タイの麻薬取締局(ONCB)は、2024年の現段階で北部6地区だけでも、すでにドラッグ関連での逮捕者が1,607人となっていることを報告している。
その6地区というのはチェンマイ、チェンライ、メーホンソン、パヤオ、ナーン、タークなのだが、タイでは北部国境地帯がドラッグの製造・密輸拠点となっているのは、50年以上も前から知られている事実である。
タイ・ミャンマー・ラオスの山岳地帯には、政府が管理できない少数民族が存在し、彼らの一部が武装化してジャングルに立て籠もっており、その活動資金としてドラッグの製造・密輸がある。
警察当局が追い込もうとしても、彼らはドラッグで得た資金で軍隊並みの武装をおこなっている。さらにジャングルの地理を知り尽くしている上に、一国の政府機関が国境《ボーダー》を越境して摘発に動くこともできないことも見越して、拠点を次々と変えている。
そのため、タイ当局にできることといえば、同国内のドラッグの密売の現場を押さえて、かかわっている人間をかたっぱしから逮捕することくらいしかない。
よく知られていることだが、タイでは薬物犯罪に対して非常に厳しい姿勢で臨んでいる。薬物の種類・量・状況によって刑期は違ってくるのだが、軽くても10年以上、量が多ければ無期懲役、あまりにも悪質であれば死刑という判決で臨んでいる。
20年前もヘロインを営利目的で所持していた日本人が逮捕されたことがあったのだが、この男は懲役50年を求刑されていた。
そうやって「ドラッグ密売はワリに合わない」ことを知らしめて、少しでも薬物の蔓延を防ごうとしているのだが、現状を見ると状況はほとんど改善されていない。厳罰にしても、次々と密売に手を出す人間が出てくる。
じつは、刑を厳罰化すればするほど、密輸は活性化する事態もあるのだが、あなたはその理由を知っているだろうか?