カネがないからカネを借りるのに、カネがない人間ほど高い金利を科せられる現実

カネがないからカネを借りるのに、カネがない人間ほど高い金利を科せられる現実

消費者金融でカネを借りている人の利用目的で多いのは「生活費の補填」だった。消費者金融で借りれば、年間にして18%近く、あるいはそれ以上の金利が乗せられる。カネがないからカネを借りるのに、皮肉なことにカネがない人間ほど高い金利を科せられる。厳しい現実だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

何の目的で消費者金融でカネを借りているのか?

日本信用情報機構(CIC)の2025年3月時点のデータによると、消費者金融に登録されて、なおかつ口座に残高がある名寄せベースでの登録件数は1760万件、登録人数は1116万人にのぼる。

その中で、約定返済日より61日以上または3か月以上未入金(延滞)となっている口座は537万件、該当する人数は約400万人となっている。

わかりやすく言うと、1100万人以上が消費者金融の貸し借りにかかわっており、そのうちの約3分の1が返済困難な状況、つまり延滞状態にある。それが、2025年現在の日本社会の裏側だ。

ちなみに、このCICの数字には、そこに加盟していない中小や零細の会社、いわゆる「ヤミ金」と呼ばれる違法業者は含まれていない。こうした業者を含めれば、実態はさらに膨れ上がることが推察される。

それにしても、これだけの人々が延滞というのは、ただごとではない。では、彼らは、いったい何のために消費者金融でカネを借りているのか。ギャンブルなのか、贅沢品の購入なのか。

実際の利用目的を見てみると、ギャンブルでも贅沢品でもなかった。もっとも多いのは「生活費の補填」や「急な出費への対応」であり、家賃や光熱費、冠婚葬祭、家電の買い替えなど、日常生活の資金繰りが主な理由となっている。

ギャンブル目的は金融機関側で厳しく制限されており、実際には生活防衛や突発的な支出対応が主流だといえる。

利用者の中心は40代がもっとも多く、次いで50代、30代、60代、20代と続く。男女比では男性が7割弱、職業別では会社員が6割以上を占めている。

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3分の1の利用者は生活維持のためだった

NTTデータ経営研究所では消費者金融利用者のタイプを5つのタイプに分類している。それが、生活維持借入タイプ、一時借入タイプ、趣味・娯楽タイプ、多重借入タイプ、小額借入タイプである。

では、その中で一番多かったのは何か。それは「生活維持借入タイプ」である。つまり、日常生活費や生活の維持を目的としてカネを借りていた。これだけで36.5%を占めていた。

ギャンブルで身を持ち崩したというようなものではない。生活費だったのだ。それが、ほぼ3分の1である。

政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体等がかかわって中立な情報を提供している「金融中央委員会」のデータを見ても、「低収入・収入の減少(生活費・教育費の不足)等」が26%で圧倒的多数を占めていた。

これに「商品・サービス購入」という実質的に「生活維持借入」と思われる項目を足すと、32.5%となる。やはり約3分の1となる。

GDPで見ると世界有数の先進国であったとしても、「生活を維持するためのカネがない」という理由で借金をしている人たちが大勢いるというのが現状だ。

雇用形態を見ると、非正規雇用の割合が高い傾向があり、安定した収入が得られにくい層が多く含まれている。彼らが必要に迫られて借りている。

もちろん、非正規雇用の全員が借金をしているわけではない。借金はしていないが、貯蓄する余裕もないギリギリで生きている層も多い。おおまかに言うと、4世帯に1世帯は貯金などできない収入の中で暮らしている。

このような世帯が世帯主の病気やケガや精神的な問題や失職や転職などで収入が途絶えたとき、「生活維持」のために銀行や消費者金融で金を借りるようになっていく。

しかし、「生活維持」のための借金というのは、経済成長の消えた社会では非常に深刻な問題をもたらす。

借金は「未来の収入の先取り」である。ということは、生活維持のために今は一時的に楽になっても、未来になると借金と金利分は確実に収入が削減される。未来になって収入が増えていないと生活はますます苦しくなる。

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グローバル化を取り入れたの国が直面している光景

現在の世界経済は、ある種の社会的な転換地点にある。資本主義社会の中で勝者と敗者が明確にわかれ、勝者が利益を総取りにして敗者を貧困に叩き落としていく。そのため、格差は極度なまでに広がる一方となっている。

ほぼすべての先進国でリストラが増え、パートタイムジョブが常態化し、雇用がひどく不安定になり、中流クラスが次々と転落している。

日本もまた例外ではない。年功序列や終身雇用が日本企業の特徴であり、それが社会の安定をもたらしていた。ところが、こうした状況も終わり、いまや弱肉強食とも言うべき資本主義に姿を変えている。

日本式の「古き良き経営スタイル」は次第に消え去っていき、一億総中流の世界は社会から消えていった。2000年代初頭から広がった非正規雇用の増加で、若者も「使い捨て」の労働力にされて、生活を維持できなくなってしまった。

日本人の多くが「働いても働いても我が暮らし楽にならざり」というワーキングプアの世界に突入し、生活維持すらも困難な「貧困層」が増えるようになっている。

日本社会はここに高齢化問題も直撃している。高齢の生活保護受給者もどんどん増え続けている。このまま高齢者のすべてを生活保護で面倒を見るようなことになると、現役世代の負担はもっと重くなっていく。

そのため、日本政府は「65歳から74歳までは高齢者ではない」と言い出すようになっている。

終身雇用から弾き飛ばされた人たち、ワーキングプアに落ちた人たち、貯金も仕事もない60代以上の人たちのすべては、ちょっとしたことで「生活維持」が困難になる確率が高い。

それはつまり、「生活維持のためにやむなく借金をする」人が増えるということであり、こうした人が増えれば増えるほど、逆に将来は今の生活でさえも維持できないことになる。

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カネがない人間ほど高い金利を科せられる

生活を成り立たせるには、「収入を増やして節約する」という二点を繰り返し行うことが必要だ。だが、「収入を増やす」というのは、誰もが目指してたどり着けない苦難の道である。

だとすれば、誰でもできるのは「節約する」という一点に絞られる。とにかく、絞れるところは絞る必要がある。それをしないで「生活維持」のためにカネを借りると、地獄が待っている。

消費者金融で借りれば、年間にして18%近く、あるいはそれ以上の金利が乗せられる。カネがないからカネを借りるのに、皮肉なことにカネがない人間ほど高い金利を科せられる。

消費者金融はマズいと考えて銀行やカード会社から金を借りても同じことだ。リボ払いでもした日には消費者金融と変わらない金利と化す。

もし、日々の節約によって金融機関から金を借りることを避けられたとしたら、それだけで15%から18%の出費が避けられる。逆に言えば借りないで節約するだけで、15%から18%が貯金できる可能性がある。

投資で年間15%から18%の利益が出せるということは、5年以上たつと資産が2倍近くになっているということなのだ。そう考えると、生活維持のためにカネを借りるという選択肢は、最初からない方がいいのがわかる。

今後は、さらに弱肉強食の資本主義が苛烈になり、格差と貧困が鮮明化する。社会のどん底に堕とされていく世の中で生きるためには、金融サバイバルが必要になってくる。もう社会は私たちを守ってくれない。ギリギリで生きている人間にとっては、より厳しい時代になっていきそうだ。

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