南アフリカは「世界最悪のレイプ多発国家」と称されることもあるのだが、この治安の悪い国で、2022年に逮捕された19歳の少年がいる。
シフィソ・ムクワナジという名前の男だったのだが、この男は2022年4月から10月の7か月間で、わかっているだけで6人のセックスワーカーを父親の経営する板金工場に誘い込んでは縛り上げ、レイプし、首を絞めて殺害していたのだった。
ムクワナジは殺した女性の遺体を板金工場の庭の一角に埋めて隠していたのだが、最後に殺した女性の腐敗した遺体のにおいで殺人が発覚していた。
この19歳のムクワナジが逮捕されるまで、このエリアのセックスワーカーたちは恐怖で震えていた。自分たちの仲間が忽然と消息不明になって、誰も何が起きたのかわからなかったからだ。
「もしかしたら、誰かに拉致されて殺されているのかもしれない……」
彼女たちのあいだでそのような噂が飛び交っていたのだが、その不安は的中していた。ただ、「モンスター」の正体がまさか19歳の男の子であったとは誰も予想もしていなかった犯人像だった。
2024年9月、精神鑑定を含め、長らく続いた法廷闘争の末に「ムクワナジは社会の他の人々の幸福を脅かす危険な犯罪者である」と宣言され、190年の刑、つまり事実上の終身刑が宣告された。
では、この危険な殺人鬼であった19歳の未成年は、ギャングや暴力グループとかかわっているようなワルであったのか?
いや、まったくそうではないことに、世間は戸惑った。彼はおとなしく、無口で、友人もガールフレンドもいない内気な性格であった。おおよそ、次々とセックスワーカーを殺していくようなタイプには見えなかった。