闇バイトによる強盗。貧困層を増やし続けて治安が保てると政治家は思ってるのか?

闇バイトによる強盗。貧困層を増やし続けて治安が保てると政治家は思ってるのか?

「闇バイト」による犯罪が多発し、関東広域で強盗が続出している。貧困層の増加とそれに伴う犯罪の増加は、社会全体の基盤を揺るがす。このまま愚鈍な政治が続くのであれば、貧困層の絶望はさらに深まり、闇バイトは定着し、治安の崩壊は進んでいくばかりと化す。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

闇バイトによる事件が増加している

2024年9月下旬から、東京や埼玉で相次いで「緊縛強盗事件」が発生している。闇バイトを通じて集められた男たちによる犯行と見られている。4件もの事件が短期間で起こり、被害者は住宅内で縛り上げられ、金品を奪われるという非情な手法が取られた。

通常、「闇バイト」で犯行に及ぶ男たちは、インターネットを通じて「高収入」「簡単作業」などの言葉で誘われ、犯行にかかわっていくことになる。このあたりの状況については、書籍『病み、闇。ゾンビになる若者、ジョーカーになる若者。』にも取り上げている。

これらの若者の多くは生活に困窮し、生活のために違法行為に手を染めている。インターネット上の裏サイトやSNSを通じて集められ、上層部や仲間の顔も名前も知らないままに指示を受け、危険な仕事に追い込まれる。

彼らの背後には、闇バイトを斡旋する大規模な組織が存在し、その動きは巧妙で素早い。捜査当局が犯行グループを捕まえても、すぐに新たな若者が闇バイトに吸い込まれていく構図がある。

犯罪に走る若者たちは、チンピラや半グレに所属していた人間ではなく、ごく普通の学生やフリーターや非正規雇用の男性であることが多い。しかし、彼らは経済的に追いつめられ、借金や生活苦に悩まされている。

そこで、普通の生活では到底稼ぐことのできない大金を手にする誘惑に負け、次々と闇の世界に引き込まれていく。こうした若者たちが増加している背景には、社会的な格差拡大があることは明白である。

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日本の貧困問題と犯罪の増加

内閣府が発表した最新の統計によると、日本における貧困率は近年ますます上昇しており、とくに若年層の経済的困難が際立っている。

日本の相対的貧困率は15.7%に達しており、OECD諸国の中でも高い部類に入る。このうち、若者の貧困率はさらに悪化しており、20代では約20%が貧困状態にあるとするレポートもある。

こうなったのは、もちろん非正規雇用の増加がもたらしている。厚生労働省のデータによれば、非正規雇用者の割合は全労働者の約4割に達しており、とくに若年層にその影響が大きい。

正社員と比べて低賃金で不安定な仕事を余儀なくされる非正規労働者たちは、生活の先行きが見えず、その一部はネットカフェ難民となり、借金に追い込まれることも少なくない。

中には、「貧困ビジネス」と呼ばれる高利貸しや違法な貸付けに頼らざるを得ない者もいる。

これらの背景から、犯罪に走る若者たちが増加していることは偶然ではない。警察庁の発表によると、2023年だけで窃盗や強盗などの犯罪に関与した若者の数は前年を大きく上回っており、とくにSNSやネットを通じた犯罪の増加が顕著である。

「どうせ、普通に働いたところで自分の人生に未来はない」
「闇バイトなら一攫千金のようにカネが入る」

闇バイトでの仕事はリスクがあるに決まっている。しかし、金銭的な困窮や将来への不安に追い詰められている場合、それが一線を越えるきっかけになる。どのみち、未来がないのであれば、大きなリスクを取る価値はあると考えるのだ。

インターネットを利用した闇バイトの勧誘は、これからも続く。SNSや掲示板、さらには暗号化されたチャットツールなどを通じて、匿名で参加できる犯罪活動は、追いつめられた者にとっては魅力的な選択肢となるからだ。

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犯罪に手を染める若者たちは次々と生まれてくる

現在の日本の経済政策や労働市場の状況を見る限り、貧困層が減少する兆しは見られない。むしろ、増加していく傾向のほうが強い。バブル崩壊後、非正規雇用が急増し、正社員としての安定した雇用はますます難しくなっている。

30年以上にわたり、日本経済は実質的な成長を遂げておらず、若者たちは「失われた世代」として取り残されている。貧困層の増加が続く限り、こうした犯罪が今後も増加するのは当然だ。

政府や警察がどれほど取り締まりを強化しても、根本的な問題である貧困が解消されない限り、犯罪に手を染める若者たちは次々と生まれてくる。

2023年は、東京・狛江市強盗致死事件があり、90歳の女性が死亡した。東京・銀座高級腕時計店強盗事件があって約3億円相当を奪取された。埼玉県所沢市の住宅で複数の男が邸宅に押し入り現金を奪う事件もあった。

ルフィ・グループが親玉となった闇バイトによる強盗事件は、22都道府県で70件も発生していた。闇バイトでは2022年、2023年の2年間で、154人が検挙され、その多くが末端のメンバーであった。

経済的に追いつめられた者たちは、生活費を稼ぐため、あるいは借金返済のために闇の世界に引き込まれていく。その結果、犯罪の温床は広がり続け、日本の治安はますます悪化していく。

若者たちが未来に希望を持てず、闇バイトに手を染める状況は、30年以上も経済を成長させることができない政治が増長させているといってもいい。そして、この状況は時間がたつにつれて、さらに悪化する可能性が高い。

若者たちが犯罪に走る要因である貧困や不安定な雇用環境は、一朝一夕に解決できるものではないし、今の無能政治家どもは状況を改善させる能力なんかないに等しいので、今後も問題は深刻化する。

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絶望と、自暴自棄と、ルサンチマンがある

要するに、闇バイトを通じた犯罪の増加は、単なる一時的な現象ではなく、日本社会全体が抱える深刻な問題の表れである。これまでに積み重ねられた社会のひずみが、今や貧困の若者たちの人生を狂わせ、社会の根幹を破壊しつつある。

貧困層が増えるというのは、そういうことなのだ。

経済的な行き詰まりに直面する中で、多くの若者が道を見失った。彼らは、手を差し伸べてくれる場所もなく、ただ生き延びるためにリスキーな選択肢を取るしかない。その選択肢のひとつとして、アンダーグラウンドから「闇バイト」が提示されるようになったのだ。

これまでの人生での挫折や、正当な労働から得られる報酬の少なさや、自分たちの苦境を「自己責任」にする社会に対する憎しみのような感情が、彼らを犯罪へと駆り立てる。ある種、彼らには社会に対する「復讐」のような感情がある。

この社会全体に対する復讐感情のことを「ルサンチマン」と呼ぶ。

一部の若者が「闇バイト」に惹かれて犯罪行為に手を染めていくのは、個人の倫理観や道徳の欠如ではなく、もはや先のない人生に自分たちが生きていることによる深い絶望と、自暴自棄と、ルサンチマンがあるのだ。

そうであれば、「闇バイトは犯罪です」とか「闇バイトには気をつけましょう」とか、そういう社会や警察の啓蒙が何の意味もないことがわかるはずだ。

闇バイトが「ヤバい仕事」であるのは、当の本人もわかっている。わかっているのだが、もう本人は「這い上がれない」と思っているのだから、そこが問題なのだ。

当たり前の話だが、警察の取り締まりが強化されても、この問題は解決しない。なぜなら、取り締まりの強化が犯罪の根本原因である「貧困」を取り除くわけではないからである。

たとえ犯行グループが一時的に摘発されても、生活に困窮している若者たちは次々と現れる。その結果として、闇バイトに目を向け、犯罪に手を染める者が増え続ける。この現状は、今のところ変わりそうにない。

貧困層の増加とそれに伴う犯罪の増加は、社会全体の基盤を揺るがす。このまま無為無策の政治が続くのであれば、貧困層の絶望はさらに深まり、社会の崩壊が進んでいくばかりとなる。

ルサンチマンが吹き荒れる時代には、犯罪は多発する。次に何が起こるのか?

それは、窃盗・強盗・殺人・レイプの横行である。貧困層を増やし続けたら社会の底辺で何が起こるのか、政治家はまだ理解していないはずだ。愚鈍な今の政治家に、アンダーグラウンドに落ちていく貧困層の声が聞こえるはずもない。

病み、闇。
病み、闇。: ゾンビになる若者、ジョーカーになる若者(鈴木傾城)

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