼。

  2. 匿名 より:

    このニュースを聞いた時、その当事者はどんな人なのか、追加情報ないかなと思った。
    フジがどんなに給料高くても、1億円も損するまで負けが込むとは思えない。親が金持ちなのかと想像した。
    自分の大学の同期に、大手広告代理店の副社長の息子がいた。彼は何年も浪人していたので、就職は簡単にはいかないと思っていたものの、案に相違して真っ先に大手メディアに内定した。自分は、その時就職にはえらい苦労した。ただ、世の中ってのは、こういう事かとも悟った。
    フジのギャンブル社員も、そういうコネで入社したのでは、イヤ、フジの社員なんてそんなのばかりなので、中井の不祥事が起きたのではと、思う次第。

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